1. Home
  2. 研究成果(プレスリリース)
  3. 研究成果(プレスリリース)2021

2021年9月21日

広島大学
理化学研究所
東京大学
日本医療研究開発機構

小児肝がん(肝芽腫)の発生機序を解明

-低メチル化とともに特定の遺伝子が発現上昇した未熟な細胞に由来-

肝芽腫(HB)は、小児に発生する肝臓がんの約80%を占めていて一部に成人型肝細胞癌(HCC)がありますが、その発症機序は未だに十分に解明されていませんでした。

今回、広島大学自然科学研究支援開発センターの檜山英三教授と大学病院小児外科のグループは、東京大学先端科学技術研究センターの油谷浩幸名誉教授(シニアリサーチフェロー)、永江玄太特任准教授および理化学研究所 生命医科学研究センターの中川英刀チームリーダーらとの共同研究により、日本小児肝癌スタディグループ(JPLT、現日本小児がんグループ肝腫瘍委員会)で行ってきた全国多施設共同臨床試験JPLT-2試験に登録され治療された小児肝腫瘍のうち同意を得て治療開始する前の検体163例(肝芽腫154例、肝細胞癌9例)を用いて、がん組織の遺伝子全体の変異や変化を検索しました。

その結果、(1)腫瘍に生じている変異は、診断時年齢とともに増加していました。(2)βカテニンの遺伝子変異は高頻度に認められましたが、細胞不死化に関連するTERTプロモーター領域の遺伝子変異は、8歳以上の成人型肝細胞癌に近い肝芽腫(TLCT)に多くみられました。(3)乳幼児の典型的肝芽腫では、腸管上皮の幹細胞で重要なASCL2の高発現と胎児の肝臓にみられる増殖因子IGF2(インスリン様成長因子-2)の活性化がみられ、肝芽腫は腸上皮細胞と同様に増殖が活発な未熟な肝芽細胞に由来することを示していました。(4)病期や進展度などの従来からの予後予測因子とは独立して、新たな予後予測に有用なメチル化マーカーDLX6-AS1を見出しました。

今回の研究結果は、小児肝がん(肝芽腫)の発がんに関わる重要な遺伝子を明らかにし、肝芽腫症例の診断や予後予測の重要な指標となることが期待されます。

詳細は広島大学のホームページをご覧ください。

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
お問い合わせフォーム

Top