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2021年10月14日

東京大学
東北大学
科学技術振興機構
理化学研究所

トポロジカルスピン構造から生じる磁気光学応答の観測に成功

伝導電子と磁性との相互作用の結果、電流と垂直方向に電圧が生じる現象は「異常ホール効果」と呼ばれ、基礎研究・デバイス応用の両観点から大きな注目を集めています。異常ホール効果が生じるメカニズムはこれまでに様々な観点で研究されており、近年では電子構造のトポロジーが重要な役割を担っていることが明らかになっています。最近では、さらにトポロジカルな磁気構造の形成により発現するホール効果(トポロジカルホール効果)が観測され、大きな注目を集めています。しかし、トポロジカルホール効果に関しては、その発現機構の解明に迫る実験的手段は限定されていました。

東京大学大学院工学系研究科の林悠大大学院生と岡村嘉大助教、金澤直也講師、高橋陽太郎准教授、理化学研究所創発物性科学研究センターの十倉好紀センター長を中心とする研究グループは、東北大学金属材料研究所の塚﨑敦教授、東北大学大学院理学研究科物理学専攻の是常隆准教授、東京大学大学院工学系研究科の余同樺大学院生、有田亮太郎教授、市川昌和名誉教授、川﨑雅司教授らの研究グループと共同で、カイラル磁性体MnGe(Mn: マンガン、Ge: ゲルマニウム)の薄膜において、トポロジカル磁気構造の形成に由来する巨大な磁気光学効果を発見しました。

MnGe薄膜では、低温においてヘッジホッグ格子と呼ばれる特異なスピン構造(トポロジカルスピン構造)に由来した、トポロジカルホール効果を生じることが知られています。今回、林悠大大学院生らはテラヘルツ帯において、磁気光学ファラデー効果の測定を行いました。その結果、ファラデー効果が急峻に増大する特徴的な共鳴スペクトルを観測することに成功しました。理論モデルによる解析からこの共鳴構造がMnGeの異常ホール効果やトポロジカルホール効果の主たる起源であることがわかりました。

今回得られた成果は、トポロジカルスピン構造が電子状態に強く干渉し巨大なトポロジカルホール効果を発現させることを強く示唆しています。本成果は今後、トポロジカル磁気構造を利用した新しい光デバイスの開発へとつながることが期待されます。

詳細は東京大学大学院 工学系研究科のホームページをご覧ください。

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
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