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2022年2月14日

東京大学
広島大学
理化学研究所
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茨城大学
日本原子力研究開発機構

伝導電子と局在スピン・軌道が織りなす悪魔の調律

-多極子の衣をまとった電子「多極子ポーラロン」を発見-

東京大学物性研究所(所長 森初果)の黒田健太助教(研究当時、現在:広島大学大学院先進理工系科学研究科准教授)、新井陽介大学院生、近藤猛准教授を中心とするグループは、東京大学大学院工学系研究科の野本拓也助教(理化学研究所創発物性科学研究センター計算物質科学研究チーム客員研究員兼任)、有田亮太郎教授(理化学研究所創発物性科学研究センター計算物質科学研究チームチームリーダー兼任)、大阪大学大学院理学研究科の宮坂茂樹准教授と田島節子名誉教授、茨城大学フロンティア応用原子科学研究センターの岩佐和晃教授らの協力のもと、セリウム・アンチモンが示す「悪魔の階段」の相転移において、多極子と呼ばれる局在スピン・軌道と強く相互作用する伝導電子が準粒子として振る舞う「多極子ポーラロン」を発見しました。

金属では結晶中を動きまわる伝導電子が電気的・磁気的な性質を支配しますが、結晶格子を成す原子など伝導電子を囲む環境との相互作用を通して動きにくくなることがあります。この場合、伝導電子は実効的に質量が増大したような粒子(準粒子)として振る舞います。準粒子の形成は超伝導などの量子物性現象をもたらすため、準粒子を特徴付ける相互作用を理解して制御することは物質科学で最も重要な要素の一つです。しかし、これまで実験で観測されてきた準粒子を発現させる相互作用は3種類(電子格子相互作用、電子スピン相互作用、電子プラズマ相互作用)に限られていました。

本研究グループは、セリウム・アンチモンが示す「悪魔の階段」という複雑な磁気相転移現象で変化する伝導電子の振る舞いを高精度に調べました。その結果、「悪魔の階段」を通して結晶中で綺麗に整列した局在スピン・軌道と強く相互作用する新しい準粒子「多極子ポーラロン」を世界で初めて発見しました。発見された伝導電子と局在スピン・軌道の新しい相互作用は、磁場や圧力で伝導電子を制御する磁気メモリなどの動作原理としても機能する可能性があるため、スピントロニクスに向けた磁性材料設計へ新たな展開が期待できます。

詳細は東京大学 物性研究所のホームページをご覧ください。

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
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