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2022年3月31日

東京大学
科学技術振興機構
理化学研究所
東京工業大学
埼玉大学

結晶の対称性を反映した新しい原理の超伝導整流現象を発見

-エネルギー損失の極めて小さい電子回路の実現に向けた新たな可能性-

東京大学大学院工学系研究科の板橋勇輝大学院生、同研究科物理工学専攻の井手上敏也助教、岩佐義宏教授(理化学研究所 創発物性科学研究センター創発デバイス研究チーム チームリーダー兼任)らの研究グループは、埼玉大学や東京工業大学のグループと共同で、空間反転対称性の破れた3回回転対称性を有する層状超伝導体PbTaSe2(鉛(Pb)、タンタル(Ta)、セレン(Se)から構成される単結晶)が、外部磁場や磁気秩序が存在しない条件下でも巨大な整流特性を示すことを発見した。

空間反転対称性の破れた結晶において実現する物質固有の整流特性は、一つの均質な物質中で生じるという点で、従来の半導体p-n接合における整流現象とは本質的に異なる。また、超伝導をはじめとする特徴的な状態を示す物質へも応用が可能であるため、超伝導ダイオード効果等のユニークな機能を実現するための有力な原理となり得る。しかしながら、そのような物質固有の整流特性は、これまで外部磁場や磁気秩序が存在する時間反転対称性の破れた条件下で報告がなされており、時間反転対称性を持つ超伝導体における整流現象は未開拓であった。

本研究では、PbTaSe2の常伝導状態(超伝導を示さない状態)及び超伝導状態の両方において外部磁場を必要としない整流特性を初めて観測し、整流特性が結晶対称性を反映していることや超伝導状態において整流効果が常伝導状態と比べて大きく増大することを発見した。さらに、3回回転対称性を持った超伝導体中での超伝導ボルテックス-アンチボルテックスの運動を定式化することで、時間反転対称条件下での超伝導整流特性の新原理を提案した。

本研究成果は、空間反転対称性の破れた超伝導体における新規輸送現象の開拓を推進すると同時に、外部磁場を必要としない整流特性という新たな機能性実現への有用な知見になると期待される。

詳細は東京大学大学院工学系研究科のホームページをご覧ください。

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
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