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2022年9月21日

九州大学
日本電子株式会社
理化学研究所
科学技術振興機構

新しい核偏極リレー法により「水の高核偏極化」に成功

-薬物スクリーニングや細胞内のタンパク質解析への道-

核磁気共鳴分光法(NMR)や磁気共鳴イメージング(MRI)は、化学や医療など幅広い分野で利用される技術です。それらの技術では物質内の原子が持つ核スピンを利用し、分子に関する情報を観測しています。しかし、観測に利用できる核スピンが非常に少ないことから得られる信号も極めて弱いことが課題となっていました。特にMRIでは主に体内に多量に存在する水分子の信号を利用していますが、温和な条件下では、そのわずかな核スピン(0.001%程度)しか利用できていません。

今回、九州大学大学院工学研究院の楊井伸浩准教授、君塚信夫教授、同大学大学院工学府の松本尚士大学院生、西村亘生大学院生、理研-JEOL連携センター及び株式会社JEOL RESONANCEの西山裕介ユニットリーダー、理化学研究所開拓研究本部及び仁科加速器科学研究センターの上坂友洋主任研究員、立石健一郎研究員の研究グループは、室温で水のNMR信号強度を向上させる新たな手法を開発しました。

NMRやMRIの検出感度を向上させるには、原子が有する核スピンの向きを揃えた高偏極状態を作り出す必要があります。そのため、これまで電子スピンの偏極を直接水分子の核スピンへ移す戦略がとられてきましたが、極低温(-150℃以下)での測定や、測定に悪影響を及ぼすラジカル分子を加えることが必要でした。研究グループはナノサイズの有機結晶内で生成した電子スピンを核スピンへ移し、その結晶内で蓄積した核偏極を水分子へ移す「核偏極リレー」によって、初めて室温で水分子を高偏極状態にすることに成功しました。

今回実証された新たな技術は、室温で様々な生体分子に対する連続的なNMR/MRI感度向上につながり、薬物スクリーニングや細胞内タンパク質構造解析の新しい手法開発として期待されます。

詳細は九州大学のホームページをご覧ください。

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
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