タンパク質の翻訳とは、DNAからmRNAに写し取られた遺伝情報をもとに、タンパク質を産生する過程です。リボソームはこの翻訳を担う複合体であり、約80種類のリボソームタンパク質と4種類のリボソームRNAから構成されます。リボソームの構成はどの細胞や組織においても同じであるとこれまで考えられていましたが、近年の研究により、異なる構成を持つリボソームが存在することが明らかになってきていました。
九州大学 生体防御医学研究所の中山 敬一 主幹教授、松本 有樹修 准教授、白石 千瑳 大学院生、市原 知哉 研究員、理化学研究所 開拓研究本部の岩崎 信太郎 主任研究員らの研究グループは、横紋筋特異的に存在するリボソームを発見し、心機能に必要なタンパク質の翻訳を制御していることを見出しました。
リボソームサブユニットRPL3の類似遺伝子であるRPL3Lは心臓と骨格筋に特異的に発現していました。そこでRPL3Lを含む横紋筋特異的リボソームの生理的役割を解明するためにRPL3Lノックアウトマウスを作製したころ、このマウスでは心臓の収縮力が低下していることがわかりました。RPL3Lが欠損した心臓では、翻訳伸長ダイナミクスが乱れており、リボソームの衝突頻度が増加していることが明らかになりました。これにより心筋収縮に関与するタンパク質の発現量が減少し、心臓の収縮力の低下が生じたと考えられます。
近年、ヒトの心房細動や小児期の拡張型心筋症患者などでRPL3Lの遺伝子変異が報告されたことから、この組織特異的な翻訳制御機構の理解はこれら疾患の治療に繋がることが期待されます。
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理化学研究所 広報室 報道担当
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