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理事長から皆さまへ

理化学研究所 第5期中長期計画開始にあたって(2025年4月1日)

2025年度のはじまりにあたり、ご挨拶申し上げます。

理化学研究所(理研)は、1917年の創立から108年目をむかえ、本年度より特定国立研究開発法人として7年間の第5期中長期計画の期間に入ります。この1世紀あまりのあいだ、人類は科学とそれにもとづく技術と社会成長の牽引力として、めざましい発展をとげてきました。しかし、地球温暖化や環境破壊、経済格差、国家間の調整を基軸とする国際協調システムの行きづまりなど、世界は人類の未来をおびやかす地球規模の深刻な課題に直面しています。

21世紀に入ってインターネットの進化や計算科学の発展に象徴されるデジタル技術は、生成AIや量子計算技術の革新によってさらに進み、社会の様相を大きく変貌させました。これらの先端技術が人類社会を衰退させる契機となるのか、あるいはより良い成長へのパラダイムシフトをもたらすのか、人類はその選択の岐路に立っています。新たな科学と技術を生みだすことを使命とする私たち理化学研究所は、他人まかせの受け身ではなく、より良い未来を能動的に切り拓く原動力となることをめざします。

2025年度からの7年間は、人類社会全体のこれからの未来を決める、きわめて重要な期間です。理研が生みだす価値の源泉は、研究者一人ひとりの好奇心に根ざして羽ばたく自由な発想です。なによりも、そうした創造力をより効果的に発揮できる環境を整えます。同時に未来の人類社会の姿をみんなで考え、共有することも欠かせません。この両者をしっかり重ね合わせることで、研究者として発見の喜びと、社会に対する責任を果たす手ごたえと充実感が生まれるはずです。

この「探求」と「社会に対する責任」を世界最高水準において妥協なく追求する国立研究開発法人となるために、いっそう精進してまいります。そしてその輪を、国内外のアカデミア、産業界、政府へと広げます。みなさんのご支援とご協力を、ひきつづきよろしくお願い申し上げます。

五神 真 理事長の写真

卓越した研究を支える新たな研究体制

最新の先端研究の動向を的確にとらえ、理研の総合力を生かす運営を迅速におこなうため、「研究領域」という仕組みを導入しました。物理科学、生命科学、数理・計算・情報科学、環境科学と、分野を超えて新たな学知創出をめざす開拓科学の五つを研究領域として設定し、理事長のもとで意思決定をおこなう理事会議に各領域総括をくわえました。この体制により、高度な専門知にもとづく横断的な協働をうながし、新たな知の創出を加速します。

領域を超えた連携の促進策として、2022年から開始した「TRIP(Transformative Research Innovation Platform of RIKEN platforms)」構想を拡充し、データ駆動によるアプローチをいっそう強化します。TRIP構想はすでに理研全体に浸透し、AIや量子コンピュータを活用したデータ解析や計算科学の成果がはば広い研究領域で活用されています。これにより異分野融合研究が進み、革新的な成果を創出する速度が上がっています。

体制図

持続可能な研究環境の構築

次世代計算基盤「富岳NEXT」や第4世代放射光施設「SPring-8-II」の開発・整備を本格化し、国内外の研究者がアップグレードされた最先端研究基盤を利用できる環境を整備します。また、理研全体の研究活動の環境負荷を抑えるために、二酸化炭素排出削減をめざし、持続可能な研究環境を構築します。また、理研が所有する研究設備について所内のみにとどまらず所外の研究者にも共用化を進め、利用効率の向上に努めます。

次世代人材育成と大学との連携強化

次世代を担う研究者を育成するため、理研ECL(RIKEN Early Career Leaders Program)制度を充実させ、女性・外国人研究者の積極登用、大学・企業との研究人材交流を推進します。また、近年劣化が指摘されている日本の研究環境基盤の改善・強化にも貢献し、理研の研究者が大学や他機関へ転出後も水準の高い研究を継続できるように支援制度を整備します。大学とのクロスアポイントメントの活用も進め、日本全国どこにいても研究者が最先端の研究に参加し、未来社会へ貢献できるよう機会をさらに拡げて提供していきます。

未来ビジョンの達成に向けて

本中長期期間中にはじまる2030年代が人類社会にとってきわめて重要な時代となることは間違いありません。人類社会を健全に成長できる軌道に乗せるために、いま準備すべきことをしっかりとらえて行動しなければなりません。

地球環境と調和するエネルギー創出、無駄のないエネルギー消費、サイバー空間とフィジカル空間が融合するなかで他者を想いながら行動すること、それらをうながす経済システム、こうした理想を実現するために必要となる新しい科学を生み出していきます。

なにより重要なことは、科学が共感を生みだす原動力となることです。そのためには、科学研究活動が、研究者コミュニティー内はもとより、社会からも厚く信頼される必要があります。それがあってはじめて、科学の普遍性が共感の醸成につながるのです。

理化学研究所は、科学への信頼をさらに高めることをめざし、未来社会とそこに生きる人々の生活を豊かにすることに貢献します。理研の取り組みへのご理解をいっそう深めていただき、みなさんのさらなるご支援とご指導を賜りますよう、お願い申し上げます。

理事長 五神 真

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