ビタミンD3アジュバントを用いた簡易ワクチン開発
- 実施センター
- 理化学研究所 生命医科学研究センター 分化制御研究チーム
- 実施代表・実施者等
- 福山 英啓 副チームリーダー
研究概要
- 問1:研究の概要を教えてください。何を解明しようとしているのでしょうか。または何を目指しているのでしょうか。
- さまざまなワクチン開発が進んでいますが、現在先行しているRNAワクチンには、局所の炎症、発熱、激しいアレルギー反応といった副作用の報告もあります。こうした不安をできるだけ払拭し、より安全に使えるワクチン開発を目指しています。乾癬(かんせん)という皮膚病の治療に用いるアジュバント(免疫賦活剤)として、すでに安全性が確認されているビタミンDをワクチンに活用することを考えています。
- 問2:なぜこの研究を行おうと思ったのでしょうか。
- ワクチンは感染症予防において、これまでにたくさんの人々を救ってきた最も功績のある手段です。免疫反応を強めるのは何か、そのメカニズムを調べていた私たちの研究から偶然見つかった成果が、新型コロナに対するワクチンにも応用できるのではないかと考えました。
- 問3:どういった方法で解明するのでしょうか。
- 新型コロナウイルスの表面には、ヒトの細胞にタッチするとき(感染)に必要なスパイクと呼ばれる部位(Sタンパク)があり、このSタンパクをワクチン抗原として使います。これは、いま世界中で開発されている多くのワクチンと同じですが、私たちが開発しているワクチンがユニークなのは、皆さんもよくご存じのビタミンDを使って免疫能を上げるという点です。
- 問4:現時点でどこまで分かっているのでしょうか。
- インフルエンザウイルス抗原をマウスに投与すると、何も処置をしなければマウスは死んでしまいます。しかし、皮膚の抗原投与部位にビタミンD3の軟膏を塗ったマウスは症状が改善して、死ぬことはありませんでした。インフルエンザにおいて、私たちの「ビタミンDワクチン」が有効だと示されたのです。現在、この考え方を応用し、新型コロナウイルスに有効なものを探してさまざまな材料を用意しているところです。
- 問5:今後の課題を教えてください。
- ウイルス感染を防ぐ抗体を効率的に上げる抗原のデザインが課題になります。また、同時に、実用化を目指すにあたり、製薬会社などのパートナーを探しているところです。
2020年12月23日掲載