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新型コロナウイルスに関する研究開発(6月25日更新)


我々人類は今、新型コロナウイルスという見えない敵と対峙し、生存をかけて戦っています。理化学研究所はその叡智を結集して新型コロナウイルスを克服する術を人類にもたらすべく、特別プロジェクトを立ち上げました。

およそ百年前、我が国の繁栄の礎となるべく設立された理研は、自然科学におけるあらゆる分野で研究成果を積み重ねてきました。巨大な生命科学系プロジェクトを担うことで蓄積してきた、免疫学・遺伝学・構造生物学をはじめとした「知見」と、近年急速に発展している計算科学やAI、さらにそれを活かしたAI創薬などの多彩な「技術」を理研は有しています。これらを総動員し、本プロジェクトに注力する決意です。

人類はこれまで、科学技術を駆使して不可能を可能とし、多くの困難を乗り越えてきました。人類生存の危機に瀕した今、まさに科学技術の真価が問われています。理研は、国内外の研究機関や大学、企業とも力を合わせ、新型コロナウイルスの克服に貢献します。

2020年4月21日
理化学研究所理事長 松本紘

理化学研究所 理事長 松本 紘のサイン


理化学研究所(理研)は、この新型コロナウイルス感染拡大の危機のなか、研究担当理事による統括のもと、様々なニーズに迅速かつ機動的に応えていけるよう、より効率的な検出法の開発、効果的な治療薬開発のためのデータや施設等の供出、人々の生活や社会を持続させるための研究など、理化学研究所にしかない研究力・研究資源を最大限に活用した取り組みを進めています。

データの公開や先端大型共用施設の利活用による研究

  • 新型コロナウイルス対策を目的としたスーパーコンピュータ「富岳」の優先的な試行的利用について

    理研は、文部科学省と連携し、理研が開発主体となって開発・整備を推進しているスーパーコンピュータ「富岳(ふがく)」を、開発・整備の途上であるものの、国難ともいえる新型コロナウイルスの対策に貢献する成果をいち早く創出するために、可能な限り計算資源を関連研究開発に供出することとしました。現在、理研やその他の機関の研究者らによって、5つの課題が実施されています。

  • SPring-8/SACLAにおける新型コロナウイルス感染症関連課題の募集開始

    SPring-8/SACLAでは新型コロナウイルスの対策に貢献するため、新型コロナウイルス感染症関連研究課題の募集を開始しております。

  • 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)メインプロテアーゼの分子動力学シミュレーションデータを公開

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスである「SARS-CoV-2」の構造動態をシミュレートし、そのデータをリポジトリMendeley Dataにて公開しています。

  • 新型コロナウイルス感染症の治療薬設計に役立つウイルスタンパク質と治療薬候補化合物の相互作用データの公開

    新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)タンパク質と治療薬候補化合物の分子間相互作用を「フラグメント分子軌道法(FMO法)」で計算し、そのデータを、世界中の創薬研究者が自由に利用できる「FMOデータベース(FMODB)」にて、4月17日に公開しました。

  • COVID-19研究情報の整理統合および研究に必要なバイオリソースのデータベース構築と情報発信

    COVID-19に関する研究情報を、1.ウイルス感染・増殖・生体防御、2. 発症、3. 重症化、4. 治療・予防の4つのプロセスの視点で整理統合します。それらと、各プロセスで推測される各種細胞表面レセプター、細胞内情報伝達系、免疫応答系等のヒト遺伝子クローン、各種遺伝子改変細胞株、遺伝子改変モデルマウス等のバイオリソースとを紐づけるデータベースを開発します。各プロセスに関しては、ウイルスタンパク受容体ACE2やIL-6等のサイトカインストームに関与する分子の相互作用、また、重症化においては、高血圧や糖尿病等の分子病態との関係でリソースが検索できるようにします。さらには、必要ではあるが未開発のリソースを明示し、今後のリソース開発・整備に役立つデータベースを構築して公開します。

  • 新型コロナウイルスに対する治療薬とワクチンを開発するための動物モデルの作出

    人と同様に新型コロナウイルス感染により重篤化するモデル動物を作出し、治療薬やワクチン開発につなげます。

検出法の開発

  • SmartAmp法を用いた迅速検出法の開発

    理研が開発したSmartAmp法は、従来のPCR法では1~2時間かかる反応を10~30分程度に大幅短縮することを可能とするものです。神奈川県衛生研究所との共同研究により、その有効性が実証されました。引き続き、さらなる時間短縮かつ簡便な検出法の開発を進めています。

  • 新型コロナウイルスの非増幅・高感度・迅速診断技術の開発

    理研が開発した「核酸のデジタル検出技術」を基盤とし、新型コロナウイルス由来のRNAを非増幅・高感度・短時間で解析できる新規技術を迅速に開発します。

  • 新型コロナウイルス抗体の検出系の開発

    新型コロナウイルスの感染から回復した者の同定や治療中における抗体価上昇の検出に資するため、新型コロナウイルスのタンパク質から抗体を検出する技術を開発します。

  • 新型コロナウイルス検出用抗体の単離とオンサイト迅速ウイルス検出キットの開発

    ワクチンがない現時点では、COVID-19の防疫は、迅速で、かつ正確な「検査」と、素早い「隔離」という戦略しかありません。理研で構築した抗体探索技術を用いて、on-site検査が可能となる有効な抗体を単離し、この抗体を用いて、インフルエンザ感染と同様のon-site診断キットの実用化を目指します。

治療薬・ワクチン開発のための研究

  • COVID-19 特別プロジェクトの開始について

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な大流行に対応するために、理研のライフ系センターや外部研究機関と連携して治療薬の研究を開始しました。実験結果や計算結果について適宜公開し、グローバルの研究開発を支援し、共同研究、連携を積極的に推進しています。

  • 新型コロナウイルス抗体製剤の開発

    理研が近年構築した抗体探索技術を生かし、新型コロナウイルス感染症から回復された方から感染を阻害するヒトモノクローナル抗体を単離し、抗体製剤を作成します。

  • 剛性解析による新型コロナウイルスタンパク質の分析

    COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2に含まれる各種ターゲットタンパク質の分子構造に対して剛性解析を適用することで、薬剤との結合部位を探索して創薬に貢献します。

  • 新型コロナウイルスに対する化学合成ワクチンの開発

    一般的にワクチン開発の課題とされる「ウイルス変異」「抗体依存性感染増強」を克服すると期待されるワクチン技術mMAP(mutation-compatible multiple antigen peptides)を開発しました。この技術を応用して新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン開発を進めます。

  • ビタミンD3アジュバントを用いた簡易ワクチン開発

    ワクチンによる集団免疫はスピードと規模が鍵となります。理研での研究から見つかった、より安全なアジュバントを用いて、従来の注射針を使わないワクチン開発を目指します。とくに、発展途上国への供給を念頭に、世界中の人に、より迅速に行き渡るワクチンを開発します。

  • 新型コロナウイルス感染症治療薬候補化合物の大規模データベーススクリーニング

    新型コロナウイルスに対して最適な治療薬の発見を目指して、大規模化合物データベースから類似度検索技術による治療薬候補化合物のスクリーニングを行います。

生活や社会を持続させるための研究

  • 新型コロナウイルス流行下における遠隔交流・対話支援システムの開発

    外出自粛に伴い他人とのコミュニケーションが減ることで高齢者が認知症になるおそれが高く、高齢者を介護する施設ではクラスター感染が発生しやすくなっています。要介護高齢者が感染すると、症状が回復しても行き場がないために退院できず、病院のベッドをふさいでしまうことになり、医療崩壊につながりかねません。そこで、遠隔交流および人工知能(AI)との対話を支援するシステムを開発し、そのもとで高齢者に対話を促すことによって、認知機能や身体機能の低下を抑制します。

  • 新型コロナウイルス感染症に関するヘイトスピーチ・偽情報の分析

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延に伴うヘイトスピーチや偽情報等の攻撃的な言説の収集、分析を行います。

  • オンライン初診におけるELSIと対応策の抽出

    時限的・特例的に認められたオンライン初診について、対面では生じえなかった倫理的な問題やデータの扱いの課題といったいわゆるELSI(Ethics, Legal and Social Issues)について、オンライン、さらにはAIを用いた初診/問診における課題の分類と対応策の抽出を行います。

  • テレワークが人間に与える影響の調査・改善策の検討

    急激に注目を集めてきたテレワーク(在宅勤務)は、作業者側にさまざまな課題をもたらします。たとえば、昔からのVDT問題(作業姿勢等)の他、会話不足、ON/OFFの区切りがないことによる疲労、OFFの作り方、小部屋・小画面でのオンライン会議による疲労、など)。これらについて、諸問題を調査し、改善策の策定を目指します。

  • 長期の診療報酬データ(レセプトデータ)を用いた新型肺炎患者の重症化の予測

    大規模電子カルテデータや健診データと連結されたレセプトデータを利用して、「性年代とレセプトデータによる過去の既往症・治療・検診データ」のみを使い、機械学習手法により迅速に(数分以内に)新型肺炎の重症度予測を行う手法を開発します。

  • ICT・HPCを活用した新型コロナウイルスの感染症伝播抑止・経済対策および社会センチメントのモニタリング

    安全・安心なパーソナルデータ管理運用技術(PLR:Personal Life Repository)を用いてAI・ICT・HPCを相互連携させ、感染リスクの可視化や低リスク経路の推薦、感染伝播シミュレーションと対策立案、経済活動シミュレーションと経済対策立案などにより、新型コロナウイルスの感染拡大を抑止し、社会・経済的影響への対策を構じます。

  • ビッグデータを用いた行動変容のための情報通知内容の個別最適化

    COVID-19の流行収束をいち早く行うために、行動経済学のこれまでの実証研究の知見、およびマーケティング・メディア広告研究の知見を踏まえた上で、各個人のメディア接触や携帯端末の位置情報など得られているデータをもとに、誰にどのようなメッセージ訴求をどのタイミングでどのメディアで行うかの個別最適化を行い、感染リスクを高める行動の変容を促すことを可能にするための機械学習によるアルゴリズムを開発します。

  • コロナ感染症の蔓延阻止のための技術的、社会的および法制度的方策の検討

    コロナ感染症は薬、ワクチンなどの医療的対策以外の技術的方策や法、社会の在り方も含めて蔓延阻止の総合的方策が必要になります。法的制約、自粛、同調圧力、アフォーダンス、ナッジなどが法・社会的手段として考えられますが、これらは単独では効果が少なく、かつプライバシー保護の観点も含めて、どのように組み合わせれば効果的かを日英共同研究の形で調査、分析します。

基礎的な研究やその他の研究

  • ウイルスのライフサイクルを可視化するための技術開発

    ウイルスに対する組み換え抗体に、独自に開発した頑強な蛍光タンパク質を融合し、ヒト試料や感染細胞の中のウイルスを可視化する技術を開発する。

  • 日本で流行している新型コロナウイルスの解析

    新型コロナウイルス のゲノムの進化を調べることは、今後のワクチン開発、また病態解析に重要な情報となり得ます。理研のゲノム解析基盤を生かし、増え続ける感染者からえたウイルスのゲノムの解析を網羅的に行います。

  • 新型コロナウイルス関連学術知識探索支援システムの開発

    COVID-19に関する生物医学研究の情報科学的支援を目的として、COVID-19に関連する学術論文3万件およびその他の生物医学論文抄録2千5百万件からなる論文ビッグデータを文書横断的に自動解析するAIシステムを開発します。

  • エピジェネティクスに基づく新型コロナウイルスの解析

    メチル基転移酵素による「SARS-CoV-2」ウイルスのN6-メチルアデノシン修飾などのRNAメチル化が、ウイルス複製や宿主応答などに及ぼす影響を機械学習を用いて解析することにより、COVID-19治療の標的になる可能性があるかを探ります。

  • COVID-19の易感染性・重症化の個人差に関わる遺伝子の同定

    COVID-19の感染、重症化などの個人差は、各個人のゲノム配列の違いに起因すると考えられます。その違いを同定するため、国内の医療機関と共同でサンプルを収集し、全ゲノムシーケンスベースの解析を行います。また、国際的なコンソーシアムに参加する予定です。

  • コロナウイルス感染制御に貢献する腸内細菌叢の同定

    東京大学医科学研究所・慶應義塾大学と共同し、COVID-19感染回復者の便から、コロナウイルスSARS-CoV-2に対する抗体応答を増強できる細菌株の同定を目指します。また、セリンプロテアーゼを分解する腸内細菌株を分離したことから、この菌株を応用してコロナウイルス感染制御を目指します。

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