新型コロナウイルスに対する化学合成ワクチンの開発
- 実施センター
- 理化学研究所 科技ハブ産連本部 バトンゾーン研究推進プログラム 人工ワクチン研究チーム
- 実施代表・実施者等
- 増田 健一 チームリーダー
- 連携先
- 国立感染症研究所、山口大学ほか
研究概要
- 問1:研究の概要を教えてください。
- 新型コロナウイルスに対するワクチンを開発しています。従来のワクチンはウイルスが変異して毒性が強くなると、一からワクチンを作り直さなければなりませんでした。私たちは、どのような変異ウイルスにも対応できるワクチンを開発しています。また、ワクチンを接種すると新型コロナウイルスに感染した際に、重症化する副作用が懸念されていますが、それを回避するように設計しています。
- 問2:なぜこの研究を行おうと思ったのでしょうか。
- 過去の歴史の中で、ワクチンを完成させることができないウイルス感染症がありました。その原因は二つあり、ウイルスが変異すること、そして、ワクチン接種によって重症化を引き起こしてしまうことです。理研の免疫学の知識を生かせば、これらの問題を克服できるワクチンを作ることができると考えたからです。
- 問3:どういった方法でそれらの問題を克服するのでしょうか。
- ポイントはウイルス全体を使用しないこと。ウイルスの中で変異しない部位を見つけて、その部位だけを使った特殊なワクチンを作ります。そのワクチンを接種することによって、変異しない部位に対する抗体だけを体に作らせることができます。抗体とは、体内に侵入してきた異物にある目印(抗原)に特異的に結合して、その異物を除去する分子です。また、このワクチンによって作られる抗体は、ウイルスの感染を増強しません。
- 問4:現時点でどこまで分かっているのでしょうか。
- マウスにおいて計画通りの抗体を誘導できることが分かっています。犬や猫においても同様の抗体が作られることが分かりつつあります。
- 問5:今後の課題を教えてください。
- 私たちはコロナウイルスが変異しない部位に対する抗体を作らせるワクチンを開発しています。そのため、開発中のワクチンが新型コロナウイルスだけでなく、動物に感染するコロナウイルスへの有効性を示していくことが必要だと考えています。動物のウイルスがヒトに感染して起こる人獣共通感染症を防ぐとともに、最終的にはコロナウイルスを地球上から根絶することを目指しています。
2020年11月6日掲載