COVID-19の易感染性・重症化の個人差に関わる遺伝子の同定
- 実施センター
- 理化学研究所 生命医科学研究センター 基盤技術開発研究チーム
- 実施代表・実施者等
- 桃沢幸秀 チームリーダー
- 連携先
- 東京医科歯科大学、広島大学、アメリカ国立衛生研究所(NIH)、ロックフェラー大学 等
研究概要
- 問1:研究の概要を教えてください。何を解明しようとしているのでしょうか。または何を目指しているのでしょうか。
- 新型コロナウイルスに感染しても、人によって重症化したり、軽症ですんだり、症状が異なることは皆さんもご存じでしょう。一般に、感染症へのかかりやすさ、重症化のしやすさには個人差があります。いろいろなウイルスに対する免疫関連遺伝子には、ゲノム配列上の個人差があり、それが免疫の働きを左右することがあるからです。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)においてもその個体差を見つけることで、遺伝学的検査により重症化しやすい患者さんの同定や、重症化に繋がるメカニズム解明の糸口になると期待されます。
- 問2:なぜこの研究を行おうと思ったのでしょうか。
- ゲノム配列(ゲノムの塩基配列)の個体差は、糖尿病やがんなど多くの病気のかかりやすさ、重症化しやすさに関わっていることが知られており、理研生命医科学研究センターでも長年、継続的にゲノム解析をしています。ゲノム解析は網羅的に塩基配列を解析できるので、未知のメカニズムの解明が可能という特長を持っています。COVID-19に対してもその利点を生かすことが重要と考えたためです。
- 問3:どういった方法で解明するのでしょうか。
- 東京医科歯科大学、広島大学およびその関連病院に協力いただき、二つのグループについて匿名化した上でDNAを収集します。一つ目のグループはCOVID-19感染者の中でもリスクが低いとされる若齢で、基礎疾患がないにも関わらず重症化された患者さんグループ。二つ目のグループは重症化された患者さんと長期にわたり濃厚接触があったにもかかわらず未発症のグループです。それらDNAを、ゲノム全体の塩基配列を決定する全ゲノムシーケンスによって解析し、重症化された患者さんに特徴的なゲノム配列の個体差を特定します。
- 問4:現時点でどこまで分かっているのでしょうか。
- 私たちも参加している世界的なコンソーシアム(COVID Human Genetic Effort)によって、重症化に関わると考えられる遺伝子群がすでに同定されています(Science. 2020 Oct 23;370(6515):eabd4570)。私たちのプロジェクトでは、それらの同定結果を参考にしながら、日本人の重症化に関わるゲノム配列の個人差を特定するためのサンプルを広く収集しているところです。
- 問5:今後の課題を教えてください。
- ゲノム配列に生じる個体差には人種によって異なる特徴があるため、上記コンソーシアムで報告された結果がそのまま日本人に当てはまるかどうか、確認が必要です。また、日本人固有の原因遺伝子もあるかもしれません。そのため、できるだけ多くの日本人のDNAを解析することが重要だと思います。
2021年1月13日掲載