理化学研究所 科学講演会「地球の未来を考えよう!~研究者の“わくわく”が未来を紡ぐ~」
理化学研究所(理研)は、研究活動を紹介する機会として毎年、「科学講演会」を開催しています。今年度は日本科学未来館の未来館ホール(東京都江東区)にて、2024年2月23日(金・祝)に開催します。また、現地会場の様子をライブ配信します。
私たちは現在、エネルギーや食糧の問題、気候変動など、地球規模のさまざまな課題に直面しています。それらを解決に導くには、これまでにない新しい知恵が必要です。好奇心と発見の喜びを原動力に、研究者が“わくわく”しながら取り組む研究活動をご紹介します。
各講演時間内に、現地およびオンラインでご参加の皆さまからの質問時間を10分ほどご用意しています。プログラムの最後の講演者トークおよび全体質問では、会場でご参加いただいた方限定で、研究者への質問をお受けします。
プログラム
13:00 | 開場 |
---|---|
13:30-13:35 |
|
13:35-14:15 | 招待講演「グローバル・コモンズ—私たちの地球―を守り育むために」 石井 菜穂子(いしい・なおこ) 私たちの世界は、未曽有の地球環境危機に直面しています。私たちの今の経済の仕組みは、私たちの繁栄の基盤であり共有財産でもある安定的な地球環境システム(グローバル・コモンズ)を取り返しがつかないところまで毀損(きそん)しつつあります。私たちは今、ヒトが地球システムに多大な影響を与える「人新世」(じんしんせい)に入っているのです。では、環境危機を回避し、健全な地球を次の世代に引き継ぐために、私たちはどのように経済や暮らしの在り方を変えていかないといけないのか、そのために科学は何ができるのか、国際社会での最新の議論も交えて紹介します。 |
14:15-14:25 | 休憩 |
14:25-14:55 |
講演1「コンピュータの中にゲリラ豪雨を作る」 三好 建正(みよし・たけまさ) 晴れていると思っていたら、急にもくもくと雲が湧き立って大雨になる―地球温暖化が進み、「ゲリラ豪雨」が増えています。神出鬼没なゲリラ豪雨を、コンピュータの中で再現することで事前に予測できたら!そんな研究に取り組んで約10年、2021年の東京オリンピック・パラリンピックの期間中に30分先を予測する実証実験に成功しました。コンピュータの中にゲリラ豪雨を作れるなら、発生原因を見つけて取り除けばゲリラ豪雨が抑えられる…?コンピュータの中で天気のカラクリを探って、予測し、さらには制御する。そんな“わくわく”する研究のお話をしたいと思います。 |
14:55-15:25 |
講演2「深海巨大電池」 中村 龍平(なかむら・りゅうへい) 私の研究現場は、深海底。そこには、熱水噴出孔と呼ばれる巨大な煙突のような構造物がいくつもそびえ立っています。約10年前、私の研究チームは「熱水噴出孔は地球が作り出した天然の電池である」という仮説を提唱しました。その仮説を証明するために、沖縄や極寒のアイスランドに行き、海底調査を進めてきました。そして、最近、海底発電現象の証明に成功しました。発電量は微量で、残念ながら人類のエネルギー需要を満たすような発電ではありません。しかし、この小さな発電は、私たちが取り組んでいる壮大な研究を明るく照らしてくれています。深海発電から視えてくる生命誕生の神秘、そして地球にやさしい未来のエネルギー技術について紹介します。 |
15:25-15:55 |
講演3「植物の驚異的なリプログラミング戦略に迫る」 杉本 慶子(すぎもと・けいこ) 植物は、驚くべき再生能力を備えています。私たちの体は、傷ついても新しい手足が生えてくることはありませんが、植物の場合、茎を切って水につけておくと、新しい根が生え、新たな個体として生き延びることができます。植物は、自分が感じる「傷ついた」という信号をきっかけに、傷口付近の細胞をリプログラミングします。そして、違う細胞へと生まれ変わることで、器官が再生するのです。こうした植物再生メカニズムの新たな発見は、植物を食糧やエネルギーを生み出す生物資源として持続的に利用する上で非常に重要です。今、研究現場でどんな“わくわく”が起きているのか、植物の再生能力がもたらす未来への可能性はどう広がっているのか、お話しします。 |
15:55-16:05 | 休憩 |
16:05-16:50 |
|
16:50 | 閉会 |
開催概要・申し込み方法等
開催日 | 2024年2月23日(金・祝) |
---|---|
時間 | 13:30-16:50(13:00開場) |
対象 | 中学生 / 高校生 / 大学生/ 一般 |
会場 | 日本科学未来館 7階 未来館ホール 東京都江東区青海2丁目3番6号 |
現地参加の申し込み方法 | 科学講演会参加申込フォームからお申し込みください。 申し込み受付期間:
|
現地参加の注意事項 | 以下の注意事項をご確認、ご了承の上、お申し込みください。
|
ライブ配信 | YouTubeライブ配信(終了しました)
※予約不要・年齢問わずどなたでも視聴可 |
ライブ配信での質問 | Slidoに質問を投稿してください
※13:35-15:55の各講演時間内に、現地およびオンラインでご参加の皆さまからの質問時間を10分ほどご用意しています。16:05-16:50の全体質問は、現地でご参加の方に限らせていただきます。 |
アンケート | 科学講演会アンケート 参加・視聴後、アンケートにご協力ください。 今後の参考にさせていただきます。 |
お知らせ
日本科学未来館のミュージアムショップで、理研グッズを販売しています。講演会の思い出にぜひご利用ください。
お問い合わせ先
理化学研究所 広報室
Email: event-koho [at] riken.jp(※[at]は@に置き換えてください。)
当日に答えられなかった質問の回答
(三好チームリーダー)
- Q. データ同化の過程において、シミュレーションを実際のデータと突き合わせる作業は、どのように行うのでしょうか?
- A. シミュレーションする変数を実際のデータの変数に変換して、付き合わせます。例えば温度計で測定する温度データの場合、シミュレーションする変数から、当該温度計の場所の温度に内挿して変換します。気象レーダで観測する雨雲の強さのデータの場合、シミュレーションする変数から、当該レーダで観測される雨雲の強さに変換します。
- Q. 東京オリンピック・パラリンピックでは富岳を7%使用したとのことでした。もし富岳を100%使ったら、どんなことが可能になりますか?
- A. 東京オリンピック・パラリンピックの際は、1基の最新鋭のマルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダが観測する半径60kmの円内の予報を行いました。もし富岳が100%が使えたら、14倍の計算ができますので、14基のレーダが観測する範囲に拡大できます。しかし、現在は14基もマルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダがありませんので、もしレーダが14基あれば、という仮の話になります。
(中村チームリーダー)
- Q. 最後の研究でもし化学反応が生命に変わり、微生物が誕生した場合、どのようにしてそれを確認しようと考えていますか?
- A. まず、太古のチムニーの環境を反応容器内で再現します。反応容器の中には、鉱物と海水、そして二酸化炭素や窒素源が存在し、そこに微弱な電気を加えます。反応を何度も繰り返すことで、小さな分子が結合しはじめ、アミノ酸や脂質などの生体分子が誕生してきます。そして、脂質が集まることで細胞のような小さなシャボン玉が生まれると、化学反応から生命への進化が一気に加速します。この細胞の器を、「顕微鏡で観察」できれば大きな一歩になります!そして、生命の大原則である「細胞の増殖(子孫を作る)」を、顕微鏡で観察できれば、生命が誕生したということになります。
- Q. 生命活動には酸素が必要だと思い込んでいたのですが、深海で酸素はどのように供給されているのでしょうか/それとも酸素は必要ないのでしょうか。
- A. 人間も含め多くの生物には酸素が必要です。酸素がないと呼吸ができないので、窒息死しますよね。しかし、ある特殊な生物(微生物)は、酸素が全く無くても、生きることが出来ます!酸素の代わりに、硝酸イオンや硫酸イオン、さらには鉱物を使って呼吸しています。このような生きざまを嫌気呼吸といい、チムニーの周りにいる微生物の多くは嫌気微生物になります。そして、このような微生物にとって、酸素は猛毒になります。地球上に酸素が生まれたのは、今から27億年くらい前です(Great Oxidation Evantといわれています)。それ以前は、酸素がない環境でした。そして生命は、38億年も前から存在しているので、実は、酸素を使わない生物の方が、歴史が長いということになります。ちなみに、ご自身のおなかの中には、たくさんの嫌気微生物がいますよ。
一方で、ゴエモンコシオリエビのような動物は、酸素がないと呼吸ができません。そのため、ゴエモンコシオリエビは、地表の大気から僅かに海水に溶け込んだ酸素を使って、呼吸をしているのです。