8月28日ミラノで行なわれたIFACの第18回世界大会で、木村英紀連携センター長(東大名誉教授、理研BSI-トヨタ連携センター長)が、表記のメダルを受賞しました。IFACは自動制御の分野の国際組織で正式名はInternational Federation of Automatic Control、1958年に設立され現在52カ国が加盟しています。日本からは、日本学術会議が加盟団体となっています。
Giorgio Quazzaメダルは、若くして山岳事故で亡くなったイタリアの電力制御システムの研究者で多くの先駆的な業績を残したGiorgio Quazza氏を記念して1981年に設立された賞で、IFACでは最も権威の高い賞とされています。3年ごとに1名が選ばれ、木村連携センター長は11人目の受賞者となります。これまでの受賞者はすべてヨーロッパとアメリカ、オーストラリアで占められており、アジアからの受賞は木村連携センター長が初めてです。
世界大会には2700名の出席が予定されており、28日の夕刻からミラノの国際会議場(MiCo)で行なわれた受賞式は広い会場を埋め尽くす参加者で熱気に包まれました。開会式をかねた授賞式はミラノの土地柄を反映して、歌と管弦楽を背景に華やかに陽気に行なわれました。木村連携センター長は受賞者の最初に登壇し、その業績がIFAC会長のAlberto Isidori氏から紹介されたあとメダルが手渡されると会場全体からの大きな拍手が何度も起こりました。授賞式のあと木村連携センター長を囲む大きな輪ができ、アジアからの初めての受賞に感激する日本の若い参加者の声も多く聞かれました。
今回受賞した木村連携センター長の主な業績は、ロバスト制御および多変数制御の理論的な研究で評価されたものです。特に、不確かさを含む制御対象に対して、有効な制御系を設計するために用いられるロバスト制御の基盤的な方法論を作り上げた木村連携センター長の独創的な成果は、新しい設計法の開発につながり、木村連携センター長はこの分野での研究の指導的な立場を不動のものとしました。理論工学が弱い日本では貴重な存在であると言えます。
制御工学は理論が牽引する分野であり、最近では複雑で大規模なシステムを合理的に制御するためますます重要性が高まっている分野です。自動車やロボット、家電製品などの工業製品は高度な制御系が組み込まれるようになり、最近ではエネルギーやインフラ、医療、金融、経営などの分野でもシステムが巨大化するとともに制御理論の本格的な応用が広がりつつあります。わが国は要素技術は強いもののシステム技術は弱いといわれており、今回の木村連携センター長の受賞により、システム技術の象徴的な分野である制御工学・制御理論の分野で日本の存在感が高まり、同時にこの分野が重要であることの認識が国内で高まることを期待しています。
木村 英紀 連携センター長 略歴
学歴
1965年 | 東京大学工学部計数工学科卒 |
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1970年 | 東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻博士課程修了(工学博士) |
職歴
1970年~1971年 | 大阪大学基礎工学部制御工学科 助手 |
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1971年~1973年 | 大阪大学基礎工学部制御工学科 講師 |
1973年~1987年 | 大阪大学基礎工学部制御工学科 助教授 |
1987年~1994年 | 大阪大学工学部電子制御機械工学科 教授 |
1994年~1995年 | 大阪大学基礎工学部制御工学科 教授 |
1995年~1999年 | 東京大学工学部計数工学科 教授 |
1999年~2004年 | 東京大学大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻 教授 |
2001年~2008年 | 理化学研究所バイオミメティックコントロール研究センター 生物制御システム研究チーム チームリーダー |
2007年~現在 | 理化学研究所 理研BSI-トヨタ連携センター 連携センター長 |
2009年~現在 | 科学技術振興機構研究開発戦略センター 上席フェロー |