1. Home
  2. 広報活動
  3. お知らせ
  4. お知らせ 2014

2014年4月9日

理化学研究所

10mW以上の出力で発光する深紫外線LEDモジュールを開発

-パナソニック株式会社 エコソリューションズ社が6月に発売-

理化学研究所(理研)とパナソニック株式会社 エコソリューションズ社 (パナソニック)が2007年から開発を進めてきた「深紫外線LED(UV-LED)モジュール」が製品化され、同社が2014年6月16日(注)より発売します。これは、理研の「産業界との融合的連携研究制度[1]」における平山秀樹主任研究員(平山量子光素子研究室)とパナソニックとの共同研究の成果です。

開発した深紫外線LEDモジュールは、除菌能力を有する270ナノメートル(nm、1nmは10億分の1m)の波長域の深紫外線を10mW以上[2]の出力で発光します。また、薄型、防滴、水銀フリーという特徴を備えています。

従来、270nm付近の深紫外線領域の光源としては、冷陰極ランプや水銀ランプの商品が主流でした。しかし、従来の光源はサイズが大きく点灯用インバータを必要とするため、広い取付けスペースが必要、ガラス素材のため破損しやすい、瞬時に点灯できないなどの問題がありました。これらの問題から、小型で長寿命といった特徴を持つUV-LEDへの置き換わりが進むとされています。ところが、UV-LEDは結晶成長技術上の課題により深紫外線領域の光を高効率・高出力で発光することが困難でした。

この課題を解決したのが理研で開発した、低欠陥結晶成長プロセス技術に基づくAlNバッファー層のアンモニアパルス成長技術と、MQB(多重量子障壁)構造[3]の高効率電子ブロック層の導入をはじめとした各結晶層の最適設計技術です。本製品は、LEDチップの結晶欠陥密度を同社従来製品の1/3程度に低減することで大幅に発光効率を高め、270nm[2]付近の深紫外線を発光します。実際に、菌を塗布した寒天培地上に150mmの距離から10分間照射したところ、菌が99.9%以上死滅することを確認しました(一般財団法人日本食品分析センター試験)。また、薄型(高さ3.25mm)で防滴仕様(IPX4相当[4]、LEDパッケージ前面部のみ)としたことで狭い空間や水まわりにも組込みが可能となります。さらに、水銀を含まないHgフリー、オゾン発生ゼロなど、環境負荷が少ないのも特長です。

モジュールの外観写真と発光スペクトルの図

左右にスクロールできます

項目 仕様(暫定)
ピーク波長 270nm[2]
出力 10mW以上[2]
寿命保証 10,000時間[2]
寸法 縦15mm×横25mm×高さ3.25mm
照射角 90度
希望小売価格 オープン価格
発売日 2014年6月16日
月間生産台数 10,000台

図版提供:パナソニック株式会社 エコソリューションズ社

図 殺菌用深紫外線LED(UV-LED)モジュールの外観と発光スペクトルおよび暫定仕様

特長

(1)270nm[2]域UV-LEDで10mW以上[2]の出力と10,000時間[2]の寿命を実現

除菌用途の深紫外線光源には、長時間点灯していても低い消費電力であること、および部品交換が少なくて済むよう長寿命が求められています。本製品は、270nm[2]付近の深紫外線LEDチップをパッケージング化し、10mW以上[2]の出力を有し、10,000時間[2]の寿命を実現する深紫外線LEDモジュールとしました。これにより、搭載機器の省エネ性、省メンテナンス性に貢献します。

(2)薄型(高さ3.25mm)・防滴仕様(IPX4相当)の設計により、狭い空間や水まわりへの取り付けが可能

組み込み機器であるUV-LEDモジュールは、多様な搭載機器への高い組み込み自由度が要求されます。本製品は、設計最適化により高さ3.25mmの薄型を実現し、IPX4相当の防滴性能を有しています。また、アルミ基板の採用により、取り付けやすさも確保されています。狭い空間内や水滴の飛散が想定される箇所でも使用でき、搭載機器の設計自由度を高めます。

(3)水銀(Hg)を含まず、オゾンを発生しない環境性能

環境への負荷低減は近年ますます重要な課題となっています。本製品は、水銀を含まず、オゾンを発生しないオゾンを発生しないLEDであり、地球環境保全への取り組みをサポートします。

製品化を可能にした技術

(1)低欠陥結晶成長プロセス技術に基づくAlNバッファー層のアンモニアパルス成長技術

LEDの半導体結晶において、結晶成長時に発生する貫通転位と呼ばれる結晶欠陥の密度が高いと、発光層の内部量子効率が悪化し、光出力が低下します。サファイア基板を用いたUV-LEDの分野においては、この問題の解決が高効率化の課題となっていました。本製品においては、原料ガスであるアンモニアをパルス供給する新たな結晶成長技術を開発することで、結晶の欠陥密度を従来品の1/3程度にまで低減することが可能となり、これによって従来品より高い内部量子効率を得ることに成功しました。

(2)MQB構造の高効率電子ブロック層の導入をはじめとした、各結晶層の最適設計技術

LEDの半導体結晶は複数の層から形成されており、各結晶層の最適化が発光効率の向上につながります。本製品では、MQB構造を用いた高効率電子ブロック層の導入、AlGaN層へのドーピング、組成・層圧の最適化などにより、高い発光効率を実現しました。

(3)長寿命化・薄型・防滴パッケージング技術

高熱伝導性のインターポーザー基板[5]を介した放熱性に優れたチップ実装技術、均一な照射を可能とする低背なリフレクタの光学設計技術、接着構造の工夫による防滴封止技術等を駆使した設計最適化により、長寿命化を図るとともに15mm×25mm×3.25mmの薄型・防滴仕様のパッケージングを実現しました。

補足説明

  • 1.
    産業界との融合的連携研究制度

    理研社会知創成事業イノベーション推進センターが、産業界との新しい連携の形として2004年度から展開している企業主導を重視した研究制度。(1)企業のニーズに基づいた研究テーマの設定、(2)研究計画の共同作成、(3)企業からのチームリーダーの受け入れ、(4)理研と企業の研究者が参加する時限付きの研究チームの編成、(5)理研の研究設備などの活用、(6)企業と理研の両者で研究予算を負担する、という特徴のもと、企業と理研が一体的に連携研究を実施する。
    詳細:産業界との融合的連携研究制度

  • 2.
    10mW以上、270nm、10,000時間

    定格120mA、室温25℃の条件において、初期光量の70%(LT70)になるまでの参考時間。

  • 3.
    MQB(多重量子障壁)構造

    バンドギャップの異なる半導体層を多数重ねた多重量子障壁層を用いて、従来のシングル障壁層を用いた時よりも電子の反射効果を向上させて電子のリークを抑え、LED発光層への電子注入効率を向上させるための構造のこと。

  • 4.
    IPX4相当

    IPXはJIS規格C0920に基づく防水保護等級であり、IPX4は「あらゆる方向からの飛まつによる有害な影響がない」程度の性能を有していることを表す。

  • 5.
    インターポーザー基板

    LEDチップとモジュール回路基板との間に配置される接続用基板のこと。

製品に関するお問い合わせ

パナソニック フォト・ライティング株式会社 お客様相談
Tel: 072-682-7626(受付:9:00~17:00)

産業界との融合的連携研究制度に関するお問い合わせ

独立行政法人理化学研究所 社会知創成事業 イノベーション推進室
産業界との融合的連携研究制度担当
Tel: 048-462-5459 / Fax: 048-462-4718
yugorenkei [at] riken.jp
※[at]は@に置き換えてください。

報道担当

独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当
Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715

Top