理化学研究所は英国SERC(科学工業研究会議)とミュオン科学に関する国際研究協力協定を1990年に締結し、その翌年より英国ラザフォードアップルトン研究所(RAL)の大強度パルス状陽子実験施設(ISIS)に大強度ミュオンビーム発生施設の建設を開始いたしました。1996年に施設は完成、現在に至るまで日本、英国、世界の研究者に開放したミュオン科学研究を推進しております。
これまで、のべ900名を超える研究者が理研―RAL支所ミュオン施設の実験に参加、国際学術雑誌に発表した論文数は380編を超えました。中でも量子スピン液体の本質に迫る研究(F.L. Pratt, I. Watanabe et al., Nature 471, 612-616 (2011).)やミュオン触媒核融合反応での阻害要因となるα付着過程の直接観測(N. Kawamura, K. Nagamine et al., Phys. Lett. B 465, 74-80 (1999).)といった突出した成果を上げております。
現在、RALの陽子加速器(ISIS)に建設したミュオン施設においては、世界最高精度のパルス状ビームの素粒子ミュオンを用いて、物質内部の磁場構造の測定・解析、新機能性物質における超伝導性、磁性、伝導及び絶縁性等の性質の発現機構の解明とともに、超低速エネルギーミュオンビーム発生技術の高度化が進められています。
2016年2月16日~17日、理化学研究所和光事業所において、理研RAL(ラザフォード・アップルトン研究所)の計画が立ち上がって四半世紀を記念し、これまで理研RAL施設を活用もしくは関わってきた共同研究者ら150名を超える参加者によるユーザー・ミーティングが開催されました。
インドネシア、マレーシアの共同研究者による口頭発表に引き続き、ポスターセッションにおいては国内外の研究者による88件のポスター発表とともに、理研RALにおけるミュオン科学研究の活発な議論が行われました。
ポスターセッションに合わせて催された記念行事においては、小安理事、延與センター長、King RAL支所長、ユーザーを代表して高エネルギー加速器研究機構 門野教授によるご挨拶の他、英国ヒチェンス大使からのお祝いのメッセージが披露されました。また、RAL支所の開設にご尽力いただいた永嶺名誉研究員より乾杯の言葉をいただきました。また、英日協力の25周年を祝したケーキ・カットも行われました。
ポスターセッションの場においては、ミュオン研究分野以外の研究者も加わったディスカッションに発展し、今後もミュオン分野に限らず、日英の科学技術の発展を祈念して終了いたしました。