松岡 聡センター長(計算科学研究センター)が計算機科学研究への功績が評価され、令和4年春の紫綬褒章を受章することが決定しました。
業績の概要
計算機科学の分野において、現代のスーパコンピュータの劇的な性能進化に先駆的な研究で大いに寄与するだけでなく、それらの成果を直接的に世界トップクラスの実運用スーパコンピュータに適用し、世界トップの技術として普及させた。特に、スーパコンピュータにおける世界初の大規模なGPU利用の実現、先進的な冷却設備の導入、さらに超大規模なシステムの耐故障性の実現などにおいて、先駆的な設計法を提案・実践し、またそれらを高効率で利用するための超並列アルゴリズム研究開発を行うことにより、計算機科学分野の進化、ならびに我が国のスーパコンピュータを利用する計算科学分野全体における研究能力の大幅な底上げに貢献した。
顕著な研究業績の具体的内容
- 1.スーパコンピュータの構成法に関する研究では、平成22年に実用規模のスーパコンピュータでは世界で初のGPUの演算能力を主として利用するTSUBAME2.0を開発し、その後も同シリーズにおいてGPUを用いたスパコンの開発を継続し、今年では米国DoEなどによる世界トップレベルのスパコンの大多数がGPUを中心とした構成となっている(平成13年~30年)。
TSUBAME2.0において、平成23年ACM Gordon Bell Prizeを受賞。 - 2.
スーパコンピュータにおけるシステムソフトウェアおよび性能最適化の研究では、GPUやFPGAを用いた計算機における高性能計算アプリケーションの性能最適化のため、性能ボトルネックを解析し、性能モデリングに基づく自動チューニングなども活用することで、様々なアプリケーションの性能最適化や、そのためのアプリケーション記述フレームワークの開発を行った(平成13年~現在)。
上記1および2の成果により、平成26年IEEE Computer Society Sidney Fernbach Memorial Awardを日本人で初めて受賞。
- 3.我が国のフラグシップスパコンであるスーパコンピュータ「富岳」の開発をリードし、ARM CPUの汎用性を活用したスパコンを実現させるとともに、その運用においてもCOVID-19禍における諸問題に計算科学の側面から対応にあたるため、運用開始を早めて飛沫シミュレーションをはじめとした多数の成果の早期創出に貢献した(平成22年~現在)。
この活動の一環として、新型コロナウィルスの飛沫感染シミュレーションにおいて、令和3年ACM Gordon Bell Prize賞を再び受賞した。
受章者のコメント
今回、長年我が国のスーパコンピュータが世界のトップランナーであり続けた事に対する私共の種々の貢献を評価いただき、受章の運びとなったのは誠に光栄です。スーパコンピュータは、今後我が国のソサエティ5.0を実現するための「デジタルツイン」の根幹的技術および基盤として進化を続けており、今後もその発展に対し、研究コミュニティを先導し、引き続き貢献していきたいと思っておりますので、今後も国民の皆様のご支援を賜れれば大変幸いです。