関口仁子客員研究員(仁科加速器科学研究センター スピン・アイソスピン研究室/東京工業大学教授)が、第42回猿橋賞を受賞することが発表されました。猿橋賞は、一般財団法人「女性科学者に明るい未来をの会」により毎年、自然科学の分野で顕著な業績をおさめた女性科学者に贈呈される賞です。
関口客員研究員は、「原子核物理学における三体核力の実験的研究」の業績が評価され、受賞に至りました。
授賞式は、5月29日に都内で行われる予定です。
受賞者のコメント
第42回猿橋賞を受賞させて頂くこととなり、大変嬉しくまた光栄に思っております。
私にとりまして、本賞受賞の対象となった三体核力(以下、三体力)とは本当に出会いであったと思います。大学院修士課程に入りたての頃に三体力が実験で見えるかもしれないという理論の示唆があり、指導教官の酒井英行先生から「この実験研究をやってみるか」という提案を受けて研究を開始しました。当時の私の気持ちは、「いきなり研究の最前線に立たされてしまった」というもので、嬉しさ半分、恐ろしさ半分の複雑なものでした。
まず我々の最初の実験は理研加速器施設(現 理研RIビームファクトリー)で実施しました。理論との比較に耐えうる高精度データの取得に成功、三体力効果の存在を確定させました。その後、三体力という「新しい核力」の性質を明らかにするため、理研RIBF、大阪大学核物理研究センター、東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターの加速器施設で研究展開しています。このように私たちが実験をすることで、三体力を含む核力の理解が定量的に進み始めたこと、また三体力が、原子核の基本的な性質や、中性子星などの天文・宇宙の現象への影響に対しても議論され始めたことなど、私がこの研究を始めた当初には想像もしていなかった研究の広がりを、今現在実感しています。
最後に、本研究は理研仁科加速器科学研究センターの皆様をはじめ、国内外の共同研究者の方々、各大学・研究機関関係者の皆様の全面的な協力を得て遂行しております。この場を借りまして厚く御礼申し上げます。
関連リンク
- 2021年2月4日プレスリリース「三つの陽子の間にはたらく三体力へのアプローチ」
- 本年の受賞者 - 猿橋賞 | 一般財団法人「女性科学者に明るい未来をの会」