橋本 直 理研ECL研究チームリーダー(開拓研究本部 橋本中間子理研ECL研究チーム/仁科加速器科学研究センター 中間子理研ECL研究チーム)ら4名が公益財団法人高エネルギー加速器科学研究奨励会の2024年度奨励賞(小柴賞)を受賞することが決定しました。
高エネルギー加速器科学研究奨励会奨励賞は、加速器ならびに加速器利用に係る研究において、特に優れた業績をおさめた研究者・技術者に4賞(西川賞、小柴賞、諏訪賞、熊谷賞)で構成される奨励賞を授与し、加速器科学の発展に資することを目的として設立されました。中でも小柴賞は、素粒子分野などの基礎科学における測定器技術の開発研究において、独創性に優れ国際的にも評価の高い業績をあげた、個人またはグループの研究者及び技術者に贈られます。
授与式は3月5日にアルカディア市ヶ谷(私学会館)にて執り行われる予定です。
小柴賞受賞者




研究課題/業績
極低温検出器を用いたエキゾチック原子X線精密分光の開拓
受賞理由
TES(超伝導転移端センサー)は、超伝導相転移近傍の電気抵抗変化を利用した極めて高感度な熱量センサーである。受賞者らは、極低温環境での高度なノイズ管理技術を駆使し、加速器環境においてもTESの性能を最大限に引き出す手法を確立した。この手法により、世界に先駆けて陽子加速器施設でのTESの安定運用を可能にし、TESを用いたエキゾチック原子の高精度X線測定において、画期的な成果を次々と生み出した。その成果は国際的にも高く評価されている。また、米国NISTを含む国際コラボレーションを主導し、原子核・ハドロン物理、原子分子物理、ミュオン科学などの多分野の研究者と協力しながら、TES技術を活用した加速器科学の進展に貢献した。
橋本 理研ECL研究チームリーダー、岡田 客員研究員、山田 客員研究員は、2012年のプロジェクト黎明期より測定器技術の開発と加速器ビームラインの基盤構築に携わり、プロジェクトを主導。奥村 客員研究員は2019年からミュオンを用いた実験の展開に加わり、進展に貢献した。こうした多分野にわたる研究者との連携を主導し、技術革新を推進してきたことが評価され、4名による共同受賞に至った。
受賞者らのコメント
このたび、名誉ある賞をいただき光栄です。本研究には分野をまたがる多数の研究者との協力が不可欠でした。各研究機関、加速器施設の支援とあわせて感謝しております。今後より一層TES検出器を利用したサイエンスの創出を推し進めるとともにTES検出器の国産化にも取り組みたいと思います。