理化学研究所(理研)は、スーパーコンピュータ「富岳」[1]の次世代となる新たなフラッグシップシステム(開発コードネーム:「富岳NEXT」)注)について、神戸市中央区港島南町のポートアイランド(第2期用地)にある理研神戸地区隣接地に整備することを決定しました。「富岳NEXT」を設置する建屋を新たに建設する予定です。文部科学省HPCI計画推進委員会「次世代計算基盤に関する報告書 最終取りまとめ」[2] (2024年6月)で示された、「京」から「富岳」移行時のようなシステム入れ替えによる「端境期」を極力生じさせないという観点や、既存の「富岳」関連施設を活用するとともに、施設の増強を行うことが、合理的かつ経済的であると判断しました。
計算科学研究センター(R-CCS)では、理研神戸地区において「富岳」に加え、「最先端研究プラットフォーム連携(TRIP)[3]」構想で進める「AI for Science[4]」や「量子HPC連携プラットフォーム[5]」に関する計算基盤の開発・整備を進めています。「富岳」と連携して社会的課題の解決に貢献するとともに、得られた知見は「富岳NEXT」の開発・整備に生かしていく予定です。また、データセンターなどの運用技術の高度化や省エネルギー化に向けた開発も進めています。
今回新たに「富岳NEXT」を開発・整備することで、理研神戸地区は、先端的な計算基盤が集積する、世界的に見ても特色のある研究施設となります。このことにより、目的に応じた、さまざまな計算資源を活用した計算科学の推進だけではなく、計算可能領域の拡張などを目指した計算機科学の世界最先端の研究開発と、計算基盤に関する高度な運用技術の開発を行う拠点となります。
R-CCSではこれまでも、国内外の研究者を集めたハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)に関する国際会議や研究集会の開催、人材育成を進めてきました。計算科学や計算機科学に関する拠点化がいっそう進むことで、世界各国から先端的の研究開発を担う人材が集まり、国内外の大学、研究機関、企業との協創の場になるだけでなく、同分野における若手人材の育成の場として機能することが期待されます。その嚆矢(こうし)として2026年1月、日本初開催となるHPC技術に関する国際会議「SupercomputingAsia(SCA)」と、「HPC Asia」が合同で、「SCA/HPC Asia2026[6]」として大阪府立国際会議場(大阪市北区)を会場に開催されます。
また、人材育成および地元企業などとの連携に関しては、引き続き、兵庫県、神戸市からの支援を得て取り組むこととしています。
- 注1)2025年1月22日お知らせ「スーパーコンピュータ「富岳」の次世代となる新たなフラッグシップシステムの開発・整備を開始」

「富岳NEXT」の整備予定地(赤枠)
※赤枠の上方(北側)が「富岳」などが整備・運用されているR-CCS
補足説明
- 1.スーパーコンピュータ「富岳」
スーパーコンピュータ「京」の後継機。2020年代に、社会的・科学的課題の解決で日本の成長に貢献し、世界をリードする成果を生み出すことを目的とし、電力性能、計算性能、ユーザーの利便性・使い勝手の良さ、画期的な成果創出、ビッグデータやAIの加速機能の総合力において世界最高レベルのスーパーコンピュータとして2021年3月に共用が開始された。現在「富岳」は日本が目指すSociety 5.0を実現するために不可欠なHPCインフラとして活用されている。 - 2.「次世代計算基盤に関する報告書 最終取りまとめ」
次世代計算基盤に関する報告書 最終取りまとめについて:文部科学省 - 3.最先端研究プラットフォーム連携(TRIP)
理研において、2023年度から開始した、理研の強みである各領域の最先端研究をリードする最先端研究プラットフォーム群(スーパーコンピュータ「富岳」、量子コンピュータ、大型放射光施設「SPring-8」、X線自由電子レーザー施設「SACLA」、バイオリソース事業など)を有機的に連携させ、新たな知の領域を、研究分野を超えて効果的に生み出す革新的な研究プラットフォームを創り出す挑戦的なプロジェクト。具体的には、新型計算機と予測アルゴリズム、データ整備を連携させ、未来の予測制御の科学を開拓することを目指し、良質なデータ整備(TRIP1)、AI×数理で予測の科学を開拓(TRIP2)、計算可能領域の拡張(TRIP3)のプラットフォームを整備・連携し、人類の課題解決に貢献する研究DX基盤として機能させるとともに、これらを活用し、新たな価値の創成に資する研究を推進している。TRIPはTransformative Research Innovation Platform of RIKEN platformsの略。
最先端研究プラットフォーム連携事業本部 - 4.AI for Science
AIとシミュレーション、多様なデータを組み合わせるなどして、科学技術にAIを活用し、研究プロセスを大きく加速させる取り組み。これにより、さまざまな分野で画期的な科学技術イノベーションをもたらすことが期待される。理研では、「AI for Science」を推進するため、AIを活用したさまざまなシミュレーションなどの研究に取り組むとともに、2024年度にライフ・材料などの科学研究のための基盤モデルの開発・活用を行う「TRIP-AGIS」プログラムを新たに開始している。 - 5.量子HPC連携プラットフォーム
理研は、横断プロジェクトTRIPを推進することとしており、その一環として、量子コンピュータ(Quantum Computing: QC)とスーパーコンピュータ(High Performance Computing: HPC)とを高度に連携させ、計算可能領域を拡張することが求められている。量子コンピュータを実用化・活用するためにはQCとHPCとの有機的な統合利用が必須であり、理研ではQCとHPCを連携させるシステムソフトウェアの開発を進め、量子研究のためのプラットフォームを構築し量子コンピュータの本格利用を支援する。 - 6.SCA/HPCAsia2026
SCAは2018年に始まり、オーストラリア、日本、シンガポール、タイのHPCセンターが毎年共同で開催している国際的なHPCイベント。日本での開催は初。「HPC Asia:The International Conference on High Performance Computing in Asia-Pacific Region」は、1990年代から開催されているアジア・太平洋地域におけるHPC技術に関する国際会議。両国際会議は合同で、2026年1月26日から29日の4日間、大阪国際会議場で開催する。R-CCSは実行委員会の主要メンバーとして大会を盛り上げていく予定。
SCA/HPCAsia 2026 - Convention Linkage, Inc.
問い合わせ・機関窓口
理化学研究所 神戸事業所 計算科学研究推進室 アウトリーチグループ
Email: r-ccs-koho@ml.riken.jp
理化学研究所 広報室 報道担当
理化学研究所 広報室 お問い合わせフォーム