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2025年7月9日

理化学研究所

理研R-CCSとCEA、研究協力覚書を更改し連携を強化

-大阪・関西万博で開催のCEA創立80周年式典で調印-

理化学研究所(理研)は、フランス原子力・代替エネルギー庁(Commissariat à l’énergie atomique et aux énergies alternatives:CEA)と長年にわたるパートナーシップに基づき、研究協力を推進しています。このたび、理研 計算科学研究センター(R-CCS)との研究協力について再確認し、「高性能計算アプリケーション、AI、ビッグデータ、量子コンピューティング、システムソフトウエア開発、新規アーキテクチャの性能解析、運用技術を含む計算科学・計算機科学分野」での協力に関する覚書(MoU)を更新しました。このMoUの下で、両機関によるスーパーコンピュータ「富岳」を利用した研究協力を推進します。

MoUの調印は、2025年7月1日に大阪・関西万博におけるCEA創立80周年式典の一環として、万博会場のフランスパビリオンにて執り行われました。式典では、松岡 聡 R-CCSセンター長が「理研とCEAよるHPC分野での連携」と題した講演を行いました。講演を通じ、R-CCSとCEAの関係の強さと深さ、そして計算科学・計算機科学の最前線を切り開くという両機関に共通する使命を明確に示しました。

理研とCEAの連携は、2017年に高性能計算における計算科学・計算機科学に関する最初の協定を締結したことに始まります(注1)。それ以来、年2回の「CEA-RIKENワークショップ」を開催し連携を深め、自然災害、材料科学、プラズマ物理といった重要分野における科学アプリケーションの開発と最適化、またそれを支えるシステムソフトウエア開発において密接に協力し、双方のスーパーコンピューティング技術を進化させてきました。

この連携協定の下、2021年11月にはR-CCSとCEAの間で、より具体的な研究協力活動を促進するための追加的なMoUが締結されました。このMoUに基づく共同研究の成果として、R-CCS、CEA、ローレンスバークレー国立研究所(米国)などから構成される国際共同研究チームによる革新的なプラズマベースの粒子加速器の設計に関する研究は、2022年のHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング:高性能計算技術)に関する国際会議「The International Conference for High Performance Computing, Networking, Storage, and Analysis(SC22)」においてゴードン・ベル賞を受賞しました(注2)

その後も両者の協力関係の拡大を図り、量子コンピューティング分野を含めるなど、理研とCEAとの連携協定を2022年に改定しました。この改定以降のCEA-RIKENワークショップ(注3)では量子コンピュータに関する議論が特に活発化しており、両機関の研究者間での交流と共同研究の可能性が一層深まっています。

これらの成功を礎に、今回連携協力の見直しを行い、性能予測ツールの開発、マルチスレッド版MPI(注4)の開発、「富岳」上での地震シミュレーションコードモジュールのサポートなどを新たに追加したMoUに更改しました。

この分野における日本とフランス両国の取り組みに目を向けると、両国共通の戦略的ビジョンの下、高性能計算技術が、数値シミュレーションやビッグデータ処理の基盤であると同時に、科学的卓越性、産業革新、経済的レジリエンスを推進する重要な原動力であると認識されています。両国ともエクサスケール計算に向けた国家プログラムが進行中であり、アカデミア、研究機関、産業界の連携を促進するコ・デザイン(共同設計)イニシアティブを通じた協力を深めています。

そして技術面では、理研とCEAは、Armアーキテクチャの採用、オープンソフトウエアエコシステムの開発、相互運用性、産業連携、ユーザーエコシステムの発展に重点を置くなど、多くの点で足並みを揃えています。

またこのパートナーシップは、研究協力の枠を超えて次世代の科学者や技術者の育成にも重要な役割を果たしています。そしてこの協働活動は、若手研究者のための日仏間の交流や共同研究の機会を積極的に支援しています。

R-CCSとCEAは、イノベーション、オープン性、科学的卓越性によって未来を切り開くという共通の志の下、高性能計算分野での協力を今後も継続していきます。

松岡 聡とCatalin Mironの写真
  • 右:松岡 聡 センター長(理化学研究所計算科学研究センター)
  • 左:Catalin Miron ディレクター(Research Infrastructures, European and International Affairs, CEA, 代理署名)

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