坂口 志文 先生、ノーベル生理学・医学賞のご受賞、誠におめでとうございます。
坂口先生が40年以上にわたり取り組まれてきた免疫寛容の維持機構の研究、とりわけ「制御性T細胞(Treg)」の発見とその分子基盤の解明という世界的業績が、ついに最高の栄誉として評価されたことに、心より敬意と祝意を表します。
坂口先生は1980年代初頭から、自己免疫疾患の発症抑制に関わるリンパ球群の存在を着想し、その実験的証明を積み重ねてこられました。1990年代以降は、CD25陽性CD4陽性T細胞が免疫反応を抑制する制御性T細胞であることを明らかにし、その分化・維持に必須な転写因子Foxp3などの分子機構を解明されました。これらの発見は、自己免疫疾患、アレルギー、がん免疫など幅広い疾患研究の礎となり、免疫の恒常性を理解する上でのパラダイム転換をもたらしました。
坂口先生は理研 免疫・アレルギー科学総合研究センター(現・生命医科学研究センター)にも在籍され、基礎科学の探究に一貫して真摯に取り組まれてこられました。その揺るぎない研究姿勢は、理研の理念である「科学の創造的発展」に通じ、多くの研究者に深い感銘と勇気を与えてきました。
この受賞が、基礎研究の重要性を社会に再認識させる契機となることを願いつつ、坂口先生の今後ますますのご健勝とご活躍を心よりお祈り申し上げます。