大阪大学 特任教授の坂口 志文 博士が、本年のノーベル生理学・医学賞を受賞されましたことを、心よりお祝い申し上げます。
坂口博士は、過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞(Treg細胞)」を発見され、長年にわたる粘り強い研究の成果として、自己免疫疾患やがんなど多くの疾患に対する新しい治療法や医薬品の開発に道を拓かれました。
博士は米国での研究を経て帰国後、若き研究者として理化学研究所(理研)に在籍し、1995年に発表された制御性T細胞に関する論文で、ノーベル財団からも「画期的な研究」と評される成果を挙げられました。
さらに2003年には、理研にチームリーダーとして復帰され、制御性T細胞の機能を司る転写因子Foxp3の役割を堀 昌平 研究員(現 東京大学 大学院薬学系研究科 教授)と共に解明されました。理研での研究がその後の大学での成果へと発展し、今回の受賞につながったことを大変喜ばしく思います。今後もこの研究が多様な疾患の解明と治療の進展へと広がっていくことを期待しています。
理化学研究所では、本年度から始まった7年間の中長期計画において、次世代を担う若手研究者の育成と、大学との連携強化を重要な柱として掲げています。理研で育った優れた研究者が大学などに活躍の場を移す際にも、研究を継続しながらさらに飛躍できるよう、組織的な支援を進めてまいります。
改めまして、坂口 志文 博士のご受賞に心からお祝いを申し上げるとともに、理化学研究所としても、若手研究者の育成や我が国全体の科学技術力の向上に一層貢献してまいります。
* ノーベル財団のページ(英語)
Scientific background 2025 : Immune tolerance The identification of regulatory T cells and FOXP3 (PDF)
※論文中の組織表記について
Sakaguchi, S., N. Sakaguchi, M. Asano, M. Itoh, and M. Toda. 1995.
'Immunologic self-tolerance maintained by activated T cells expressing IL-2 receptor alpha-chains (CD25). Breakdown of a single mechanism of self-tolerance causes various autoimmune diseases',
J Immunol, 155:1151-64.
- Tsukuba Life Science Center
- 理化学研究所ライフサイエンス筑波研究センター(1984-2001)
科学技術会議ライフサイエンス部会等の方針によるプロジェクト型ライフサイエンス研究を実施する主体として、1984年に筑波地区に開設。横浜地区、神戸地区でセンター化する研究室の前身としての機能も果たした。筑波研究所への改組を経て、現在は理研バイオリソース研究センターとして研究を実施している。 - Institute for Physical and Chemical Research
- 理化学研究所の英語名称。1917年創立当時は物理学部と化学部の二部制をとっていたことに由来。現在の英語の正式名称はRIKEN。
Hori, S., T. Nomura, and S. Sakaguchi. 2003.
'Control of regulatory T cell development by the transcription factor Foxp3',
Science, 299: 1057-61.
- Research Center for Allergy and Immunology
- 免疫・アレルギー科学総合研究センター(RCAI)(2003-2013)。2013年4月にゲノム医科学研究センターとRCAIを統合して統合生命医科学研究センターを開設し、現在も天谷 雅行 センター長が率いる生命医科学研究センターとして活動を継続している。
- Laboratory of Immunopathology
- 免疫寛容研究チーム、坂口志文博士がチームリーダーを務めた研究チーム(2002-2003)。その後、筆頭著者である堀 昌平 博士(現 東京大学大学院薬学系研究科教授)が独立した免疫恒常性研究ユニット(後にチーム)として、研究を実施。