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2017年10月24日

理化学研究所
日本医療研究開発機構

免疫活性化を起因とする不安・恐怖亢進メカニズムの解明

-病気で不安になる仕組みの一端を発見-

要旨

理化学研究所(理研)統合生命医科学研究センター粘膜免疫研究チームのシドニア・ファガラサン チームリーダー、宮島倫生研究員、章白浩特別研究員らの共同研究グループは、マウスを用いて免疫活性化を起因とする不安・恐怖亢進メカニズムを明らかにしました。

免疫細胞の一種であるT細胞[1]は風邪や病気などで活性化されると、細胞内代謝を変化させることで、持続的に増殖したり、エフェクター機能[2]を発現したり、免疫記憶[3]をつかさどったりすることが知られています。しかし、持続的な免疫細胞の活性化が細胞外の全身性のメタボローム[4]に与える影響は明らかになっていませんでした。また、免疫系と神経系の生理システムの相互作用についてもまだ多くの謎が残されています。

今回、共同研究グループは、慢性免疫活性化モデルであるPD-1[5]欠損マウスを解析し、活性化したT細胞により全身性の血中メタボロームプロファイル[4]が変化することを明らかにしました。なかでも、アミノ酸のトリプトファン[6]チロシン[6]の血中濃度が減少していましたが、その原因はリンパ節で活性化・増殖したT細胞が細胞内にトリプトファンやチロシンを多量に取り込むためであることが分かりました。また、トリプトファンやチロシンはPD-1欠損マウスの脳でも減少しており、それらを前駆体とするセロトニン[7]ドーパミン[8]という神経伝達物質[9]も脳で減少していました。さらに、セロトニンやドーパミンの減少に伴い、PD-1欠損マウスでは不安様行動や恐怖反応が亢進していることが分かりました。これらのことから、免疫活性化に起因する前駆体アミノ酸の減少による神経伝達物質の欠乏が不安様行動や恐怖反応の亢進を引き起こすというメカニズムと、免疫系と神経系の生理システムの相互作用の一端が明らかになりました。

精神疾患の中には、免疫活性化に伴うメタボローム変化に起因して発症する場合があることが予想されます。今後、実際の精神疾患の患者において、免疫系の活性化、免疫系遺伝子の変異、メタボローム変化を調べることで、これまで不明だった発症原因の解明につながると期待できます。

本研究成果は、国際科学雑誌『Nature Immunology』に掲載されるのに先立ち、オンライン版(10月23日付け:日本時間10月24日)に掲載されます。

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)「疾患における代謝産物の解析および代謝制御に基づく革新的医療基盤技術の創出」研究開発領域(研究開発総括:清水孝雄)における研究開発課題「腸内細菌叢制御による代謝・免疫・脳異常惹起メカニズムの解明と治療応用」(研究開発代表者:シドニア・ファガラサン)の一環で行われました。なお、本研究開発領域は、平成27年4月の日本医療研究開発機構の発足に伴い、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)より移管されたものです。

※共同研究グループの慶應義塾大学末松誠客員教授は、AMED-CRESTの研究費を受給しておりません。

※共同研究グループ

理化学研究所 統合生命医科学研究センター
粘膜免疫研究チーム
チームリーダー シドニア・ファガラサン (Sidonia Fagarasan)
研究員 宮島 倫生(みやじま みちお)
特別研究員 章 白浩(しょう ひゃくこう)
研究員 マッテオ・グェッリーニ(Matteo M. Guerrin)
テクニカルスタッフ 筒井 裕美(つつい ゆみ)
リサーチアソシエイト 丸谷 美香子(まるや みかこ)
研究員 アレクシス・フォーゲルザンク(Alexis Vogelzang)
上級研究員 鈴木 敬一朗(すずき けいいちろう)
研究員 伊藤 聡美(いとう さとみ)
研究員(研究当時) 秦 鸿雁(ちん ほんやん)

京都大学
高等研究院
特別教授 本庶 佑(ほんじょ たすく)(京都大学大学院医学研究科免疫ゲノム医学講座 特任教授)

大学院医学研究科
免疫ゲノム医学講座
特定講師 茶本 健司(ちゃもと けんじ)

疾患ゲノム疫学
教授 松田 文彦(まつだ ふみひこ)
民間等共同研究員 園村 和弘(そのむら かずひろ)

大学院薬学研究科
プロテオミクス研究室
教授 石濱 泰(いしはま やすし)

慶應義塾大学 医学部 医化学教室
客員教授 末松 誠(すえまつ まこと)
講師 杉浦 悠毅(すぎうら ゆうき)
特任助教 本多 久楽々(ほんだ くらら)

大阪大学 蛋白質研究所 蛋白質高次機能学研究部門
分子発生学研究室
教授 古川 貴久(ふるかわ たかひさ)
助教(研究当時) 佐貫 理佳子(さぬき りかこ)

高次脳機能学研究室
教授 疋田 貴俊(ひきだ たかとし)

背景

風邪や病気などの際に私たちの体を守る免疫細胞には、T細胞、B細胞、樹状細胞などさまざまな細胞があります。なかでもT細胞は、活性化されると細胞内代謝を変化させることで持続的に増殖したり、エフェクター機能を発現したり、免疫記憶をつかさどったりすることが知られています。しかし、持続的な免疫細胞の活性化が細胞外の全身性のメタボロームに与える影響は分かっていませんでした。

また一方で、私たちの体は循環系、免疫系、神経系などさまざまな生理システムから構築されています。しかし、それらのシステム間の相互作用についてはまだ多くの謎が残されています。

そこで共同研究グループは、免疫系に起因する代謝産物の変化について、さらにそれが他の生理システムに及ぼす影響について検討しました。

研究手法と成果

共同研究グループはまず、慢性免疫活性化モデルであるPD-1欠損マウスの血清メタボロームプロファイルを調べました。その結果、PD-1欠損マウスでは野生型マウスに比べて、TCAサイクル[10]やアミノ酸代謝などエネルギー産生に関わる化合物が減少していました。なかでも、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニンなどの芳香族アミノ酸[11]が特に減少していることが分かりました(図1A)。

次に、PD-1欠損マウスの血清メタボロームプロファイルにおけるT細胞の寄与を調べるために、T細胞を欠くCD3[12]欠損マウスおよびT細胞とPD-1を欠くCD3/PD-1二重欠損マウスの血清アミノ酸を測定・比較しました。その結果、CD3欠損マウスとCD3/PD-1二重欠損マウスでは、血清アミノ酸の違いはほとんどみられませんでした。したがって、免疫が活性化しているPD-1欠損マウスでみられる血清アミノ酸の減少は、T細胞に依存していることが分かりました。

また、PD-1欠損マウスにおいて、T細胞は主に全身のリンパ節[13]で増加、活性化しており(図1B)、活性化T細胞の増加と血清アミノ酸の減少が相関していました。そこで、活性化T細胞の細胞内へのアミノ酸の取り込みを調べたところ、T細胞では活性化に伴いアミノ酸トランスポーター[14]の発現が上昇し、細胞内へのアミノ酸の取り込みが増加していることが分かりました。

さらに、PD-1欠損マウスの組織レベルでのアミノ酸量を野生型マウスと比較した結果、PD-1欠損マウスのリンパ節のアミノ酸が増加していることが分かりました(図1C)。このことからPD-1欠損マウスのリンパ節では、T細胞が活性化してアミノ酸を細胞内に取り込むことにより、血液中のアミノ酸が減少することが示されました。このような免疫活性化に伴うアミノ酸の減少は、アジュバント[15]によるT細胞活性化モデルマウスや、がん接種後のPD-1阻害抗体投与マウスといったPD-1欠損マウス以外のモデルマウスでもみられたことから、PD-1欠損マウスに特異的な現象ではなく、一般的な現象であると考えられます。

ところで、アミノ酸はタンパク質合成およびエネルギー生成に必要であると同時に、神経伝達物質の前駆体でもあります。チロシンおよびトリプトファンは、それぞれ神経伝達物質ドーパミンおよびセロトニンの前駆体であり、合成に必須です。そのため、PD-1欠損マウスの血中チロシンとトリプトファンの減少は脳内チロシンおよびトリプトファンの減少、さらにはドーパミンおよびセロトニンの減少へつながるのではないかと考えられました。実際に、PD-1欠損マウスの脳内アミノ酸濃度を測定したところ、チロシンとトリプトファンが減少し、さらにドーパミンとセロトニンも減少していることが分かりました(図2A、B)。

ドーパミンは、運動調節、ホルモン調節、学習などを制御し、セロトニンは気分、不安、攻撃性、恐怖などを制御することが知られています。そこで、PD-1欠損マウスの脳内神経伝達物質の変化が行動変化につながっているかどうかを調べました。不安様行動を測定する試験である高架式十字迷路試験[16]オープンフィールドテスト[17]の結果、PD-1欠損マウスは不安様行動が亢進していることが分かりました(図3A、B)。また、恐怖反応・恐怖を調べる試験である恐怖条件づけテスト[18]により、PD-1欠損マウスは恐怖反応が亢進していることも分かりました(図3C)。

最後に、薬理学的方法による神経伝達物質の増加や前駆体アミノ酸の経口補給により、PD-1欠損マウスの行動異常が回復するかどうかを調べました。フェネルジン[19]フルオキセチン[20]といった薬剤は脳内の神経伝達物質の量を変化させることにより、恐怖反応を調節することが知られています。フェネルジンやフルオキセチンの投与により、PD-1欠損マウスの恐怖反応が回復することが分かりました。

さらにトリプトファンを添加した餌により、PD-1欠損マウスの血清トリプトファンの濃度は回復し、脳内のセロトニン濃度も回復することが分かりました。これに伴い、高架式十字迷路試験やオープンフィールドテストにおける不安様行動も減弱しました。

以上の結果は、前駆体アミノ酸の減少による神経伝達物質の欠乏が、慢性免疫活性化モデルであるPD-1欠損マウスの特定の行動変化の一因であることを示しています。

今後の期待

本研究により、免疫活性化を起因とする不安や恐怖反応亢進メカニズムの一端が明らかになりました。精神疾患の中には、免疫活性化に伴うメタボローム変化に起因して発症する場合があることが予想されます。今後、実際の精神疾患の患者において、免疫系の活性化、免疫系遺伝子の変異、メタボローム変化を調べることで、これまで不明だった発症原因の解明につながると期待できます。また、免疫活性化を起因とする精神疾患の発症の予測・予防・治療法の開発へとつながると考えられます。

一方で、免疫系が常時活性化されている自己免疫疾患[21]などの患者の中にも精神疾患が認められる場合があります。そういった患者の発症メカニズムが今回発見されたメカニズムと類似していれば、新たな治療法や診断法が確立されることも期待できます。また、抗PD-1抗体は有効性が期待されるがん治療法として利用されていますが、なかにはこの治療法が有効でないケースもあります。今回の研究結果をもとに、抗PD-1抗体療法中の患者の血清メタボロームプロファイルが治療の有効性を判定するマーカーとして応用できる可能性もあります。

原論文情報

  • Michio Miyajima, Baihao Zhang, Yuki Sugiura, Kazuhiro Sonomura, Matteo M. Guerrini, Yumi Tsutsui, Mikako Maruya, Alexis Vogelzang, Kenji Chamoto, Kurara Honda, Takatoshi Hikida, Satomi Ito, Hongyan Qin, Rikako Sanuki, Keiichiro Suzuki, Takahisa Furukawa, Yasushi Ishihama, Fumihiko Matsuda, Makoto Suematsu, Tasuku Honjo and Sidonia Fagarasan, "Metabolic shift induced by systemic T cell activation in PD-1-deficient mice perturbs brain monoamines and emotional behavior", Nature Immunology, doi: 10.1038/ni.3867

発表者

理化学研究所
統合生命医科学研究センター 粘膜免疫研究チーム
チームリーダー シドニア・ファガラサン (Sidonia Fagarasan)
研究員 宮島 倫生(みやじま みちお)
特別研究員 章 白浩(しょう ひゃくこう)

シドニア・ファガラサン チームリーダーの写真 シドニア・ファガラサン チームリーダー
宮島倫生 研究員の写真 宮島倫生研究員
章白浩 特別研究員の写真 章白浩特別研究員

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理化学研究所 広報室 報道担当
Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
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基盤研究事業部 研究企画課
Tel: 03-6870-2224
kenkyuk-ask [at] amed.go.jp(※[at]は@に置き換えてください。)

補足説明

  • 1.T細胞
    免疫応答に関与するリンパ球の一種。前駆細胞が胸腺での選択を経て分化成熟することでできる細胞。胸腺から移出したT細胞は、抗原刺激をまだ受けていないという意味でナイーブT細胞と呼ばれる。表面タンパク質の発現の種類によりCD4陽性T細胞やCD8陽性T細胞などに分けられる。
  • 2.エフェクター機能
    T細胞受容体によって抗原を認識したナイーブT細胞が分化・活性化された状態をエフェクターT細胞と呼ぶ。エフェクター機能は、「マクロファージを活性化させる」「B細胞を活性化し抗体産生細胞へと分化させる」といったエフェクターT細胞の働きを指す。
  • 3.免疫記憶
    免疫系が初めて抗原に出会ったときよりも、二回目の抗原の侵入に対して強い免疫応答を起こす現象。T細胞では記憶T細胞が免疫記憶をつかさどる。
  • 4.メタボローム、メタボロームプロファイル
    メタボロームは、生体内の細胞や組織における低分子化学物質・代謝物質の総体を指す呼称。遺伝子(gene)の総称をゲノム(genome)と呼ぶのになぞらえた代謝系全体を意味する造語であり、代謝物質の網羅的解析はメタボローム解析と呼ばれる。メタボロームプロファイルとはメタボローム解析により測定された複数のサンプル間の網羅的代謝物パターンのこと。
  • 5.PD-1
    T細胞活性化により誘導される、免疫反応を負に制御する抑制性共受容体。 PD-1遺伝子の欠損や抗体によるPD-1の中和は、T細胞の活性化や感染、腫瘍に対する免疫増強につながる。
  • 6.トリプトファン、チロシン
    どちらもタンパク質を構成するアミノ酸の一種で、芳香族アミノ酸に分類される。トリプトファンはセロトニン、チロシンはドーパミンの前駆体。
  • 7.セロトニン
    モノアミン神経伝達物質の一種で、トリプトファンから脳内で合成される。気分、不安、攻撃性、恐怖といった多くの行動を制御する。
  • 8.ドーパミン
    モノアミン神経伝達物質の一種で、チロシンを前駆物質とする。運動調節、ホルモン調節、学習といった行動の制御に関わる。アドレナリン、ノルアドレナリンの前駆体でもある。
  • 9.神経伝達物質
    シナプス(神経細胞間などに形成される神経活動に関わる接合部位)で情報伝達を介在する物質。セロトニンやドーパミンは代表的な神経伝達物質。
  • 10.TCAサイクル
    クエン酸回路とも呼ばれる好気性代謝の生化学反応回路。この過程で生じる還元型のNADHやFADが電子伝達系でのATP合成に利用される。
  • 11.芳香族アミノ酸
    構造にベンゼン環などの芳香族基を持つアミノ酸で、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンがある。
  • 12.CD3
    T細胞受容体複合体を構成するタンパク質複合体。T細胞の抗原認識の際のT細胞受容体からシグナルに必須であり、CD3を欠損したマウスはT細胞を持たない。
  • 13.リンパ節
    免疫系に属する二次リンパ器官。リンパ管の所々に存在し、通過するリンパ中の異物に対して免疫反応を生じさせることで生体防御に役立つ。
  • 14.トランスポーター
    物質の膜通過に関与する膜タンパク質。アミノ酸トランスポーターは、アミノ酸輸送を担う膜タンパク質のこと。
  • 15.アジュバント
    抗原に対する免疫応答を増強したり、抗原を生体内に長時間留まらせたりする物質。
  • 16.高架式十字迷路試験
    マウスの不安様行動を測定するための試験の一つ。マウスが壁際を好み高所を避けるという性質を利用した試験で、壁を持つアーム(クローズドアーム)と壁のないアーム(オープンアーム)への進入回数から不安様行動を評価する。
  • 17.オープンフィールドテスト
    マウスの不安様行動や新奇環境における自発的活動を測定する試験。マウスが壁際を好む性質を利用し、中央区画に滞在する時間を測定することで不安様行動を評価する。
  • 18.恐怖条件づけテスト
    マウスに場所や音などの条件刺激と電気刺激などの無条件刺激を組み合わせて与えることで条件づけした後、条件刺激を再度与えたときのすくみ反応を示した時間を測定し恐怖記憶の指標とするテスト。
  • 19.フェネルジン
    モノアミン酸化酵素阻害薬の一種。モノアミンはアミノ基を1個だけ含む化合物の総称で、ドーパミンやセトロニンなどはモノアミン神経伝達物質と呼ばれる。フェネルジンはモノアミン酸化酵素の働きを阻害することにより、ドーパミンやセロトニンが分解されないようにする。抗うつ薬。
  • 20.フルオキセチン
    選択的セロトニン再取り込み阻害薬の一種。シナプスにおけるセロトニンの再吸収を阻害することにより、セロトニン濃度をある程度高く維持する。抗うつ薬。
  • 21.自己免疫疾患
    自分自身の細胞やタンパク質などを異物として認識してしまうことで自己抗体や自己反応性リンパ球が生じ、自己の細胞や組織が攻撃されて起こる疾患。代表的なものに関節リウマチがある。
PD-1欠損マウスのアミノ酸プロファイルおよびリンパ節活性化T細胞の増加の図

図1 PD-1欠損マウスのアミノ酸プロファイルおよびリンパ節活性化T細胞の増加

A : 質量分析法によるPD-1欠損マウスの血清アミノ酸測定結果。PD-1欠損マウスではトリプトファン(Trp:赤字)、チロシン(Tyr:赤字)を含む多くのアミノ酸の濃度が減少している。

B : PD-1欠損マウスのリンパ節のT細胞集団のフローサイトメトリー解析結果。PD-1欠損マウスのリンパ節では活性化T細胞(赤線の枠内)の割合が増加している。フローサイトメトリー解析は試料中の各種細胞の割合や特徴を解析する手法。

C : 質量分析法によるPD-1欠損マウスのリンパ節アミノ酸測定結果。PD-1欠損マウスではトリプトファン(Trp:赤字)、チロシン(Tyr:赤字)を含む多くのアミノ酸の濃度が増加している。

PD-1欠損マウスの脳におけるセロトニン、ドーパミンおよび前駆体アミノ酸の減少の図

図2 PD-1欠損マウスの脳におけるセロトニン、ドーパミンおよび前駆体アミノ酸の減少

A:質量分析法によるPD-1欠損マウス脳のセロトニン、ドーパミン、チロシン、トリプトファン濃度測定結果。PD-1欠損マウスの脳ではセロトニン、ドーパミン、チロシン、トリプトファンの濃度が減少している

B:イメージング質量分析法による脳内ドーパミン、セロトニンの分布画像。PD-1欠損マウスの脳ではセロトニン、ドーパミンの濃度が減少している。

PD-1欠損マウスにおける不安様行動および恐怖反応の亢進の図

図3 PD-1欠損マウスにおける不安様行動および恐怖反応の亢進

A : 高架式十字迷路試験結果。(左)高架式十字迷路試験装置。(中央)マウスの行動軌跡。(右)マウスのオープンアームおよびクローズドアームの滞在時間。PD-1欠損マウスでは野生型よりも、オープンアーム滞在時間が短く、クローズドアーム時間が長いことから、不安様行動が亢進しているといえる。

B : オープンフィールドテスト結果。(左)オープンフィールドテスト装置。(中央)マウスの行動軌跡。(右)マウスの移動距離と中央区画滞在時間。PD-1欠損マウスでは中央区画滞在時間が野生型よりも短いことから、不安様行動が亢進しているといえる。

C : 恐怖条件づけテスト結果。(左)恐怖条件づけテスト装置。(中央)条件づけ時と同じ場所にマウスを入れたときのすくみ時間(恐怖反応)。(右)条件づけ時と同じ音を聞かせたときのマウスのすくみ時間(恐怖反応)。PD-1欠損マウスではすくみ時間が野生型よりも長いことから、恐怖反応が亢進しているといえる。

免疫活性化を起因とする不安・恐怖亢進メカニズムの図

図4 免疫活性化を起因とする不安・恐怖亢進メカニズム

A:PD-1欠損マウスでは全身のリンパ節においてT細胞が活性化・増殖している。

B:活性化したT細胞ではアミノ酸トランスポーターの発現が上昇することで、トリプトファンやチロシンといったアミノ酸を細胞内に多量に取り込んでいる(トリプトファンのみ図示)。

C:上記の結果、PD-1欠損マウスでは血中のトリプトファンやチロシンが減少する(トリプトファンのみ図示)。

D:PD-1欠損マウスでは脳内のトリプトファンやチロシンが減少するとともにセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質も減少している(トリプトファン、セロトニンのみ図示)。

E:神経伝達物質が減少した結果、PD-1欠損マウスでは不安様行動が亢進し恐怖反応が増強する。

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