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2018年8月13日

東京大学
理化学研究所

原子核形状の2次相転移をスパコンシミュレーションで発見

錫の原子核は陽子数が魔法数50であるため、一番安定な状態では硬い球のようであると考えられてきました。それは超伝導状態と同じで、そのBCS理論と同様の理論的枠組みで記述されてきました。しかし、今世紀に入り状況は一変しました。RIビーム実験が世界各地で実現し、不安定原子核である軽い錫同位体の電磁的性質が調べられると、既存理論から見て異常なデータが多数、系統的に示されました。統一的に説明する理論を目指して多大の努力がなされたが成功せず、理論的な説明の不在が10年以上続き深刻な問題となりました。

ポスト「京」重点課題9に参加している東京大学を中心とするグループは、同グループが推進してきたモンテカルロ殻模型計算による大規模並列計算を、京やオークフォレスト・パックスのような最新で世界最大級のスパコンを用いて行い、この難問を解決しました。さらに、異常性の原因は魔法数の破れにあること、異常構造から球形構造への変化が2次量子相転移であることも示しました。2次量子相転移であることは質量、すなわち、全エネルギーの変化量のさらに変化量(2階微分)の不連続性から直接結論でき、これは原子核での2次量子相転移の最初の例と考えられます。電磁励起の異常性はこの2次相転移を境に(つまり重い原子核側で)消滅していることになります。

ミクロな系である原子核には見つかっていなかった2次量子相転移の実例が見つかった意義は大きく、今後この観点からの研究が進むと考えられます。

原子核が従来考えられてきたよりもさらにリッチな構造を持っていること、それは単純な見方では必ずしも理解できないことが、再認識されました。錫の原子核が持つ学際的、社会的な関わりも考えると、今後はより高度な理論研究が必要です。

詳細は東京大学のホームページをご覧ください。

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
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