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2019年6月12日

東京大学
科学技術振興機構
理化学研究所

ワイル粒子がつなぐ量子化された伝導を観測

東京大学大学院工学系研究科の打田正輝講師、川﨑雅司教授らの研究グループは、東京大学 物性研究所の徳永将史准教授らの研究グループ、理化学研究所創発物性科学研究センターの田口康二郎 グループディレクターらの研究グループと共同で、トポロジカル半金属と呼ばれる新しいトポロジカル物質の高品質薄膜において、トポロジカル半金属に特徴的な物質表面の伝導を観測し、その表面伝導が量子化する現象を発見しました。

トポロジカル物質と呼ばれる一連の物質群では、電子状態のねじれに由来して散逸のない伝導が許されるため、この散逸のない伝導を利用した低消費電力エレクトロニクスの実現が期待されています。トポロジカル物質の中でも、近年新しく発見された「トポロジカル半金属」では、伝導電子が「ワイル粒子」として振る舞うため、特異な電気伝導の発現が理論的に予測されてきました。しかしながら、従来は物質表面の伝導が観測できるほど品質の高い薄膜が作製できず、その開発が望まれていました。

打田正輝講師らは、典型的なトポロジカル半金属であるCd3As2について、独自の成膜技術を改良することで高い平坦性をもつ薄膜試料を作製し、物質表面における伝導が量子化した「量子ホール効果」の観測に成功しました。さらに、キャリア濃度等の様々なパラメータを制御した電気伝導測定を行うことで、ワイル粒子をもつ物質内部の状態がこの量子ホール状態の形成に関わっていることを明らかにしました。トポロジカル半金属の表面状態は一方の面だけでは量子化を起こさないため、ワイル粒子が物質内部を介して表(おもて)面と裏面を行き来する特異な伝導状態が実現していると考えられます。

今回の結果は、二次元の系でのみ実現されてきた量子化伝導が、ワイル粒子をもつトポロジカル半金属では三次元の系に拡張できる可能性を示しています。今後、従来は不可能であった三次元方向の非散逸伝導を利用することで、低消費電力エレクトロニクスの実現に役立つことが期待されます。

詳細は東京大学物性研究所のホームページをご覧ください。

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
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