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2022年3月25日

九州大学
理化学研究所

好熱菌を黒毛和種仔牛に投与!

-仔牛の生産性の向上と環境負荷の低減の実現-

黒毛和種仔牛は離乳時に、一時的に発育が停滞するという問題があり、これを防ぐための新たな飼養管理技術の構築が求められています。そこで、近年発見されたプロバイオティクス候補Caldibacillus hisashiiC. hisashii)(NITE国際寄託番号BP-863)に着目しました。C. hisashiiは、70℃以上で高温発酵した堆肥中から単離された好熱菌の一種であり、マウスや豚に給与すると、成長を促進することが既に明らかとなっています。一方、C. hisashii給与がウシの生産性に及ぼす効果は不明でした。

本研究で、九州大学大学院農学研究院の稲生雄大助教、髙橋秀之准教授らは、理化学研究所生命医科学研究センターの宮本浩邦客員主管研究員、大野博司チームリーダーとの産学共同研究(千葉大学・京葉ガスエナジーソリューション(株)・あすかアニマルヘルス(株)・千葉大発ベンチャー(株)サーマス)によって、好熱菌プロバイオティクス給与(C. hisashii給与)が黒毛和種仔牛の生産性を向上させ、その作用機序が環境負荷の少ない腸内制御に基づいている可能性があることを明らかにしました。

本研究では、離乳直後の黒毛和種仔牛へのC. hisashii給与が、発育成績や腸内環境に及ぼす影響を検討しました。その結果、C. hisashii給与により仔牛の飼料効率が向上し、これには腸内細菌叢の変化が関与することが示唆されました。特に、給与した仔牛では、Bacteroidetes門の糞中に占める割合が増加しました。Bacteroidetes門は牛の飼料中に多く含まれる繊維やデンプンなどの分解を得意とするグループであるため、Bacteroidetes門の増加は飼料効率の改善に関与している可能性がありました。さらに、興味深いことに、C. hisashiiを給与した仔牛では、メタン産生菌の一種であるMethanobrevibacter属の構成割合が減少しました。牛のメタン産生は、摂取したエネルギーのロスにつながることが知られています。またメタンは強力な温室効果ガスであることから、牛のメタン産生菌の減少は生産性の向上だけでなく、地球温暖化の防止にもつながる可能性があります。以上のことから、C. hisashiiを用いた飼養管理は、黒毛和種仔牛の生産性を向上させるとともに、国連の掲げるSDGs(持続可能な開発目標)に寄与することが期待されます。

詳細は九州大学のホームページをご覧ください。

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
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