福井県立大学生物資源学部の風間裕介教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科の河野重行特任研究員(同大学名誉教授)、理化学研究所仁科加速器科学研究センターイオン育種研究開発室の阿部知子室長らは、京都大学、オックスフォード大学と共同で、雌雄異株植物のヒロハノマンテマのY染色体にあるめしべの形成を抑制する性決定遺伝子(GSFY)を特定しました。
ヒトをはじめとする哺乳類はXY型の性決定を行います。Y染色体上のオスを決める遺伝子SRYがあればオスになるという仕組みです。植物では、おしべとめしべとが一つの花にある両性花が一般的です。しかし、例えばイチョウなどのようにオス株とメス株がある雌雄異株植物も存在します。これらは両性花からXYの性染色体をもつ雌雄異株植物に進化したと考えられています。この性別決定におけるXとY染色体の役割は、植物性決定研究の重要なテーマであり、性決定遺伝子の同定は世界中で長年試みられてきました。
今回、風間教授らは、ヒトY染色体の約10倍の大きさをもつ、雌雄異株植物ヒロハノマンテマのY染色体からめしべの発達を抑制する性決定遺伝子GSFYを同定しました。GSFYはわずか12アミノ酸からなる小さなペプチドとして働く遺伝子であり、このペプチドを植物に塗布するとめしべの発達が阻害されました。X染色体には、GSFYと反対で、めしべの発達を促進する機能をもつと考えられるSlWUS1遺伝子を発見しました。これは、植物の性染色体はY染色体とX染色体とが協力してオスを決定するように進化したことを示す、進化学上極めて重要な発見です。
詳細は東京大学大学院新領域創成科学研究科のホームページをご覧ください。
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理化学研究所 広報室 報道担当
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