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2022年10月28日

京都大学
理化学研究所

スペルミジンはT細胞の脂肪酸酸化を直接活性化し老化による抗腫瘍免疫の低下を回復させる

-スペルミジンによる脂肪酸酸化活性化機構の解明-

老化によりT細胞免疫が低下することは、高齢者にてCOVID19ワクチンが効きにくいこと、がんの発症率が上がること等により知られています。スペルミジン(spermidine: SPD)は生体内ポリアミンであり細胞の生存、増殖、ミトコンドリアの機能維持に必須です。そのため、細胞内には豊富に含まれていますが、加齢とともにその生体内濃度は低下します。

京都大学医学研究科附属がん免疫総合研究センター本庶佑センター長、Fagarasan Sidonia同教授(理化学研究所生命医科学研究センター粘膜免疫研究チームチームリーダー兼任)、茶本健司同特定准教授、Al-Habsi Muna同研究員(National Genetic Center, Ministry of Health, Muscat, Oman兼任)、東北大学加齢医学研究所小椋利彦研究室松本健助教、京都大学医学研究科岩田研究室野村紀通准教授らの共同研究グループは、SPDが若齢T細胞と比較し老化T細胞において減少し、エネルギー産生や脂肪酸酸化等のミトコンドリア機能の低下の原因になっていることを明らかにしました。老化マウスではミトコンドリア不全のため、PD-1阻害抗体治療が無効になっていますが、SPDを補充(併用)することで、がんに対する免疫が回復することを示しました。SPDは試験管内実験にて短時間でミトコンドリア機能を上昇させました。生化学的解析によりSPDはミトコンドリアに存在する脂肪酸酸化を担う酵素(MTP)に直接結合し、その酵素活性を上昇させることが明らかになりました。これらの結果は、老化個体にて免疫力が低下する一因を説明する発見であり、今後がん治療や自己免疫等の免疫関連疾患の機序解明・治療法開発の礎となる研究成果です。

詳細は京都大学のホームページをご覧ください。

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
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