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2023年5月17日

京都大学
理化学研究所

オルガノイド由来細胞を用いた腎近位尿細管モデルチップを開発

-ヒトiPS細胞を用いた高機能Microphysiological systems(MPS)-

京都大学大学院 工学研究科 横川 隆司 教授、Ramin Banan Sadeghian 特定准教授らの研究グループは、理化学研究所 生命機能科学研究センター 髙里 実 チームリーダー、京都大学iPS細胞研究所 荒岡 利和 特命助教らと共同で、ヒトiPS細胞から作製した腎オルガノイド由来の細胞を用いて、腎近位尿細管における糖の再吸収機構や薬剤の排泄機構を再現し、それらの阻害剤の評価をin vitroで検証可能な生体模倣システム(Microphysiological systems(MPS))を開発しました。

腎近位尿細管は、血液をろ過した原尿から生体に必要な成分を再吸収し、不要なものを遠位尿細管や集合管へ導くことで、生体恒常性の維持に重要な役割を担っています。しかし、近位尿細管上皮細胞による物質輸送機能の評価は動物実験や培養皿での実験に限られており、よりヒト近位尿細管の機能を模倣した定量的な評価系が必要とされてきました。本研究では、ヒトiPS細胞由来のオルガノイドが高機能な細胞を含むこと、およびマイクロ流体デバイス(チップ)を用いた培養により細胞機能が上昇することに着目して、オルガノイド由来細胞と不死化細胞RPTECをチップ内で共培養する技術を開発しました。これにより、膜タンパク質であるSGLT-2およびP-gpの細胞極性に従った輸送能を計測することに成功しました。その結果、2種類の細胞の共培養と灌流培養によるせん断応力刺激が、いずれもSGLT-2とP-gpの輸送能を上昇させることがわかりました。

近位尿細管上皮組織のMPSモデルは、再吸収や薬物排泄に関わる様々な薬剤評価を生体外で実施できるため、動物実験の低減に貢献します。今後は、様々な膜タンパク質の輸送評価や腎毒性評価に本MPSモデルを展開し、新規に開発された薬剤のスクリーニングツールとして社会に貢献していくことが期待されます。

詳細は京都大学 工学部・大学院工学研究科のホームページをご覧ください。

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
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