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2023年5月19日

大阪大学
理化学研究所

腸内微生物叢シークエンシングデータ中に存在するヒトゲノム由来配列からの個人情報の再構築

大阪大学大学院 医学系研究科の大学院生の友藤 嘉彦さん(遺伝統計学)、岡田 随象 教授(遺伝統計学/理化学研究所 生命医科学研究センター システム遺伝学チーム チームリーダー)らの研究グループは、腸内微生物叢シークエンシングデータ中に含まれるごくわずかなヒトゲノム由来配列情報に対して、新規開発手法を適用することで、性別および属する人種集団を高精度に推定できることを示しました。

また、腸内微生物叢シークエンシングデータ中のヒトゲノム由来配列を利用し、同一個人に由来する遺伝子多型データと腸内微生物叢シークエンシングデータの対応関係を高精度に推定できることを示しました。さらに、高深度に腸内微生物叢シークエンシングを行った場合、データ中に存在するヒトゲノム由来配列を用いることで、便検体から個人の遺伝子多型情報を再構築できることを示しました。

細菌やウイルスなど、数多くの微生物によって構成される腸内微生物叢は、宿主の健康状態に影響を与えることが知られています。近年の次世代シークエンシング技術の向上もあり、現在、多くの研究者達が便検体からの腸内微生物叢シークエンシング解析に取り組んでいます。腸内微生物叢シークエンシングを行うと、細菌やウイルスに由来する配列だけではなく、ごくわずかにヒトゲノム由来配列が得られることが知られていました。一般的に、遺伝子多型情報に代表されるヒトゲノム情報については、個人情報保護の観点から、慎重な取り扱いが必要とされます。しかし、腸内微生物叢シークエンシングデータ中のヒトゲノム由来配列については、その量があまりにも少なく、どれほどの個人情報が取得可能なのかが不明だったため、取り扱いについて明確な指針がないのが現状です。また、腸内微生物叢シークエンシングデータ中のヒトゲノム由来配列を有効活用できる可能性についても検討されていませんでした。

本研究成果によって、便検体及び腸内微生物叢シークエンシングデータ中に含まれるヒトゲノム由来配列を用いて、個人情報の再構築を行うことが出来ました。本研究成果は、データ共有時のプライバシーの保護や、ポリジェニック・リスク・スコアの構築などのデータの有効活用について議論する上で重要なリソースになることが期待され、健全かつ持続的な医学・生命科学研究の発展に資すると期待されます。

詳細は大阪大学医学系研究科・医学部のホームページをご覧ください。

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
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