2018年6月27日
磁場を用いたメタマテリアルの自己組織化形成技術 -オンデマンドにメタマテリアルを作る-
理研No. 07921
発明者
青木 画奈、田中 拓男(田中メタマテリアル研究室)
背景
自然界に存在する物質には無い光学特性を、人工的に導入した極微細構造を用いて実現したメタマテリアルという技術が活発に開発・研究されています。このメタマテリアルを実現するには、それを構成する光の波長よりも細かな構造を大量に作らなければなりません。これまでは半導体加工技術などを利用してメタマテリアルを作っていましたが、コストや時間がかかり、一度に大量に作る技術はありませんでした。また、これらの手法を利用して作製したメタマテリアルでは、一度作った構造は後から変更できないため、メタマテリアルの特性も構造を作った段階で固定されていました。
概要
メタマテリアルの共振器の一例は、金微粒子がネックレスのように円環状につながった構造です。本発明は、水中に分散させた金属微粒子に外部から磁石等を用いて静磁場を印加するだけで、このような共振器構造を自己組織的に大量に形成させる技術です。例えば、金ナノ微粒子とポリスチレン微粒子を水中に分散させておき、さらに微量の磁性流体を混合した材料を用意します。この水溶液に外部から磁場を印加するとポリスチレンと金の磁場特性の違いからポリスチレン微粒子の赤道面上に金微粒子が円環状に整列して、メタマテリアルの構造が自己組織的に形成されます。さらに、印加していた磁場を切ると、共振器構造はブラウン運動によって消滅するため、本手法は磁場のOn/Offによってメタマテリアルの構造を作ることや壊したりすることができます。

図1:磁場によって自己組織化形成されたメタマテリアルとその共振器構造

図2:メタマテリアルの共振器の顕微鏡写真。磁性流体の濃度や印加磁場の強度によって微粒子の数を制御できる。

図3:磁場の印加条件を変えると、面内ならびに縦方向の配列周期を制御できる。
利点
- 磁場を印加するだけで大量のメタマテリアルを作成
- 磁場のOn/Offでメタマテリアル構造を形成・破壊
- 共振器の形状(1つの共振器を構成する金属微粒子の数)は、磁性流体の濃度で制御可能
- 磁場印加中に溶媒の硬化等を行うことで、メタマテリアル構造を固定可能
応用
- 光変調器
- 外部磁場で制御できる光偏光器
- 透過もしくは反射スペクトルが可変な光学フィルター
文献情報
- 1.特許第5771818号
- 2.K. Aoki, K. Furusawa, and T. Tanaka, "Magnetic assembly of gold core-shell necklace resonators," Appl. Phys. Lett. 100, 181106 (2012).
- 3.R.M. Erb,H.S. Son, B. Samanta, V.M. Rotello, and B.B. Yellen, "Magnetic assembly of colloidal superstructures with multiple symmetry,” Nature 457, 999 (2009).
- 4.A. Ishikawa, T. Tanaka, and S. Kawata, “NegativeMagnetic Permeability in the Visible Light Region,” Phys. Rev. Lett., Vol. 95, 237401 (2005)
- 5.S. Tomita, T. Kato, S. Tsunashima, S. Iwata, M.Fujii, and S. Hayashi, "Magneto-optical Kerr effects of yttrium-iron garnetthin films incorporating gold nanaoparticles,” Phys. Rev. Lett. 96, 167402 (2006).
知的財産情報に関するお問い合わせ
理化学研究所
お問い合わせフォーム