2016年12月16日
DNAを材料にした世界最小のコイル状人工バネ
理研No. 08120
発明者
岩城 光宏(細胞動態計測研究グループ)
背景
生命科学や材料科学の研究において、ナノスケールの分子に力を加えて、その力学特性・力学応答を計測・評価しながら、分子形状変化を可視化する技術が求められています。しかしながら、分子を可視化するための蛍光顕微鏡、電子顕微鏡や原子間力顕微鏡と、力学操作を行うためのデバイスの併用は計測の複雑化やデータ取得効率の悪さなどから“観る”ことと“力を加える”ことは独立して行われることがほとんどでした。
概要
本発明では、DNAを材料としてナノスケールの分子に力を加えるためのコイル状人工バネ(ナノスプリング)の作成方法を提案し、実際にバネとして機能することを実証しました。このナノデバイスは、対象となる分子に連結するだけのため、観るための様々な顕微鏡と併用することが可能です。また、DNAの化学修飾も容易なため、生体分子から無機材料まで幅広く対象にすることができます。

図1:ナノスプリングの概要
フォトリソグラフィーや集束イオンビームなどを用いた微細加工技術の限界を超えて、タンパク質サイズのコイル状人工バネを作成した。

図2:ナノスプリングのバネ定数の測定
(A)光ピンセット法を用いた引っ張り実験(B)バネの伸びと力の関係

図3:ナノスプリングで力を加えながら分子の動きを観る一例
(A)モータータンパク質に蛍光の目印をつけて全反射蛍光顕微鏡で可視化した。
(B)ナノスプリングを光らせて伸び縮みの観察を行った。
利点
- 蛍光顕微鏡、電子顕微鏡、原子間力顕微鏡との併用が可能
- 対象となる分子に合わせてバネ定数をチューニング可能
- 金粒子との化学結合によってナノサイズの配線形成にも利用可能
応用
- ナノスケール分子の力学応答の可視化
- ナノスケールの弾性部品
- ナノサイズの配線形成
文献情報
- 1.特許第6041306号
- 2.Mitsuhiro Iwaki, Shelley Wickham, Keigo Ikezaki, Toshio Yanagida, William Shih “A programmable DNA origami nanospring that reveals force-induced adjacent binding of myosin VI heads” Nature Communications, 7, 13715 (2016)
関連情報
- 1.2016年12月12日プレスリリース「世界最小の人工バネでタンパク質の動きを捉える」
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