2016年4月4日
ペンタセン誘導体を用いたNMRの高感度化技術 -光励起三重項電子を用いた動的核偏極-
理研No. 08404
発明者
立石 健一郎、上坂 友洋(理研:上坂スピン・アイソスピン研究室)、根来 誠、北川 勝浩(大阪大学)
背景
核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)の感度を劇的に向上させる手法として、動的核偏極(Dynamic Nuclear Polarization:DNP)法が注目を集めています。この手法は、電子スピン偏極率を核スピンへ移すことにより、測定対象核のスピン偏極率を増大し、NMRの感度を飛躍的に向上させています。現在、一般的に行われているDNPでは、ラジカル分子中に含まれる電子スピン偏極を使用していますが、測定環境への制約が厳しく、大きな感度改善には液体ヘリウムで実現される低温が必要でした。
概要
本発明では、ラジカル分子の代わりにレーザー照射によって生ずる光励起三重項電子を用いたDNP(トリプレットDNP)を発展させる技術を開発しました。ラジカルとは異なり、この電子の特性は温度に依存しないため、液体ヘリウムは必要ありません。励起電子がDNPに適した特性を持っているペンタセン誘導体をトリプレットDNPに適用し、さまざまな試料の高偏極化を可能にしました。
利点
- 液体ヘリウムを必要としない動的核偏極
- 分解能低下の原因となるラジカルを不使用
- ほとんどのNMR溶媒に適用可能
応用
- NMR分光法の超高感度化
- MRIを用いたリアルタイムイメージング(代謝・pHなど)
文献情報
- 1.特願2015-129912
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