2019年11月11日
マーモセット用広域皮質脳波電極
理研No. 08882
発明者
小松 三佐子(高次脳機能分子解析チーム)
藤井 直敬(適応知性研究チーム)
背景
近年の脳科学研究の進歩により、生体の脳活動情報を脳波計で読み取って生体の意図を予測したり(デコーディング)、予測結果に応じてデバイスを制御したり(ブレイン・マシーン・インターフェイス:BMI)といった技術が開発されてきました。従来のBMIではターゲット領域を絞って電極を設置することが多かったのですが、この技術開発では広域性を重視して、霊長類の大脳皮質全域の神経活動を同時に観察・操作可能な電極を開発しました。特に、小型の霊長類であるマーモセットに特化したデザインとなっています。
概要
マーモセットの皮質全域の神経活動を左右半球同時に観測できる単電極型シート電極を開発しました。
- 1.後頭部・頭頂葉のシート電極(32電極)
- 2.前頭部・側頭部・頭頂部のシート電極(64電極)
の2葉、合計96電極で片半球を覆うデザインとなっており、左半球用の2葉と右半球用の2葉、合計4葉を1つのコネクタの両側に差し込んで使用します。各シート電極にグランド、レファレンスがついていますので、シート電極は任意の組み合わせで埋設できます。実験目的に合わせ、必要なシート電極のみを埋め込み手術ができるため、実験動物への負担を軽減できます。グランドとレファレンスは、変形自在なフレキアームの先端についており、任意の場所に設置可能です。また、蓋部材に電気基板を載せる構成としており、実験動物が動いた際にノイズが乗ってしまうという問題も解消され、ノイズ耐性が良好です。

図1:電極・コネクター配線図、コネクターケース装着イメージ

図2:大脳皮質における電極配置例

図3:中継用基板
利点
- 霊長類の大脳皮質全域の神経活動を低ノイズ・高時空分解能で観察可能
- 光遺伝学的手法との組み合わせにより神経活動の操作と計測が同時に可能
- 低侵襲・長期使用可能で動物倫理に配慮
応用
- 大脳皮質双方向操作・計測システム
- マーモセット脳への薬剤効果の慢性計測(製薬等)
- 霊長類大脳皮質全域のデータ(ビッグデータ)を提供
- ヒト用低侵襲BMI
文献情報
- 1.特願2018-210975
- 2.Komatsu, M., Kaneko, T., Okano, H. & Ichinohe, N. Chronic Implantation of Whole-cortical Electrocorticographic Array in the Common Marmoset. J Vis Exp, doi:10.3791/58980 (2019).
- 3.Komatsu, M., Sugano, E., Tomita, H. & Fujii, N. A Chronically Implantable Bidirectional Neural Interface for Non-human Primates. Front Neurosci 11, 514, doi:10.3389/fnins.2017.00514 (2017).
- 4.Komatsu, M., Takaura, K. & Fujii, N. Mismatch negativity in common marmosets: Whole-cortical recordings with multi-channel electrocorticograms. Scientific reports 5, 15006, doi:10.1038/srep15006 (2015).
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