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  2. 新型コロナウイルスに関する研究開発(2022年10月6日更新)
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COVID-19 特別プロジェクト

理化学研究所 創薬・医療技術基盤プログラム(DMP)では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2, 疾患名COVID-19)の世界的な大流行に対応するために、理化学研究所のライフ系の各センター(環境資源科学研究センター、生命機能科学研究センター、生命医科学研究センター、医科学イノベーションハブ推進プログラム)に設置されている創薬・医療技術基盤、及び外部の研究機関と連携して治療薬、免疫療法の研究を行っています。COVID-19は、世界的な健康と経済に対する危機であり、実験結果や計算結果について適宜公開し、グローバルの研究開発を支援し、共同研究、連携を積極的に推進していきます。現在、東京大学、国立感染症研究所、国立がん研究センターなどとの共同研究を行っています。

DMPで推進している新型コロナウイルス治療薬開発の戦略は「短期」と「中長期」の2本立てです。「短期」の戦略は2020年から3年以内に行う既存医薬品の適応拡大です。いち早く臨床に役立てるべく、ほかの疾患の治療薬として現在販売されている薬や臨床試験薬が、COVID-19に効果があるかどうかを調べます。一方「中長期」の戦略においては、3~5年先を見据え、有効性・安全性に優れた新しい治療薬、免疫療法の開発を進めています。現在、本プロジェクトにおいては、短期的な治療薬開発の探索段階はほぼ完了の目処がたち、中長期的な開発戦略に徐々に軸足を移しています。

DMPのCOVID-19特別プロジェクトでは、ウイルス侵入・増殖過程で働く「メインプロテアーゼ」「パパイン様(よう)プロテアーゼ」「RNA依存性RNAポリメラーゼ」「TMPRSS2」に加えて、ウイルス表面にある「スパイクタンパク質」「エンベロープタンパク質」を治療薬、免疫療法の主な標的タンパク質として想定し、研究開発を行っています。

Main protease / Papain like proteaseをターゲットとした治療薬開発

細胞内に侵入したウイルスは自らのRNAの遺伝情報に従って、長いタンパク質(ポリタンパク質)をつくります。そのポリタンパク質をウイルス由来の「メインプロテアーゼ(Main protease)」と「パパイン様プロテアーゼ(Papain like protease)」が十数種類の断片に切断し、それらがウイルスの増殖に必要なタンパク質や新しいウイルスを形づくるタンパク質等となります。この仕組みを利用し、プロテアーゼの働きを阻害し細胞内でのウイルスの増殖を抑制する薬の開発を目指します。

RNA dependent RNA polymerase(RdRp)を標的とした治療薬開発

RNA依存性RNAポリメラーゼ(RNA dependent RNA polymerase; RdRp)はウイルスのRNAを複製する酵素です。抗インフルエンザ治療薬アビガンやエボラ出血熱での臨床実績のあるレムデシビルはこの酵素の働きを阻害しウイルスの増殖を抑制する核酸構造の化合物です。核酸構造を持たない副作用が少ない化合物を探索し治療薬候補品の創出を目指します。

TMPRSS2を標的とした治療薬開発

ウイルス表面には「スパイクタンパク質」と呼ばれる突起があり、その突起でヒト細胞表面の受容体「ACE2」に結合して前駆体をつくります。その前駆体の結合部位にヒトが持つ分解酵素「TMPRSS2」が働くことで形を変えて、ウイルスの侵入が始まります。「TMPRSS2」の働きを阻害する薬を開発することでウイルスの細胞内への侵入を効率的に阻止できる可能性があります。「TMPRSS2」は、ヒトの酵素であることから、阻害剤はウイルスの変異による影響を受けにくい治療薬になるのではないかと期待されています。

人工アジュバントベクター細胞(aAVC)による免疫療法

aAVCは、自然免疫を活性化する糖脂質と、獲得免疫を活性化する抗原を搭載した細胞です。これまでは、がん免疫療法用のaAVCの開発が進められてきましたが、ウイルス表面にあるスパイクタンパク質やエンベロープタンパク質などを抗原として搭載したaAVCを患者に投与することで、新型コロナウイルスを自然免疫と獲得免疫の両方に攻撃させることが可能だと考えられます。

抗体医薬品開発

標的としてスパイクタンパク質やTMPRSS2を想定しています。抗体医薬の開発では理研の分子シミュレーションやAIの技術を駆使して抗体の最適化設計を目指します。

COVID-19に関連する生体分子の構造解析に基づく創薬研究

COVID-19の創薬ターゲットとしてSARS-CoV-2の感染に関わる様々なタンパク質の高次構造を明らかにします。標的とするタンパク質の中には非構造タンパク質(NSPs)のような高次構造を持つものや、自由度が大きなものがあり、性質に応じてクライオ電子顕微鏡とNMR(核磁気共鳴装置)を使い分けて、設計に有用な構造情報を取得します。

COVID-19に関連する生体分子のシミュレーションとAIに基づく創薬研究

COVID-19の創薬ターゲット候補のタンパク質の多くはタンパク質表面が柔らかく、分散力相互作用が重要な役割を果たしていることもあり、予備検討の結果、既存のドッキング手法では充分な活性予測能力がないことが分かってきました。そこで、既に開始している結合シミュレーションと量子化学計算の一種であるFMO法とAIを組み合わせた高精度な活性予測を適用し、候補化合物の選択を進めます。

2021年6月22日更新

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