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研究最前線 2021年7月19日

ビタミンDで高効果の新型コロナウイルスワクチン開発

効果を高めるアジュバント(免疫賦活剤)としてビタミンDを使い、湿布のように皮膚に貼るだけで取扱いがとても簡単な新型コロナウイルスワクチンの研究開発が進んでいます。福山英啓副チームリーダー(TL)らが開発するこの「貼るワクチン」が実用化すれば、注射の打ち手となる医療従事者の確保が難しい地域でも接種が進められ、副反応も抑えられると期待されています。

藤澤 茂義の写真

福山 英啓(ふくやま ひでひろ)

生命医科学研究センター
分化制御研究チーム
副チームリーダー
1969年大阪府生まれ。大阪大学大学院医学系研究科にて博士(医科学)取得。大阪大学医学部助手、米国ロックフェラー大学研究員、仏ストラスブール大学分子生物学研究所研究員などを経て、2013年より理研統合生命医科学研究センター上級研究員、2019年より現職。仏国立保健医学研究所上級研究員、横浜市立大学客員准教授を兼務。

鍵を握るビタミンD

福山副TLの開発するワクチンがユニークなのは、ワクチンと一緒に投与して、その効果を高めるために使用されるアジュバントにビタミンDを使っている点だ。これまでアジュバントにビタミンDが使われたことはない。

もともとインフルエンザワクチンを研究していた福山副TLは、さまざまなアジュバントの効果を調べている最中に、それまで知られていなかった、ビタミンDによって活性化する免疫系の経路を発見した。

ワクチン接種や感染後に、再感染や重症化が起こりにくいのは、免疫系の細胞が病原体の特徴を覚え、同じ病原体が体内に入ってきた際に素早くその病原体を攻撃する抗体をつくるからだ。病原体の特徴の記憶に重要な役割を果たすのは「メモリーB細胞」。ビタミンDによって活性化された免疫反応によって、メモリーB細胞がより多くつくられることが分かった。

体内でビタミンDが働く際にはまず、ビタミンD受容体という細胞内にあるタンパク質に結合する必要がある。いろいろな種類の細胞を調べたところ、皮膚の表皮にあるケラチノサイトという角化細胞に最も多くのビタミンD受容体があると分かった。

「皮膚に塗るビタミンD軟膏は、皮膚の病気の治療薬としてすでに薬事承認を受け、国内で使われています。ですからビタミンDを使った皮膚から吸収させるワクチンなら、比較的副反応が少なくできるのではないかと考えました」と福山副TLは話す。

貼る新型コロナウイルスワクチンのイメージの図

図1 貼る新型コロナウイルスワクチンのイメージ

パッチ状に、数十~数百マイクロメートル(μm、1μmは1000分の1mm)という微細な針がたくさん並ぶ。針には、人工的につくった、新型コロナウイルスの表面にある突起状のスパイクタンパク質とビタミンDを入れる。肩などに貼り、時間が経つと、針が溶けてワクチン成分が体内に染みこんでいくような仕組みを目指す。

マイクロニードル付きパッチを活用

福山副TLが開発を進めているワクチンのもう一つユニークな点は、「貼る」という新しい形態だ。美容液を含んだ微細な針がたくさん並ぶパッチを、目元などに貼る新しい形態の顔パック、「マイクロニードルパッチ」の美容液をワクチン溶液に置き換え、皮膚に貼るだけで注射のような効果を得ることができないか、と検討を進めている(図1)。

新型コロナウイルスは、表面に突起状のスパイクタンパク質がある。ヒトに感染する際には、それがまず細胞に結合する。本ワクチンの主成分は、このスパイクタンパク質を人工的につくったものだ。スパイクタンパク質を構成するアミノ酸の一部を変更することで、変異株に対する効果や、安定性を高めることができる。

今後、製薬企業やマイクロニードル製造企業と共同で実用化を目指す。2021年秋には、まずマウスで効果を確かめる実験を始める予定だ。

YouTube「理研チャンネル」 新型コロナウイルスとの戦いVol.4~ビタミンDを利用した簡易ワクチン開発~

新型コロナウイルスの発症予防の手段としてワクチン接種がある。理研で取り組んでいる、より安全で、注射器を使用しなくても接種可能な新型コロナウイルスのワクチン開発について説明。2021年制作(4分33秒)

(取材・構成:大岩ゆり/撮影:相澤正。/制作協力:サイテック・コミュニケーションズ)

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