1. Home
  2. 広報活動
  3. クローズアップ科学道
  4. クローズアップ科学道 2021

私の科学道 2021年8月24日

「鋼鉄魂」で歩む科学道

理研で、音楽情報知能チームを率いる浜中雅俊チームリーダー(TL)は、ヘヴィメタルのマニアで、自らもエレキベースを演奏します。いろいろな出会いに恵まれながら、大好きな音楽を研究対象にまで昇華させた浜中TLに、音楽との関わりと研究に対する思いを聞きました。

浜中雅俊の写真

浜中雅俊(はまなか まさとし)

革新知能統合研究センター
目的指向基盤技術研究グループ
音楽情報知能チーム
チームリーダー
1974年東京都生まれ。2003年、筑波大学大学院工学研究科博士課程修了、博士(工学)。大学在学中から工業技術院電子技術総合研究所にて研究を始め、2003年より産業技術総合研究所情報処理研究部門客員研究員(日本学術振興会特別研究員-PD、科学技術振興機構さきがけ研究員)、2007年より筑波大学大学院システム情報工学研究科講師、2014年より京都大学大学院医学研究科研究員、2017年より現職。

中学2年でヘヴィメタルに目覚め、バンド三昧の青春時代

研究領域は「音楽情報処理」。生成音楽理論(Generative Theory of Tonal Music:GTTM)という音楽の構造を分析する理論をベースに、AI(人工知能)を駆使して楽曲の構造を解析する分野である。「GTTMは音楽の階層構造を記述するモデルです。楽曲の中で幹となる音符を探し出し、そこから枝葉となる音符までの構造を分析して、作曲や編曲を支援する技術につなげていきます」。浜中TLは笑顔でそう語る。

音楽との出合いは、中学2年生の頃。友人の影響で洋楽に目覚め、近所の図書館で借りたCDを聴いてヘヴィメタルに夢中になった。高校2年生になって自らも仲間とバンドを組み、ベースギターを担当。ヘヴィメタルやハードロックのコピー演奏に熱中した。「あの頃は英語も数学も赤点レベルで、自分が将来、研究者になるなんてまったく想像していませんでしたね」。

高校卒業後は日本大学理工学部に進学、ヘヴィメタル系のバンドサークルに所属し再び音楽漬けの日々を送った。そんな浜中TLだったが、学部3年生のときに転機が訪れた。後に恩師となる教授に勧められて「感性情報処理」の研究室に入り、音楽と情報処理を融合させるテーマと出合ったのだ。「当時取り組んでいたのは、即興演奏ができるギタリストシミュレーターの開発でした」。

初心者からプロまで音楽を楽しめるアプリの研究へ

この出合いがきっかけとなり、筑波大学大学院に進学。連携大学院制度を使い工業技術院電子技術総合研究所(現・産業技術総合研究所)の研究室に所属した。「あと5年間バンドができるから(笑)」との思いで修士・博士課程一貫の5年間のコースを専攻したものの、国際学会などで研究論文を定期的に発表するなど、研究に熱が入り、博士号を取得した後も産業技術総合研究所で音楽情報処理に関する研究を続けた。

こうして研究者の道を着実に歩み始めた浜中TL。GTTMをベースにした作曲支援技術にディープラーニングを組み合わせるなど、先進的な研究を進めていく。2017年からは理研で研究を始め、AIを使った音楽の新しいつくり方、聴き方の可能性を追究するなど、研究領域は一層の広がりを見せている。

メロディスロットマシンの図

図1 メロディスロットマシン

スロットマシンのように並んだダイヤルを縦に回転させることで、メロディーのバリエーションを変化させ、音楽をコントロールする体験ができるスマートフォン「iPhone」用のアプリケーション。ダイヤル操作で複数のバリエーションメロディーから一つを選択していき、新しい組み合わせのメロディーを生成する。

「"音楽が好き"というルーツの上に今の研究があります。ヘヴィメタルの精神、不屈の"鋼鉄魂"を研究に活かして、多くの人に役立つ成果を出したいです。先日公開した、iPhone用アプリ(図1)もその一つ。現在は、初心者でも自由に作曲ができるアプリなどを開発中です。また、ホログラムの技術を用いて、アーティストの実写映像と楽曲をコラボさせた動画作成ツールの開発など、新たなテーマにも挑戦していきたいと思っています」。

レアダール名誉教授とニューヨークでの記念写真

尊敬するGTTM理論の提唱者、レアダール名誉教授(コロンビア大学・右から二人目)とニューヨークでの記念写真。

(取材・構成:丸茂健一/制作協力:サイテック・コミュニケーションズ)

関連リンク

この記事の評価を5段階でご回答ください

回答ありがとうございました。

Top