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研究最前線 2021年8月30日

ミドリムシに期待大!持続可能な社会の立役者に

小学校の理科で習う、水中の微生物「ミドリムシ」。今、食品や燃料への応用が注目されています。理研でも、研究成果の実用化・社会への活用を推進する「バトンゾーン研究推進プログラム」の下、ミドリムシを利用したバイオ燃料や健康食品などを開発・販売する株式会社ユーグレナの鈴木健吾氏をチームリーダー(TL)として迎え入れ、植物ゲノムを研究するバイオ生産情報研究チームの持田恵一TLが副TLを担って研究を進めています。

鈴木 健吾チームリーダー、持田 恵一副チームリーダーの写真

科技ハブ産連本部
バトンゾーン研究推進プログラム
微細藻類生産制御技術研究チーム

鈴木 健吾(すずき けんご)(写真左)

チームリーダー
1979年、神奈川県生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程在学中、2005年に株式会社ユーグレナを設立し、取締役に就任。博士(農学・医学)。2018年より現職。ユーグレナ株式会社 執行役員 研究開発担当。

持田 恵一(もちだ けいいち)(写真右)

副チームリーダー
1975年、福井県生まれ。 横浜市立大学大学院総合理学研究科博士課程修了、博士(理学)。2015年から理研で研究室を主宰、2018年より現職。本務は環境資源科学研究センター バイオ生産情報研究チーム チームリーダー。

食料にも燃料にもなるミドリムシ

鈴木TLは大学3年のときに、ミドリムシの生き物としての面白さと、社会に役立つ可能性に強くひかれた。

「ミドリムシは、光合成をする植物的な性質と、べん毛で動く動物的な性質を併せ持つ単細胞生物で、科学的にも非常に興味深い生き物です。ビタミンやミネラルなどの栄養も豊富で、大量培養すれば世界の食料問題の解決に寄与できるうえ、光合成で二酸化炭素を吸収するため、気候変動問題の解決策としても、さらには、体内で油脂をつくるので、バイオ燃料の原料としても期待されており、まさにサステナブルな社会の立役者なのです」

鈴木TLは、ミドリムシの学名であるユーグレナを社名に冠した、株式会社ユーグレナ設立に参画。同社は、2021年6月に、使用済み食用油とミドリムシ由来の油脂を原料にしたバイオジェット燃料を導入した実用機での初フライトに成功した。

ゲノム編集で「スーパーミドリムシ」をつくる

バイオ燃料の実用化には、生産の効率化が必須。鍵となったのは遺伝子改変により体内でより多くの油脂をつくる「スーパーミドリムシ」の誕生だった。そこで活躍したのが、持田副TLが持つ遺伝情報解析などの技術だ。

狙った遺伝子を高精度で操作できるゲノム編集だが、ミドリムシでは安定した遺伝子の改変が不可能とされてきた。持田副TLと野村俊尚研究員(環境資源科学研究センター バイオ生産情報研究チーム)はこの通説を覆し、ミドリムシの高効率なゲノム編集を実現(図1)。

「さまざまな遺伝子を改変して機能の変化を調べ、油脂の産生のほかにも有用な遺伝子がないかを探しています」と持田副TLは話す。

この技術によって、さらなる産業利用の可能性が広がった。例えば、ミドリムシは酸素がある環境下ではプラスチックや機能性食品に用いられる多糖をつくり、酸素がない環境下では多糖を変換してバイオ燃料の原料となる油脂をつくる。この物質生産のスイッチに関わる遺伝子を操作できれば、多糖と油脂の生産量のコントロールが可能になる。

ミドリムシ(微細藻類ユーグレナ)の図

図1 ミドリムシ(微細藻類ユーグレナ)

左は野生のミドリムシ。右はゲノム編集により油脂の元である多糖(パラミロン)をつくらないようにしたミドリムシ。左図の体内にある粒が多糖類の一種であるパラミロン。

市民と一緒に新たなミドリムシを探す「みんなのミドリムシプロジェクト」

自然界にも、未知のミドリムシの種が存在するかもしれない。そこで、日本全国の中高生たちに湖沼の水を採取して送ってもらう「みんなのミドリムシプロジェクト」を立ち上げた(図2)。市民をも巻き込んで、社会実装を目指すミドリムシ研究はいっそう加速している。

図2 「みんなのミドリムシプロジェクト」って?

国内の湖沼の水のサンプルを集め、ミドリムシの分布調査をするとともに、新たな特性をもつミドリムシを探している。2019年と2020年で502のサンプルが集まり、実際に4株の新しいミドリムシが見つかった。2021年の参加者は8月31日締め切り。応募はウェブサイト「みんなのミドリムシプロジェクト」ページから。

(取材・構成:秦千里/制作協力:サイテック・コミュニケーションズ)

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