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特集 2023年3月27日

基礎科学特別研究員インタビュー④ 自分の研究に没頭できる、人生の中で貴重な時間

理研には、国際的に活躍する研究者の育成を目指し、若手研究者が自ら設定した研究課題を自由な発想で主体的に研究できる「基礎科学特別研究員制度」があります。1989年に始まったこの制度は、現在公募中の2024年度採用で35回目となります。これを機に、各分野で活躍する先輩たちと現役にインタビューしました。第4回は、高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所の齊藤 直人 所長です。

齊藤 直人の写真

齊藤 直人(サイトウ・ナオヒト)

大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK) 素粒子原子核研究所 所長
1995年4月~1996年3月 基礎科学特別研究員

──なぜ基礎科学特別研究員(基礎特研)に応募されたのですか。

指導教官から勧められたのがきっかけです。当時、大学院の博士課程にいた私は、陽子のスピンに関する研究をしていました。ちょうど理研でスピンのそろった陽子を衝突させる大型の実験施設をつくるプロジェクトが立ち上がると聞き、自分も加わりたいと思い、応募しました。

まだ予算も通っていないプロジェクトで頑張りたいと応募書類に書いていたので、面接では審査員から「予算が通らなかったらどうするの?」と切り込まれましたが、何とか自分なりの答えで説明することができ、無事に採用されました。

──基礎特研の"卒業"はずいぶん早かったと伺っています。

自分のやりたい研究ができ、かつ給与も良いということで、基礎特研は当時から若手研究者にとって非常に魅力的な制度でした。私が提案した実験計画を一緒に実現してくれた所属研究室のサポートだけでなく、臨機応変な事務部門の手厚いサポートもありました。そして、1年後に研究員として採用されました。基礎特研は、その期間中に頑張ったことがしっかりと評価され、次のステップに確実につながる良い制度だと思います。

今振り返ると、あのときの1年は人生の中でとてつもなく貴重な時間だったと思います。それは、自分で考えた研究、つまりやりたいことだけに没頭できたからです。また、研究費もいただいたので、その分の責任をしっかり果たすべきだということも学びました。

──理研時代の経験は、どのように生かされていますか。

7年間在籍しましたが、その半分を米国ブルックヘブン国立研究所内にある理研の研究センターで過ごしました。現地の施設を使って得られた実験結果を、現地の研究者たちと一緒に解析してたくさんの論文を発表しました。

私は現在、陽子ではなく「ミューオン」という粒子に関する研究をKEKで行っています。米国時代に一緒に研究してビールを飲んだ仲間と、今でも一緒に研究することがあります。理研の研究員として、いろいろな経験を積んだことは私の財産になっていて、いくら感謝してもしきれないですね。

──基礎特研を目指している若手研究者にメッセージをお願いします。

若い人たちには、先人たちの偉業やほかの人たちの発想をリスペクトしながら、互いの自由な発想をぶつけ合って、新しい価値を生み出してほしいと願っています。自由が新たな展開を生むのです。基礎特研では、同期はもちろん、違う世代の人たちとも積極的に交流して、人脈を広げていってほしいですね。

(取材・構成:福田 伊佐央/撮影:相澤 正。/制作協力:サイテック・コミュニケーションズ)

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