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特集 2023年3月30日

基礎科学特別研究員インタビュー⑤ 生体内現象をDNAに記録する技術を開発したい

理研には、国際的に活躍する研究者の育成を目指し、若手研究者が自ら設定した研究課題を自由な発想で主体的に研究できる「基礎科学特別研究員制度」があります。1989年に始まったこの制度は、現在公募中の2024年度採用で35回目となります。これを機に、各分野で活躍する先輩たちと現役研究員にインタビューしました。最終回となる第5回は、脳神経科学研究センターのYu Jay 基礎科学特別研究員です。

Yu Jayの写真

Yu Jay(ユー・ジェイ)

脳神経科学研究センター 細胞機能探索技術研究チーム
2022年8月~ 基礎科学特別研究員

──どのような研究をされているのですか。

動物の体内で起こるイベント(細胞分裂、ウイルス侵入、遺伝子発現のタイミングと強さなど)を、長期間、観察できる方法を研究しています。現在の生物観察は光学顕微鏡法が中心です。しかし、光は組織を透過しにくいので、ヒトを含む動物の体内の長期的な観察には向きません。私は、体内で起きたイベントを細胞のDNAに記録できる技術を、ゲノム編集を駆使して開発したいのです。この手法なら、生検や遺体から得た組織のDNAを解析すれば、体内で起こったイベントの歴史を調べることが可能になります。実現すれば、老化、病気、免疫など長期間のイベント履歴が重要な意味を持つ研究を躍進させると期待しています。

──どのようにして独創的な研究テーマにたどり着いたのでしょうか。

米国のマサチューセッツ工科大学で博士課程修了後、台湾で1年間、兵役に就きました。その間、ひたすら論文を読み、研究テーマのアイデアを練りました。私は、ノーベル化学賞と平和賞を受賞した米国の化学者、ライナス・ポーリングの言葉 "If you want to have good ideas, you must have many ideas." を大切にしています。たくさんの論文を読んで着想した多くのアイデアから、現在の研究テーマにたどり着きました。

──なぜ基礎科学特別研究員として研究したいと思ったのですか。

子どもの頃からJ-POPや日本のアニメが大好きで、いつか日本で暮らしたいと思っていました。日本国内の研究室を300以上調べて、取り組みたい研究に最も近いラボを探しました。その中から選んだのが、宮脇 敦史 チームリーダーが率いる現在の研究室です。自分で創出したテーマを自由に研究できる制度にもひかれました。

──理研で研究を始めた今、どのように感じていますか。

最新の機器が使えるだけでなく、先輩研究者たちはとても親切ですし、分析のプロフェッショナルが集まる研究基盤開発部門もあり、順調にスタートを切ることができました。新たなテーマに挑んでいるので、DNAシークエンシングなど、経験のない技法についてはゼロから学んでいるところです。

事務部門のサポートも手厚いです。必要な器材を自分の研究費で購入しなくても理研内の共同利用機器を使えるなどの助言をいただいたことがあり、とてもありがたかったです。研究以外でも、コロナ禍での入国に必要な書類の準備や、銀行口座の開設など、生活面でもサポートしていただきました。

──今後の抱負を聞かせてください。

創造の楽しさを満喫しながら、生物学や医学を躍進させる技術を開発したいです。ユニークで科学的価値の高い技術を生み出せるように、懸命にアイデアを練り、研究を積み重ね、日々精進していきます。

──基礎科学特別研究員を目指している若手研究者にメッセージをお願いします。

温かな人間関係を築き、最新の実験機器や設備を使って研究が進められるのは魅力的です。私のように、研究したいテーマが明確にある若手には、最高の研究環境だと思います。

(取材・構成:大石 かおり/撮影:相澤 正。/制作協力:サイテック・コミュニケーションズ)

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