1. Home
  2. 広報活動
  3. クローズアップRIKEN
  4. クローズアップRIKEN 2025

RIKEN People 2025年5月26日

タンパク質の立体構造を解析し、研究を成功に導く

2024年のノーベル化学賞で注目されたAI「AlphaFold」は、生命科学の発展に重要なタンパク質の立体構造を知る上で大きな進歩をもたらしました。2002~2006年度の5年間で約3,000種のタンパク質の立体構造を中心に解析した国家プロジェクト「タンパク3000」の成果もまた、このAIの学習を支えています。プロジェクトの立役者の一人であり、数々の重要なタンパク質に関わる研究論文に共著者として名を連ねる白水 美香子 チームディレクター。その素顔に迫ります。

白水 美香子の写真

白水 美香子(シロウズ・ミカコ)

生命医科学研究センター タンパク質機能・構造研究チーム チームディレクター

立体構造解析研究をマネジメント

「科学者への道を進むきっかけになったのは、高校で生物クラブに入ったことです」。植物細胞の培養を黙々とやるうちに、自分は実験に向いていると感じたという。

東京大学で生物化学を専攻してから研究を続け、博士号を取得して7年目のときに、文部科学省が主導する「タンパク3000」という大型研究プロジェクトが始まった。その中心になったのが大学時代の指導教官だった横山 茂之 主任研究員(現 理研名誉研究員)だ。

「卒業研究で横山研究室を選択したことが研究人生を決めた」と今でも思う。理研の主任研究員となった師と共に理研へ移り、チームリーダーに抜擢され、「タンパク3000」をはじめ、数十もの研究室から解析を依頼される中、多いときでは80人ものスタッフの役割分担をしたり、データをチェックしたりと忙しい日々が続いた。最適なデータになるように研究者とディスカッションするのも大事な仕事だ。そのころからずっと、実験そのものよりマネジメントに携わってきたため、「自分は″科学者″というより研究支援者的」と自己分析する。これも師の「先見の明」かもしれない。

機能を決める立体構造

タンパク質は、アミノ酸が鎖状につながった大きな分子である。その鎖が折り畳まれて立体的な構造になることで機能が生じるため、生命のメカニズムを解き明かすには、立体構造の情報が欠かせない。また、立体構造が分かるとタンパク質に結合し機能を制御する分子も設計ができる。それゆえ薬の開発などにも利用されている。

立体構造の解析法には、結晶化させたタンパク質にX線を当てて調べるX線結晶構造解析や強い磁場中で原子核の共鳴現象を観測する核磁気共鳴(NMR)法、クライオ電子顕微鏡による観察などがある。2017年のノーベル化学賞の受賞対象となったクライオ電子顕微鏡法は、瞬間的に凍結させたタンパク質の画像を観察するもので、立体構造解析を大きく進展させた。最先端の技術は導入して終わりではなく、ニーズがあればすぐに使いこなせるよう、体制を整えておくことにも余念がない。気がつけば、いろいろな分野のさまざまな研究者との共同研究で数多くの成果を上げることに。どんなこともほどほどに面白がれるからこそ、今までやってこれたと笑う。

新しい方法を取り入れ次の時代へ

「タンパク3000」の成果をはじめ、これまでの数々の知見が、タンパク質の立体構造予測AIである「AlphaFold」の礎となった。「従来に比べ、短時間で構造を決定できるようになりました。立体構造解析も次の時代に入ったと感じます。科学の魅力は論理的に物事を進められること。正しいサンプルを正確に測定・解析することがもちろん大事ですが、立体構造は元の測定データも併せて公開されるため、誰でも検証可能で信頼性があります。私たちが解析した構造からより多くの知見が生み出されるよう、これからもこつこつと仕事を進めていきたいです」

(撮影:古末 拓也/制作協力:サイテック・コミュニケーションズ)

この記事の評価を5段階でご回答ください

回答ありがとうございました。

Top