理化学研究所(以下、理研)ライフサイエンス技術基盤研究センター(CLST)とダイキン工業株式会社(以下、ダイキン工業)の連携組織である「理研CLST-ダイキン工業連携センター(注1」は、さまざまな温湿度に置かれた人に対して疲労度測定等の健康計測を行う実験施設を、理研の融合連携イノベーション推進棟(IIB、神戸市中央区)(注2内に11月1日設置しました。
理研とダイキン工業が2016年10月に開設した連携事業「理研-ダイキン工業健康空間連携プログラム(RDCP)(注3」では、理研が総合研究所としてこれまで培ってきた多様な技術と、ダイキン工業の空調の制御技術を持ち寄り、「快適で健康な空間」を主題に社会に貢献する価値の創造を目指して連携研究を行っています。
RDCPから創出されたテーマである「抗疲労空間の構築」を目的に、2017年6月、理研CLST-ダイキン工業連携センターが設立されました。本連携センターは、さまざまな環境要因と疲労の関係を明らかにする「健康指標研究開発」と、多様な環境要因の抗疲労効果を検証して健康指標と環境空間を活用した抗疲労ソリューションを開発する「健康ソリューション研究開発」により、健康に資する抗疲労空間の実現を目指しています。
今回、本研究を加速するために、さまざまな温湿度環境下での疲労度の違いや温湿度以外の環境要因(気流の揺らぎ、照明や香りなど)の影響を調べる臨床研究の実験施設を、理研IIBに設置しました。本施設では、温湿度を精密に制御した室内で被験者に疲労負荷課題を行ってもらい、課題の前後で疲労度測定等の健康計測を行うことが可能です。さらに、温湿度とそれ以外の環境要因を組み合わせた場合の抗疲労効果も検証できます。
日米で行われた調査から、ヒトは日々の生活のうちの約9割の時間を屋内で過ごすとされています(注4。しかし、屋内の環境がヒトに与える影響には不明な点が多く残されています。本臨床研究には一般の方からも被験者を募集し、屋内環境下での多様な健康データの取得を目指す予定です。また本研究で得られた成果は、「健康“生き活き”羅針盤リサーチコンプレックス(注5」の取り組みをも通じて、新たな事業創出のシーズとなることが期待できます。
注1) 理研CLST-ダイキン工業連携センター
注2) 2015年4月3日 トピックス 「融合連携イノベーション推進棟の完成について」
注3) 2016年10月14日 トピックス 「理研-ダイキン工業健康空間連携プログラムを開設」
注4) Journal of Exposure Science and Environmental Epidemiology, (2001) 11, 231-252
Journal of Architecture Planning, AIJ, No. 511, 45–52, Sept. 1998
注5) 健康“生き活き”羅針盤リサーチコンプレックス

実験施設の開設に際して行われた記者会見(11月2日理研IIBにて。以下同じ)

右から、渡辺恭良 連携センター長、水野敬 ユニットリーダー、薮知宏 客員研究員(ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター 主任技師)、堀翔太 客員技師(同 技師)

臨床試験を行う実験室。温度は0.1℃単位、湿度は1%単位で制御できる。被験者はコンピュータを用いた疲労負荷課題を行い、疲労度の指標となる自律神経機能に関する測定データが体に装着したワイヤレス計測器により記録される。