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2021年4月1日

理化学研究所

新センター「量子コンピュータ研究センター」開設

-量子技術イノベーション拠点の形成・発展に向けて-

理化学研究所(理研)は、国が策定した「量子技術イノベーション戦略」[1]に基づき、「量子コンピュータ研究センター(RQC:RIKEN Center for Quantum Computing」を4月1日に開設しました。今後、同戦略における量子コンピュータ分野の技術ロードマップの達成を目指すとともに量子技術イノベーション拠点の形成に向け、研究の重点化に取り組みます。

理研は2020年10月、理研における量子コンピュータ開発拠点を形成するため、創発物性科学研究センター(CEMS)の量子情報エレクトロニクス・量子コンピュータ[2]に関係する研究者を中心として「量子コンピュータ研究領域」を設け、研究を集約しました。同時に、この開発拠点を担う「量子コンピュータ研究センター準備室」を設置し、理研における新たな研究センターとしての開設準備を進めてきました注1)。

量子力学の基本原理を物理学のみならず情報科学に適用することにより、情報処理・通信・計測への変革をもたらす量子情報科学研究が世界中で推し進められています。例えば、米国連邦政府では「量子情報科学(QIS)」を「未来の産業(Industries of the future)」として国家的な研究開発の優先課題に指定し、量子技術の中心課題として位置づけています。

理研においても、量子情報科学の基盤となる研究開発を推進するとともに、その成果に基づいて、さまざまな応用への展開に向けた量子コンピュータの研究開発を進め、社会課題解決のための量子計算プラットフォーム構築へ貢献します。また理研では、スーパーコンピュータ「富岳」[3]を用いた量子コンピュータのシミュレーションや有効性の高い量子アルゴリズムの探求をはじめ、開拓研究(量子情報物理)、物性科学、計算科学等、他研究センターとの連携によって、理研の強みである総合力を発揮し、激しい国際競争の中にある量子コンピュータ分野において世界を先導します。

さらに、引き続き世界をリードするため、若手人材の育成を図るとともに、国内外の大学・研究機関や企業からの参画を募り、先駆的なイノベーションの創出に取り組みます。理研は、量子技術イノベーション拠点の中核組織を担い注2)、RQCがその中心として「量子技術イノベーション拠点推進会議」を開催することで、社会的・科学的課題の共有・解決、成果普及等を促進し、国際連携ハブとしての役割を果たしていくことを目指します。

量子コンピュータ研究センターの設置会見の写真

量子コンピュータ研究センターの設置会見(4月1日)にて
(左から、理研 小安重夫理事(研究担当)、富士通株式会社 原裕貴執行役員常務、理研 松本紘理事長、中村泰信センター長)

概要

名称
量子コンピュータ研究センター
RIKEN Center for Quantum Computing(RQC)
研究拠点
理化学研究所和光事業所
(埼玉県和光市広沢2-1)
目的・研究開発内容
  • 1.量子コンピュータの研究開発
    量子コンピュータの研究開発及び量子技術の新たな応用への開拓に取り組むとともに、高精度かつスケーラブルな量子演算を実行する量子計算プラットフォームの実現に向けた研究開発する。
  • 2.量子情報科学基盤研究
    量子情報科学の基盤となる量子制御・計測技術に加え、異なる物理系を融合し、それぞれの利点を活かすハイブリッド量子系を利用した量子情報処理技術などを探究する。
  • 3.先駆的なイノベーション創出に向けた取組及び国際連携ハブとしての役割
    • 量子技術の発展を担う若手研究者・研究リーダーのための環境整備
    • 国内外の機関、企業等との連携開発の場の構築、人材交流
    • 開発成果の試行的実用化等の先駆的なイノベーション創出
    • 量子技術イノベーション拠点が国際連携ハブとなるための取組実施
研究体制
9研究チーム、1理研白眉[4]研究チーム、3研究ユニット、1産業界との連携センター制度[5]による企業連携センター

国内外の優れた研究者を糾合し、超伝導方式のみならず、光方式、半導体中の電子スピンや真空中の原子といったさまざまな物理系を用いた方式に関するハードウェア研究を行うとともに、量子計算理論・量子アルゴリズム・量子アーキテクチャなどのソフトウェア研究も推進する量子コンピュータ分野を広く網羅した研究開発拠点を構築します。

また超伝導量子コンピュータ開発に対し、富士通株式会社との企業連携センター(連携センター長:中村泰信)を設置し、革新的な量子技術の研究開発を行い、科学研究の進歩や実社会応用の発展に貢献します。

参考

量子コンピュータ研究センター

補足説明

  • 1.量子技術イノベーション戦略
    我が国において「量子技術イノベーション」を明確に位置付けた上で、日本の強みを活かし、重点的な研究開発や産業化・事業化を促進することを目的として、2020年1月21日に統合イノベーション戦略推進会議が最終報告を取りまとめた。本戦略の中で、量子コンピュータ・量子シミュレーションを含む量子技術イノベーションの重要領域が設定されるとともに、国内外から人や投資を呼び込む国際研究拠点として、「量子技術イノベーション拠点(国際ハブ)」を形成することが示された。「統合イノベーション戦略2020」(令和2年7月17日閣議決定)において、国を挙げて量子技術イノベーションに関する総合的かつ戦略的取組を強力に推進していくこととされている。
  • 2.量子コンピュータ
    量子力学における重ね合わせおよび量子力学的相関を利用して、超高速計算を実現するコンピュータ。従来のコンピュータでは天文学的な時間のかかる因数分解の問題などを短時間で解くことを可能にする量子アルゴリズムが開発されている。
  • 3.スーパーコンピュータ「富岳」
    スーパーコンピュータ「京」の後継機。社会的・科学的課題の解決で日本の成長に貢献し、世界をリードする成果を生み出すことを目的とし、電力性能、計算性能、ユーザーの利便性・使い勝手の良さ、画期的な成果創出、ビッグデータ解析やAI処理の性能の総合力において世界最高レベルのスーパーコンピュータ。15万8976個の中央演算装置(CPU)を搭載し、1秒間に約44京2010兆回の計算が可能。2020年6月と11月に世界のスパコンランキング「TOP500」「HPCG」「HPL-AI」「Graph500」で2期連続の世界一位を獲得。2021年3月8日に共用開始。
  • 4.理研白眉制度
    並外れた能力を持つ若手研究者に、研究室主宰者(理研白眉研究チームリーダー)として独立して研究を推進する機会を提供することを目的として、2017年に理研が創設。理研白眉研究チームリーダー間の積極的な交流を促すことで、広い視野を持つ国際的な次世代リーダーの養成を目指す。
    理研白眉制度
  • 5.産業界との連携センター制度
    企業から提案された中・長期的な課題の解決に向けて理研と企業が一体的に研究開発を推進することを目的に設置する研究組織。広い視野を持ったさまざまな研究テーマを設定し、理研と企業双方の文化を吸収した人材の育成を図りつつイノベーションの創出を目指す。2021年4月1日現在、11センターが活動中。
    産業界との連携センター制度|理化学研究所バトンゾーン研究推進プログラム

お問い合わせ

理化学研究所 和光事業所 量子コンピュータ研究推進室
Tel: 048-467-7892
Email: rqc_info [at] ml.riken.jp

※[at]は@に置き換えてください。

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
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