2019年5月17日
大阪大学
東北大学
理化学研究所
科学技術振興機構
生物発光で複数マウスの脳活動を同時にライブ観察
-社会性行動を司る脳機能や精神疾患研究分野での新たな展開に期待-
私たちの脳では、神経細胞が回路を形成し、電気的な信号の伝搬を通じて認知・行動・記憶といった高次脳機能を実現します。それら脳機能を詳細に理解するために、従来は電極を用いた脳活動計測が行われてきました。しかしこの手法では、特に自由行動中の動物における脳活動を計測する際に、それぞれのマウスにケーブルを接続する必要があります。したがって、例えば社会性行動を行っている複数のマウスから同時計測を行おうとすると、ケーブルが絡まってしまうことなどが問題となり、研究が困難でした。
今回、大阪大学産業科学研究所の永井健治 教授、稲垣成矩 日本学術振興会特別研究員(当時)、揚妻正和 科学技術振興機構さきがけ研究員(当時)、東北大学の大原慎也 助教、飯島敏夫 名誉教授、理化学研究所光量子工学研究センターの横田秀夫 チームリーダーらの共同研究グループは、「生物発光膜電位センサー LOTUS-V」を利用した新規脳活動計測法の開発に成功しました。LOTUS-Vが神経活動に応じてその発光色を変化させることを利用して、ミリ秒単位で変化する脳活動の計測ができます。生物発光を利用することで、夜にホタルの光を撮影するように、LOTUS-Vの色の変化を離れた場所からでも検出できます。このワイヤレスなライブ脳活動計測技術により、世界で初めて自由行動中の複数マウスからの同時計測が可能になりました。
そして、この計測法を用いて実際にマウスが他のマウスと接触する際の脳活動を観察したところ、一次視覚野の神経活動が接触に応じて優位に上昇することを世界で初めて発見できました。これは今回開発された計測法が、未知の脳機能を発見する手段として有用であることを示唆しています。特に、これまで研究が困難であった、複数動物間のコミュニケーションなどの社会性行動を司る脳機能の解明、そして関連する自閉症スペクトラムや対人恐怖症などの精神疾患の研究・治療への貢献が期待されます。
詳細は大阪大学 ResOUのホームページをご覧ください。
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理化学研究所 広報室 報道担当
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