ヒトのゲノムDNAはクロマチンの形状によって、主に「ユークロマチン」「ヘテロクロマチン」の2つの領域に分類できるとされています。これまで長い間、頻繁に遺伝情報の読み出しが行われるユークロマチンのDNAはほどけている一方、遺伝情報の読み出しが抑えられているヘテロクロマチンのDNAは凝縮して塊を形成している、と考えられてきました。
このたび、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 野崎 慎 大学院生(現 ハーバード大 研究員)、井手 聖 助教、前島 一博 教授のグループ、東 光一 助教、黒川 顕 教授のグループは、理化学研究所 新海 創也 上級研究員、大浪 修一 チームリーダーと共同で、生きた細胞内をナノメートルレベルで可視化できる超解像蛍光顕微鏡を用い、細胞の中でのDNAの動きを観察・解析し、ユークロマチンの挙動を詳細に調べました。
その結果、ユークロマチンにおいても、DNAが不規則に凝縮した「塊」を形成し、そのなかでDNAが揺らいでいることを発見しました。このことは、ユークロマチンにおいてはDNAがほどけている、という従来の定説を覆す発見で、不規則に凝縮した「塊」が、生きた細胞内におけるユークロマチンの基本構造であることがわかりました。また、ユークロマチンにおけるDNAの塊は、放射線などによるDNAの損傷への耐性にも貢献すると考えられます。
本研究の結果によって、生命の設計図であるDNAの遺伝情報がどのように維持され、どのように読み出されるのかについての理解が進むとともに、遺伝情報の保護、読み出し方の変化によって起きるさまざまな細胞の異常や関連疾患の理解につながることが期待されます。
詳細は国立遺伝学研究所のホームページをご覧ください。
報道担当
理化学研究所 広報室 報道担当
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