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2025年7月23日

理化学研究所
産業技術総合研究所
東京電機大学

室温でスピン閉鎖を実現

-シリコントランジスタに“深い不純物”添加で量子機能-

理化学研究所(理研)開拓研究所 石橋極微デバイス工学研究室の大野 圭司 専任研究員(創発物性科学研究センター 量子効果デバイス研究チーム 専任研究員)、伴 芳祐 特別研究員(研究当時)、石橋 幸冶 主任研究員(創発物性科学研究センター 量子効果デバイス研究チーム チームディレクター)、産業技術総合研究所 先端半導体研究センター 新原理シリコンデバイス研究チームの森 貴洋 研究チーム長、東京電機大学 工学部 電気電子工学科の森山 悟士 教授らの共同研究グループは、スピン閉鎖[1]現象を室温(300ケルビン(K:絶対温度の単位)、約27℃)で実現することに成功しました。

本研究成果は単一電子のスピン[2]によって機能する室温動作磁場センサーの開発や、室温動作するスピン量子ビット[2]の開発につながると期待されます。

スピン閉鎖は、半導体中の微細な空間に閉じ込められた単一電子のスピン状態によって半導体素子の電気特性が変化する現象です。スピンの量子性に起因する特徴的な磁場依存性が現れるほか、スピン量子ビットの読み出し[2]手法の一つにもなっています。しかしながらこれまでスピン閉鎖の動作温度は10K(約-263℃)以下に限られてきました。

今回、共同研究グループは、"深い不純物"である硫黄不純物と亜鉛不純物とを添加した微細なシリコントランジスタ素子を作製し、その素子における硫黄不純物一つと亜鉛不純物一つとを経由するトンネル伝導[3]を調べた結果、スピン閉鎖が室温において観測されました。

本研究は、科学雑誌『Communications Physics』オンライン版(7月23日付:日本時間7月23日)に掲載されました。

硫黄不純物および亜鉛不純物を添加したトランジスタと不純物を介したトンネル伝導の模式図の画像

硫黄不純物および亜鉛不純物を添加したトランジスタと不純物を介したトンネル伝導の模式図

背景

現代社会を支える半導体は、シリコンへ意図的に添加した不純物(ドーパント)によって機能します。シリコンに添加される不純物は、通常は、リン、ヒ素、ホウ素などであり、これらは"浅い不純物"と呼ばれています。室温においてはこれら浅い不純物から放出された電子や正孔(電子の不足による孔)がシリコン中を自由に動き回ることでシリコンの電気的特性が大きく変わります。一方、硫黄や亜鉛などは"深い不純物"と呼ばれ、これらをシリコンへ添加しても、電子や正孔は放出されずに不純物周辺のごく狭い空間に閉じ込められたままです。深い不純物の添加ではシリコンの電気的特性はほとんど変わらないため、深い不純物は、浅い不純物ほどには役立つものと見なされてきませんでした。

半導体のごく狭い空間に閉じ込められた電子や正孔のエネルギーは原子のように飛び飛びの値を取ります。飛び飛びのエネルギー間隔よりも熱エネルギーが小さいような温度では、閉じ込められた電子や正孔は原子のように振る舞います。近年、そのような電子や正孔の持つスピンを量子ビットとして用い、それらを量子コンピュータ[4]量子センサー[5]に応用するための研究が進められています。電子や正孔を閉じ込める空間が狭ければ狭いほど、より高い温度でも原子のように振る舞うようになります。従って電子や正孔をより狭い空間に閉じ込めることで、より高温で動作する量子ビットとなり得ます。しかしながら現在の半導体微細加工技術では量子ビットが室温で動作するほどのごく狭い空間に電子や正孔を閉じ込めることはできません。

深い不純物周辺の電子や正孔は、微細加工技術を用いた場合よりもずっと狭い空間に閉じ込められています。そこで、これらの電子や正孔は室温動作する量子ビットになり得るのではないか、との動機に基づいてこの研究が始まりました。

研究手法と成果

本研究は大野専任研究員らの2019年の研究成果注1)に基づいて進められました。本研究でも、イオン注入法[6]によりシリコンに深い不純物を導入すること、トンネル伝導により深い不純物に閉じ込められた電子(または正孔)をトランジスタ電極に出し入れすること、またそのために、後述する「トンネル電界効果トランジスタ構造」を採用すること、スピン閉鎖を利用すること、などが共通しています。新しい点は、2種の深い不純物(硫黄不純物と亜鉛不純物)を導入したこと、および素子電流の磁場依存性を用いてスピン閉鎖を同定したことで、これらが成功の鍵となりました。

以下では、本研究の柱である硫黄不純物および亜鉛不純物の特徴、単一の硫黄・亜鉛不純物を介したトンネル伝導、スピン閉鎖に起因する素子電流の磁場依存性について、順に説明します。

シリコンに添加されたリン不純物の原子は正の電荷を帯びており、負の電荷を帯びた電子がその周辺にいるため、ちょうど真空中の水素原子のような状態となります(図1(a))。同様にホウ素不純物は反水素原子のような状態となります。これに対し、シリコンに添加された硫黄不純物はシリコン結晶中においてヘリウム原子、亜鉛不純物は反ヘリウム原子のように振る舞います。ヘリウム原子は二つの電子を持つ安定な原子です。この「安定」とはヘリウム原子から電子を放出させるのに必要なエネルギーが大きいことを意味します。同様にシリコンに添加された硫黄不純物から電子を放出させるには大きなエネルギーが必要で、その大きさは室温熱エネルギー(約26ミリ電子ボルト(meV、電子ボルトはエネルギーの単位))の10倍以上であることが知られています。二つ目の電子を硫黄不純物から放出させるにはさらにその倍程度のエネルギーが必要です。亜鉛不純物から正孔を放出させるのも同様です。図1(b)はエネルギーバンド図[7]で、リン不純物やホウ素不純物の"浅い"エネルギー準位と、そこから電子や正孔が放出される様子、また硫黄不純物や亜鉛不純物の"深い"エネルギー準位を示しています。硫黄不純物や亜鉛不純物の特徴が分かります。

浅い不純物(リン、ホウ素)と深い不純物(硫黄、亜鉛)の図

図1 浅い不純物(リン、ホウ素)と深い不純物(硫黄、亜鉛)

(a)シリコン結晶中のリン、ホウ素、硫黄、亜鉛の各不純物と、その周辺の電子(正孔)の模式図。シリコン結晶はシリコン原子(灰色丸)の2次元配列で、水素・ヘリウム状軌道は円で示している。模式的な表現であるため、図中の軌道サイズとシリコン結晶格子間隔のサイズ比は正確ではない。(b)シリコンのエネルギーバンド(エネルギーの連続帯)と、電子(正孔)が自由に動き回れないバンドギャップ(価電子帯と伝導帯の間に挟まれた空間)中のリン、ホウ素、硫黄、亜鉛の各不純物のエネルギー準位の模式図。

次に、トンネル電界効果トランジスタ構造を採用することで単一の硫黄不純物、および単一の亜鉛不純物を介したトンネル伝導を実現しました。このトランジスタ素子は、N型半導体のソース電極、P型半導体のドレイン電極、およびゲート電極から成り、ソース・ドレイン電極の間には約20ナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)程度のチャネルと呼ばれる領域があります(図2(a))。チャネルには硫黄不純物および亜鉛不純物が導入されています。各不純物の位置は制御できません。しかしながら一度に作製した多数の素子の中には図2(b)のように「ソース電極→硫黄不純物→亜鉛不純物→ドレイン電極」の経路でトンネル伝導が生じる素子があることになります。この研究では後述するスピン閉鎖特性の評価によってそのような素子を複数探し出しました。図2(c)はこのようなスピン閉鎖を示すトンネル伝導のエネルギーバンド図です。

トランジスタ素子とそのトンネル伝導の模式図の画像

図2 トランジスタ素子とそのトンネル伝導の模式図

(a)透過電子顕微鏡像に基づくトランジスタ素子の断面模式図。素子電極にはゲート電圧VG、ソース・ドレイン電圧VSDが印加されソース・ドレイン電流ISDの磁場依存性が測定された。(b)素子のチャネル付近を素子上面から見た場合の模式図。チャネルに添加された一つの硫黄不純物と一つの亜鉛不純物を介した3ステップのトンネル伝導によってソースからドレインへ電子が移動する様子を示す。(c)素子断面方向のエネルギーバンド図。N型半導体であるソース電極とチャネル、P型半導体であるドレイン電極により空間的に変調されたバンドが形成される、チャネルのバンドギャップ内にある硫黄不純物と亜鉛不純物のエネルギー準位と、それらを介した3ステップのトンネル伝導を示す。

スピン閉鎖状態でもわずかに流れる電流には特徴的な磁場依存性が現れることが、多くの実験注2)で知られていました。これらの実験は半導体微細加工によって電子を閉じ込めた素子を1K程度の低温に冷却して行われてきました。これに対し、今回の研究では室温においてその特徴的な磁場依存性が観測されました。図3(a)、(b)は今回の研究で、室温で得られた素子電流の磁場依存性を示しています。特徴はゼロ磁場付近のディップ(くぼみ)構造と高磁場側にあるピーク状のすそ野構造で、それぞれの構造はスピンとその周辺環境との相互作用によることが理論研究注3、4)で知られています。図3(c)は今回の研究で室温スピン閉鎖を示した8個の素子で得られたディップ幅およびピーク幅を、各素子の電流値に対してプロットしたもので、理論(実線および点線)との良い一致が確認されました。

室温で観測されたスピン閉鎖特性の図

図3 室温で観測されたスピン閉鎖特性

(a)観測されたソース・ドレイン電流の磁場依存性。スピン閉鎖に特徴的なディップ構造およびピーク構造が現れている。挿入図は磁場0.6ミリテスラ(mT、テスラは磁束密度の単位)付近の詳細。pA:ピコアンペア、1pAは1兆分の1アンペア。µT:マイクロテスラ、1µTは100万分の1テスラ。(b)別素子における同様の特性。より狭いディップ構造(挿入図)が観測された。(c)8個の素子で観測されたディップ構造の幅(青色丸)と、そのうちの5個の素子で観測されたピーク構造の幅(赤色四角)をそれぞれの素子のソース・ドレイン電流値に対してプロットした。残り3個の素子では、加えた磁場の範囲内でディップ構造のみ観測されたため、ピーク構造の幅はプロットしていない。赤色点線、青色実線は理論予測で、実験結果と良い一致を示す。

  • 注1)2019年1月24日プレスリリース「シリコン量子ビットの高温動作に成功
  • 注2)Koppens, F. H. L., Folk, J. A., Elzerman, J. M., Hanson, R., Willems van Beveren, L. H. W., Vink, I. T., Tranitz, H. P., Wegscheider, W., Kouwenhoven, L. P. & Vandersypen, L. M. K. Control and detection of singlet-triplet mixing in a random nuclear field. Science 309, 1346-1350 (2005). この論文をはじめ現在までに14編の実験の報告がある。
  • 注3)Jouravlev, O. N. & Nazarov, Y. V. Electron transport in a double quantum dot governed by a nuclear magnetic field. Phys. Rev. Lett. 96, 176804 (2006).
  • 注4)Danon, J. & Nazarov, Y. V. Pauli spin blockade in the presence of strong spin-orbit coupling. Phys. Rev. B 80, 041301(R) (2009).

今後の期待

図3(a)は、この素子の磁場感度が約20µTであり、原理的には地磁気(45µT)レベルの磁場検出が可能であること、従ってこの素子が地磁気センサーへ応用できることを示しています。ごく狭い空間に閉じ込められたスピンで磁場を検出するため、センサーは高い空間分解能を持つであろうことが期待できます。一方で現状では0.1pA程度の小さな磁場変化を検出するために1,000回程度の測定を繰り返す必要があり、磁場検出には数十秒程度の時間がかかることが課題です。

室温でのスピン閉鎖は確認されましたが、スピン閉鎖による量子ビットの読み出しはまだ実現できていません。磁気共鳴[8]によるスピン状態制御とスピン閉鎖によるスピン状態の読み出しを組み合わせることで量子ビット動作が実現します。深い不純物による室温動作量子ビットの実現は次の重要な目標です。

大野専任研究員らは2020年に、スピン量子ビットによる量子熱機関[9]に関する研究を行っています注5)。量子熱機関は、量子ビットが高温部分および低温部分と、それぞれ相互作用することで機能するため、より高い温度で動作する量子ビットが期待されています。深い不純物による室温動作量子ビットは室温量子熱機関の実現につながる可能性があります。

深い不純物をシリコンに導入するために採用された手法(イオン注入)では不純物個々の位置は制御できず、その配置はランダムなものとなります。シリコン量子コンピュータのさまざまな提案の中には、指定した位置に正確に不純物を導入するという、現時点ではまだ実現していない技術が仮定されているものがあります。このような提案に触発され、不純物位置の正確な制御を目指した技術開発が続いています。これが実現できれば、深い不純物による室温動作シリコン量子コンピュータの実現につながる可能性があります。

補足説明

  • 1.スピン閉鎖

    トランジスタのソース・ドレイン電極間に不純物が二つ並んだ構造において観測される、単一電子(または正孔)のスピン状態に依存した電気伝導。以下では今回の素子で起こっているスピン閉鎖について説明する。左図のように硫黄不純物の電子スピン状態と亜鉛不純物の正孔スピン状態が同じ場合(スピン状態は上向きもしくは下向きの矢印として表される)は、硫黄不純物の電子は亜鉛不純物に移動し、引き続きドレイン電極へ移動できる。一方、右図のようにスピン状態が異なる場合はパウリ排他律により移動できない。パウリ排他律とは二つの電子(図のような一つの電子と一つの正孔ではないことに注意)が同じ状態を取ることができないという量子力学の原理の一つであり、ここでは二つの電子が同じスピン状態で、かつ同じ場所(亜鉛不純物)に入ることはできないことに相当する。ここで正孔のスピン状態は電子のそれの逆であることに注意すると下図のようになる。

    スピン閉鎖の図
  • 2.スピン、スピン量子ビット、スピン量子ビットの読み出し
    電子はスピンと呼ばれる右回りまたは左回りの自転に対応する二つの状態を取る。スピン量子ビットは電子スピン状態を0、1に符号化した量子情報の最小単位で、0と1の量子的重ね合わせ状態を取ることができ、読み出しを行うことで0か1かに確定する。
  • 3.トンネル伝導
    電子がそのエネルギーよりも高いエネルギー障壁を量子的効果により通り抜ける(トンネル効果)ことで生じる電気伝導。高い障壁に囲まれた狭い空間に閉じ込められた電子を電極などへ出し入れすることができる。
  • 4.量子コンピュータ
    複数の量子ビットを用いて超並列計算を行う計算機。
  • 5.量子センサー
    量子ビットにより外部環境を計測すること。スピン量子ビットは磁場環境に敏感であるため磁場センサーになる。
  • 6.イオン注入法
    添加したい不純物原子イオンを電場で加速して、シリコンへ注入する手法。シリコントランジスタの製造工程で一般的に用いられている。個々の不純物の正確な位置制御はできない。
  • 7.エネルギーバンド図
    シリコンなどの半導体は、電子状態が取り得るエネルギーに、特徴的なバンド(帯)構造が現れ、それぞれ価電子帯、バンドギャップ、伝導帯と呼ばれる。シリコン素子のある1次元方向を横軸に取り、エネルギーを縦軸に取ってバンド構造を描いた図をエネルギーバンド図という。N型電極やP型電極によりバンド構造を空間的に変調することができる。
  • 8.磁気共鳴
    磁場中でスピンの歳差運動に共鳴する交流磁場を加えることでスピン状態を制御する手法。スピン量子ビット制御の標準的手法として広く採用されている。
  • 9.量子熱機関
    量子ビットを用いることで従来の熱機関に量子技術を導入し、従来熱機関にはない高い効率や新たな機能を発現させる熱機関。多くの研究機関で理論的、実験的研究が進んでいる。

共同研究グループ

理化学研究所 開拓研究所 石橋極微デバイス工学研究室
専任研究員 大野 圭司(オオノ・ケイジ)
(創発物性科学研究センター 量子効果デバイス研究チーム 専任研究員)
特別研究員(研究当時)伴 芳祐(バン・ヨシスケ)
(現 株式会社本田技術研究所 材料研究センター リジェネラティブ材料研究室)
主任研究員 石橋 幸治(イシバシ・コウジ)
(創発物性科学研究センター 量子効果デバイス研究チーム チームディレクター)

産業技術総合研究所 先端半導体研究センター 新原理シリコンデバイス研究チーム
研究チーム長 森 貴洋(モリ・タカヒロ)
研究チーム付 加藤 公彦(カトウ・キミヒコ)
研究員 飯塚 将太(イイヅカ・ショウタ)
主任研究員 岡 博史(オカ・ヒロシ)
招聘研究員 村上 重則(ムラカミ・シゲノリ)

東京電機大学 工学部 電気電子工学科 先端マテリアルデバイス研究室
教授 森山 悟士(モリヤマ・サトシ)

研究支援

本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業CREST「シリコン技術に立脚した室温動作スピン量子ビット(研究代表者:大野圭司、課題番号JPMJCR1871)」、文部科学省光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)「シリコン量子ビットによる量子計算機向け大規模集積回路の実現(研究代表者:森貴洋、課題番号JPMXS0118069228)」、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業新学術領域研究(研究領域提案型)「電荷・スピンハイブリッド量子科学の研究(研究代表者:石橋幸治、課題番号15H05867)」、理研‐産総研チャレンジ研究「モバイル人工知能機器実現に向けた室温動作量子計算機の開発(代表者:大野圭司、森貴洋)」による助成を受けて行われました。

原論文情報

  • Yoshisuke Ban, Kimihiko Kato, Shota Iizuka, Hiroshi Oka, Shigenori Murakami, Koji Ishibashi, Satoshi Moriyama, Takahiro Mori, Keiji Ono, "Pauli spin blockade at room temperature in double-quantum-dot tunneling through individual deep dopants in silicon", Communications Physics, 10.1038/s42005-025-02177-z

発表者

理化学研究所
開拓研究所 石橋極微デバイス工学研究室
専任研究員 大野 圭司(オオノ・ケイジ)
(創発物性科学研究センター 量子効果デバイス研究チーム 専任研究員)
特別研究員(研究当時)伴 芳祐(バン・ヨシスケ)
主任研究員 石橋 幸治(イシバシ・コウジ)
(創発物性科学研究センター 量子効果デバイス研究チーム チームディレクター)

産業技術総合研究所 先端半導体研究センター 新原理シリコンデバイス研究チーム
研究チーム長 森 貴洋(モリ・タカヒロ)

東京電機大学 工学部 電気電子工学科
教授 森山 悟士(モリヤマ・サトシ)

大野 圭司 専任研究員の写真 大野 圭司
石橋 幸治 主任研究員の写真 石橋 幸治
森 貴洋 研究チーム長の写真 森 貴洋
森山 悟士 教授の写真 森山 悟士

発表者のコメント

スピン閉鎖は2002年、私が当時の東京大学理学部において樽茶清悟教授らとともに提案・実証した現象です。私が学位取得後、研究者としてのキャリアをスタートして間もない頃でした。以降私の仕事の多くがスピン閉鎖に関わるものとなっています。2002年から2025年まで、23年間かけてスピン閉鎖の動作温度は0.1Kから300K、と3,000倍になりました。0.1Kといった極低温で起こる現象はわれわれの暮らす300Kの世界とは無縁のものだ、という一般常識に一石を投じることができたのではないかと考えます。

動作温度向上だけでなく、シリコン素子をベースとすることにもこだわってきました。よく知られているように、シリコン素子を作製する技術(シリコン技術)は数十億もの微細な素子から成る集積回路を安価に大量生産できます。私は量子ビットなどの量子技術もこのシリコン技術によって実装されるべきだと考えました。このような考えに基づいたプロジェクト提案「シリコン技術に立脚した室温動作量子ビット」は科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業CRESTに採択いただき、今回の成果につながりました。

最初のスピン閉鎖の提案・実証論文は2002年の出版以降、継続して引用され続け、ちょうど今回の論文の査読中に被引用件数1,000回を超えました。被引用件数が1,000回を超えると、影響力の大きい一流論文(Seminal Paper)といわれるようになります。今回の論文もこのように数多く引用され、今後の科学技術の発展に役立つものとなることを祈っています。(大野)

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