2013年4月1日
超薄板ガラスを用いた全ガラス製マイクロチップ内電動バルブ
理研No. 08049
発明者
田中 陽(集積バイオデバイス研究ユニット)、上田 泰己(合成生物学グループ)
背景
数cm角のガラス基板上に幅・深さ1mm以下の流路を加工し、化学・生化学システムを集積化した「マイクロチップ」は、次世代医療診断等の小型・高速の次世代型デバイスとして期待されています。しかしながら、ガラスは硬いため、その中に流体を制御するのに必須であるバルブを組み込むのはきわめて困難であり、集積化のメリットが十分に生かせないという問題がありました。一方、ポリジメチルシロキサン(DMS)代表される樹脂製マイクロチップは、柔軟な特徴を活かし、バルブの組み込みが容易でしたが、有機溶媒や気体の操作・分析・検出あるいは高度な表面化学処理を活かした細胞のパターニングなどには物理的・化学的安定性の面から不向きでした。
概要
近年開発された10μmを下回る厚みの超薄板ガラスを利用した全ガラス製バルブの製造に成功しました。超薄板ガラスは、薄いがゆえに、ガラスにも関わらずきわめて柔軟性が高く、割れにくい特徴をもっています。この全ガラス製バルブをガラスマイクロチップに組み込む技術を独自開発し、ピエゾ素子を装着することで、全ガラス製マイクロチップ内バルブの実証に成功しました。
図:超薄板ガラスを用いたバルブ付きガラス製マイクロチップ
利点
- 全ガラス製
- きわめて応答が早い(0.1秒程度)
- ほとんどの溶媒・溶質に対して安定
応用
- 汎用的な集積化学システム
- 高速免疫分析、医療診断、一細胞診断、分子合成
文献情報
- 1.特許第6172711号、米国特許第9073054号
関連情報
- 1.2013年5月9日プレスリリース「マイクロ流体チップに使う小型電動バルブを開発」
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