2024年9月3日
理化学研究所
東京大学大学院医学系研究科
昭和大学
起立性調節障害の子どもを対象とした「子ども睡眠検診」プロジェクトを開始
-起立性調節障害の子どもの睡眠実態調査への協力医療機関を募集-
理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター 合成生物学研究チームの上田 泰己 チームリーダー(東京大学 大学院医学系研究科 機能生物学専攻 システムズ薬理学教室 教授)、東京大学 大学院医学系研究科 機能生物学専攻 システムズ薬理学教室の岸 哲史 特任講師、昭和大学 医学部 小児科学講座の加藤 光広 教授、同大学 保健管理センターの田中 大介 教授らは、起立性調節障害[1]の子ども(小中高生)を対象として、ウエアラブルデバイスを用いた睡眠測定を実施し、起立性調節障害の子どもの睡眠状態の把握と、睡眠問題の改善の糸口発見を目指す「子ども睡眠検診」プロジェクト(起立性調節障害の睡眠実態調査)を実施します。この度、9月3日「秋の睡眠の日」に合わせて、プロジェクトにご参加・ご協力をいただける医療機関(医師)の募集を開始します。同時に、プロジェクトの持続的推進への支援企業・団体を募集します。プロジェクト開始に伴い、11月10日(日)にキックオフシンポジウムをオンライン開催します。
背景
上田 チームリーダーらは、2020年より、特定健診に睡眠検査を導入して国民の睡眠衛生の向上を目指す「睡眠健診運動」を推進してきました。「睡眠健診」の実現のためには、「一次予防」(健康増進)、「二次予防」(疾患の早期発見・対応)、「三次予防」(疾患の重症化予防)から成る重層的な睡眠医療のエコシステムを構築することが重要です。「一次予防」の取り組みとしては、2022年9月より、日本全国の子ども(小中高生)の睡眠の実態把握と睡眠リテラシーの向上を目的とした「子ども睡眠健診」プロジェクトを推進してきました。これまでに延べ100校以上の学校から10,000人以上の子どもたちに参加してもらいました注1、2、3)。腕時計型のウエアラブルデバイスを用いて1週間にわたり測定したデータを、独自に開発した世界最高精度のアルゴリズム「ACCEL」[2]、注4)を用いて解析することにより、現代の日本の子どもたちの睡眠実態が徐々に明らかになってきました。
プロジェクトを展開する中で、多くの学校で「起立性調節障害」に悩む子どもが非常に多い現状が明らかになってきました。自律神経の機能不全により朝起きることが困難であり、学校に行きたくても行くことができない起立性調節障害患者の睡眠は、これまで十分な科学的検討がなされていませんでした。睡眠異常を捉え改善を図る取り組みは、「二次予防」としての睡眠検診に該当します。
そこで、今回、ウエアラブルデバイスとACCELアルゴリズムを用いて起立性調整障害の子どもの睡眠状況を客観的に測定し、一人ひとりの睡眠状態と起立性調節障害のサブタイプ[1]や重症度、さらには日々の症状などとの関連を明らかにすることを目的とした「子ども睡眠検診」プロジェクトを開始します。このプロジェクトを通じて、いまだ周囲からの理解が十分でない起立性調節障害という疾患に対する社会的な啓発も行いたいと考えています。同時に、「子ども睡眠健診」および「子ども睡眠検診」に関わる持続的な活動推進への支援企業・団体を募ります。詳細につきましては、下記の「子ども睡眠検診」プロジェクトのウェブサイトをご覧ください。
- 注1)2022年9月12日 お知らせ「日本全国の子ども(小中高生)を対象とした「子ども睡眠健診」プロジェクトを開始」
- 注2)2023年9月4日 お知らせ「「子ども睡眠健診」プロジェクト参加校(小・中・高)の第二次(2024年度前期)募集を開始」
- 注3)2024年3月18日 お知らせ「「子ども睡眠健診」プロジェクトで見えてきた実態」
- 注4)2022年1月20日 科学技術振興機構プレスリリース「腕の動きを元に、正確に睡眠覚醒状態を判定する方法ACCELを開発」
「子ども睡眠検診」プロジェクトの概要
プロジェクトの概要
- 腕時計型のウエアラブルデバイスで起立性調節障害の子どもの睡眠を測定し、独自に開発した最先端のアルゴリズム「ACCEL」で解析することにより、起立性調節障害の子どもの睡眠状態の把握と睡眠改善につなげる研究を推進する。
- 起立性調節障害の子どもの大規模睡眠調査を通じて、起立性調節障害という疾患に対する科学的な理解と社会的な啓発を行うことを目指す。
- 協力医療機関(医師)は、起立性調節障害患者(子ども)に対する睡眠測定の案内・説明を行い、デバイスの授受を行う。
- 参加者(患者)は、プロジェクトに参加する専門医を受診し、専用ウエアラブルデバイスを受け取り、それを2週間装着したまま生活し、毎朝ウェブ(Web)問診への回答を行う。その後、ウエアラブルデバイスを返却し、測定結果のフィードバックを受け取る。
- 各医療機関において、デバイス数や診察状況などの事情から、測定参加可能数には上限がある。
募集の概要
- 募集対象:起立性調節障害の診察を行っている日本の医療機関・医師
(新起立試験と身体的チェックリストを用いた診断を行うこと) - 測定対象:上記基準での起立性調節障害の診断を受けている患者(小中高生)
- 実施日程:2025年4月~(先行して募集を開始;先着順に調整)
(2024年9月~2025年3月は、プレ期間として内部で実施) - 費用負担:なし
- 応募締切:2026年3月(予定)
図1 子ども睡眠検診プロジェクト
本プロジェクトの詳細や参加申し込み方法は、「子ども睡眠検診」プロジェクトのウェブサイトからご確認ください。
「子ども睡眠検診」プロジェクト・キックオフシンポジウム
「子ども睡眠検診プロジェクト(起立性調節障害)・キックオフシンポジウム」
- 日時:2024年11月10日(日)14時00分~16時30分(予定)
- 概要:起立性調節障害についての講演と、「子ども睡眠検診」プロジェクトに関する研究者からの説明を行います。プログラムは後日ERATO上田生体時間プロジェクトのウェブサイトでお知らせします。
- 開催形式:オンライン(事前登録制)
- 登録ページ:Zoom 子ども睡眠検診プロジェクト(起立性調節障害)・キックオフシンポジウム
補足説明
- 1.起立性調節障害、サブタイプ
自律神経の調節がうまくいかず、起立時に身体や脳への血流のバランスが悪くなる病気である起立性調節障害には、主に四つのサブタイプ(「起立直後性低血圧」、「体位性頻脈症候群」、「血管迷走神経性失神」、「遷延性起立性低血圧」)がある。 - 2.ACCEL
腕の動きを基に睡眠覚醒状態を判別する方法。3軸方向の加速度を用い、腕の動きから、睡眠・覚醒状態を判定する。従来の方法に比べて睡眠中の覚醒を検出する特異度に優れ、中途覚醒の検出ができる方法である。
研究支援
本プロジェクトは、科学技術振興機構(JST)の支援の下、戦略的創造研究推進事業(ERATO)上田生体時間プロジェクトによって推進されます。
発表者
理化学研究所 生命機能科学研究センター 合成生物学研究チーム
チームリーダー 上田 泰己(ウエダ・ヒロキ)
(東京大学 大学院医学系研究科 機能生物学専攻 システムズ薬理学教室 教授)
東京大学 大学院医学系研究科 機能生物学専攻 システムズ薬理学教室
特任講師 岸 哲史(キシ・アキフミ)
昭和大学
医学部 小児科学講座
教授 加藤 光広(カトウ・ミツヒロ)
保健管理センター
教授 田中 大介(タナカ・ダイスケ)
本プロジェクトに関する問い合わせ先
東京大学 大学院医学系研究科 機能生物学専攻 システムズ薬理学教室
JST ERATO 上田生体時間プロジェクト
〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1
Tel: 03-5841-3415 / Fax: 03-5841-3418
Email: kishi [at] m.u-tokyo.ac.jp(担当:岸)
ウェブサイト: 「子ども睡眠検診」プロジェクト
※[at]は@に置き換えてください。
機関窓口
理化学研究所 広報室 報道担当
お問い合わせフォーム
東京大学大学院医学系研究科 総務チーム
Tel: 03-5841-3304
Email: ishomu [at] m.u-tokyo.ac.jp
昭和大学 総務部総務課 大学広報係
Tel: 03-3784-8059
Email:press [at] ofc.showa-u.ac.jp
※上記の[at]は@に置き換えてください。