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2017年11月7日

理化学研究所

HPCを活用した自動車用次世代CAEコンソーシアムを設立

-産官学連携で次世代の自動車ものづくりのフレームワーク構築-

理化学研究所(理研)は、「HPCを活用した自動車用次世代CAEコンソーシアム」を設立しました。産業界、大学と一体となってスーパーコンピュータ「京」などのHPC環境下でシミュレーション技術を活用した自動車ものづくりの次世代フレームワーク構築を推進します。

事業の開始にあたって、平成29年11月6日に計算科学研究機構(神戸市)で設立総会を開催し、事業計画等を審議・承認しました。

今後は、産学官連携により、研究所の研究成果の迅速な産業界での実用化と、研究情報等の交換、産業界の課題の共有及び解決に向けた連携を図り、次世代の自動車ものづくりのフレームワーク構築を目指します。

<坪倉会長のコメント>
スパコン「京」の性能は、大手メーカーが保有するスパコン性能の数百倍から数千倍です。メーカーが「京」の性能と同等のスパコンを個別に使えるようになるには、10年はかかると思います。その上で性能が出るソフトウェアを開発するには、さらに努力が必要です。シミュレーションソフトウェアは、ものづくりの道具です。メーカー同士が道具の優劣を競うよりも、共通基盤として優れた道具を皆で作ったほうがよいのではないかと考えます。企業間の競争から共通技術の共有へ、つまり、メーカー同士が競うのは、道具ではなく自動車の出来栄えであってほしい。オールジャパンでスパコン「京」やポスト「京」に集結し、我が国の自動車産業の国際競争力を向上していただきたい。

挨拶する坪倉会長の写真

挨拶する坪倉会長(理研計算科学研究機構複雑現象統一的解法研究チーム チームリーダー)

設立総会の様子の写真

設立総会の様子

HPCを活用した自動車次世代CAEコンソーシアムの概要と目的

環境負荷低減の社会的要請と新興市場の台頭の中で、我が国の自動車産業が今後も国際競争力を維持していくためには、車両のさらなる高機能化・高性能化と、設計開発プロセスの高速化・低コスト化を両立していかなければなりません。

ここ20年で自動車産業界に普及したコンピュータ技術を活用したものづくり(Computer Aided Engineering:CAE)は、性能試験の代替技術として試作車数を大幅削減することで、主に設計プロセスの工数と開発コストの削減に大きく貢献してきました。

今後はこの問題の解決に向けて、CAE技術のさらなる高機能化が鍵になることは明らかです。実際、スパコンハードウェアは10年に1,000倍程度の高速化を実現しており、その性能を十分に活用することで、実験に匹敵する高精度な性能予測のみならず、数千~数万ケースのテスト計算を同時に実行する多目的最適化、さらには深層学習等のAI技術の活用等、今まで思いもしなかった新しいシミュレーションによるものづくりが可能となりつつあります。

一方、ハードウェアの高速化と引き換えに中央処理装置(Central processing unit:CPU)のアーキテクチャはますます複雑化しており、現在CAEに活用されている市販ソフトウェアは、皮肉にも次世代のハードウェア環境では十分な性能が得られないという問題に直面しています。

理研は、このような課題に対して、HPC(High Performance Computing)技術を活用して次世代の自動車ものづくりのフレームワークを産学官で連携して構築することを目的として、コンソーシアムを設立することにしました。

具体的には、現在、自動車産業界で活用されているスパコンの数千倍~数万倍の次世代スパコンを想定し、自動車産業の次世代CAEニーズを取り込み、産学連携でシミュレーションシステムの設計を行います。ここでは、現在までに「京」開発に代表される国家プロジェクトで開発された熱流体や構造解析の大規模シミュレーションソフトウェアを基盤シーズ技術とし、「京」の後継機のポスト「京」等の次世代のHPC環境でその性能を十分発揮できるようデータ構造やアルゴリズムを最適化することで、既存の市販CAE技術とは抜本的に異なる新たなシミュレーションを実現します。シミュレーションフレームワークのプロトタイプは、産学連携で実証解析を行い、その有用性を実証するとともに、次世代HPC環境で迅速に産業界実用化を実現するために、学術界から産業界へのHPC解析技術の伝承も行います。

以上の趣旨の下、本コンソーシアムでは、以下の2つの事業を行います。

  • 1.自動車用次世代CAEシステムのプロトタイプシステムの構築、ベンチマークテスト選定、プロトタイプシステムの実証試験及び実機を用いた検証。
  • 2.意見交換、研究交流の機会提供

設立総会と役員・会員状況

11月6日に開催された設立総会には、企業会員13社、大学・研究機関会員7大学などから、総勢45名の参加がありました。
コンソーシアムの設立趣旨、活動目的、内容や組織体制が紹介されるとともに、平成29年度(平成29年11月~平成30年3月)の事業計画、収支予算案が審議・承認されました。
ワーキンググループの設置も審議・承認され、早速グループごとに集まりディスカッションを行うなど、活動を開始しました。

役員および会員情報

会長、副会長、幹事及びアドバイザー

会長
坪倉 誠
(理研計算科学研究機構複雑現象統一的解法研究チーム チームリーダー)
副会長
岡澤 重信
(山梨大学大学院総合研究部工学域機械工学系 教授)
幹事
スズキ株式会社
株式会社ブリヂストン
株式会社本田技術研究所
大西 慶治
(理研計算科学研究機構複雑現象統一的解法研究チーム 特別研究員)

会員種別と会員一覧

本コンソーシアムの会員種別は、企業会員と大学・研究機関会員の2種類を設けています。

  • 企業会員(13社)
    アイシン精機株式会社、カルソニックカンセイ株式会社、スズキ株式会社、株式会社SUBARU、株式会社デンソー、東洋ゴム工業株式会社、トヨタ自動車株式会社、日産自動車株式会社、日野自動車株式会社、株式会社ブリヂストン、株式会社本田技術研究所、マツダ株式会社、三菱自動車工業株式会社
  • 大学・研究機関会員(7大学)
    北海道大学、東京大学、山梨大学、豊橋技術科学大学、神戸大学、広島大学、九州大学

ワーキンググループ

本コンソーシアムでは、情報交換よりも踏み込んだ本格的な技術課題については、関心がある企業会員と専門知識を持つアカデミアが参加する専門のワーキンググループを総会の承認を経て設置して検討します。
設立総会では、以下の3つのワーキンググループの設置が承認され、活動を開始しました。

  • 次世代空力課題検討WG 主査:坪倉 誠
  • WLTP検討WG 主査:大西 慶治
  • 次世代構造課題検討WG 主査:岡澤 重信

お問い合わせ先

理化学研究所 計算科学研究推進室
HPCを活用した自動車用次世代CAEコンソーシアム事務局
Tel: 078-940-5659 / Fax: 078-304-4956
aics-consortium [at] ml.riken.jp(※[at]は@に置き換えてください。)

報道機関窓口

理化学研究所 広報室 報道担当
Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
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