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2022年11月15日

理化学研究所

スーパーコンピュータ「富岳」世界ランキングの結果と理化学研究所の今後の対応について

-世界トップを引続き維持-

理化学研究所(理研)が2020年4月に試行的利用を、2021年3月に共用を開始したスーパーコンピュータ「富岳」は、世界のスーパーコンピュータに関するランキングの、「HPCG(High Performance Conjugate Gradient)」、「Graph500」において6期連続の第1位を、「TOP500」で第2位、「HPL-AI」において第3位を獲得しました。この結果は「富岳」のフルスペック(432筐体、158,976ノード)によるものです。

これらのランキングは、現在米国テキサス州ダラスのケイ・ベイリー・ハッチソン・コンベンション・センター・ダラスおよびオンラインで開催中のHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング:高性能計算技術)に関する国際会議「SC22」において、11月14日付(日本時間11月15日)に発表されました。

「富岳」は、多様なアプリケーションを高性能かつ低電力で実行可能とするコデザイン[1]の考えにより開発され、ライフサイエンス・防災減災・エネルギー・ものづくり・基礎科学・社会経済などの分野において、デジタルツイン[2]によるさまざまな成果を社会実装のレベルで創出し、Society 5.0[3]の実現に貢献し続けています。世界のスーパーコンピュータランキングの複数の分野において高い評価を受けていることは、幅広い分野での活用を目指す「富岳」の開発方針が正しく実現できたことを立証する一つの指標となります。

そしてそれは、新型コロナウイルス対策の検討に活用されるとともに、気象・気候予測、地震と津波による災害予測、「がん」治療に貢献する病理メカニズムの解明など、人々の生命と社会を守る成果にも結び付いています。

理研は、スーパーコンピュータと量子コンピュータとを組み合わせて高度な計算を実行する量子古典ハイブリッドコンピューティングの研究開発を強化していきます。「富岳」においても異なる研究プラットフォームを「つなぐ」仕組みを作り出すことで、「富岳」が研究DXの流れを加速させる有効なプラットフォームの一つとして大きな役割を果たすものと期待されています。さらに、理研はポスト「富岳」時代の次世代システムの研究を続けることで、研究DXの早期実現を目指します。その第一歩として、文部科学省からの受託により、本年8月から次世代計算基盤に係る調査研究事業(システム調査研究)に取り組んでいます。本調査研究では、サイエンス・産業・社会のニーズも考慮し、Society 5.0を実現可能なシステム等の選択肢を提案することを目的とし、また将来の研究DXのあるべき姿を目指して、次世代計算基盤のアーキテクチャ、システムソフトウェア・ライブラリ、アプリケーションの調査と要素技術の検討を行い、技術的課題や制約要因を抽出しつつ、次世代計算基盤に求められる性能・機能要件を明らかにしていきます。

ランキングの詳細などは下記をご参照ください。

関係者のコメント

「富岳」は試行的な稼働を2020年前半から開始し、2022年後半の今回のスパコンの主要性能ランキングでの登場は累計で6回目となりますが、HPCG、Graph500では一位、Top500では二位、HPL-MxP(HPL-AI)では三位と、世界トップクラスの総合的な実力を示しています。これらは、SDGsやSociety 5.0を実現するための近年のさまざまな困難な問題を解決するためのスパコンとして、「富岳」の名称が示す通り、幅広い高性能を容易に実現することができることの証となっており、その設計思想が正しかったことを表しています。今後、「富岳」はますます多くの価値のある科学技術の成果を出し続けるとともに、本センターとしては、その経験を活かして、量子計算などのあらたな計算パラダイムとの融合や、新たなスパコンの構成法の探求などの、次世代の高性能計算に向けた研究開発を目指していく所存です。

(理研 計算科学研究センター センター長 松岡 聡)

関連リンク

補足説明

  • 1.コデザイン
    ハードウエアとソフトウエアの設計を、開発の初期段階から協調して行うこと。通常は先行されるハードウエアの設計を、ソフトウエア設計と協調させることで、開発期間の短縮やシステム全体の最適化を図るもの。
  • 2.デジタルツイン
    現実世界にあるモノの形状や状態、機能を瓜二つの双子(ツイン)のように仮想世界に実現する技術。リアルタイムで非常に高い精度のシミュレーションが行えることから、幅広い分野での活用が期待されている。
  • 3.Society 5.0
    狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱された。IoT(Internet of Things)、ロボット、AI(人工知能)、ビッグデータといった社会の在り方に影響を及ぼす新たな技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れ、経済発展と社会的課題の解決を両立していく新たな社会の実現を目指す。

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